肩の夜間痛はなぜ起こる?眠れない肩痛で見るべき原因と危険サイン
瀬谷崎コラム
肩の夜間痛は、「寝方が悪い」だけでは片づけない
夜、肩が痛くて目が覚める。これは患者さんにとってかなりつらい症状です。ただし、夜間痛は一つの原因だけで説明できるものではありません。
肩の夜間痛は、炎症、圧の変化、血流、拘縮、寝る姿勢、そして全身性の危険サインまで含めて分けて見る必要があります。「夜痛いから重症」と決めつけるのも、「寝方のせい」と軽く扱うのも、どちらも雑です。
肩の痛みで来院される方の中には、「昼間より夜の方がつらい」と話される方がいます。
寝ようとすると痛い。寝返りで目が覚める。痛い側を下にできない。朝方になるとズキズキする。
こうした夜間痛は、腱板障害や凍結肩、肩峰下滑液包炎などでよく問題になります。
一方で、夜間痛という言葉だけを見て、すぐに危険な病気と決めつけるのも違います。
大切なのは、夜間痛が「どの程度あるのか」「動きや姿勢で変わるのか」「肩の所見と合うのか」「全身症状がないのか」を分けて評価することです。

まなぶ先生

瀬谷崎
夜間痛は、有無だけで見ない
まず確認したいのは、夜間痛の「有無」ではなく「程度」です。
夜に少し気になる程度なのか、毎晩目が覚めるのか、明らかな睡眠障害になっているのかでは、臨床的な意味が変わります。
肩の夜間痛は、次のように段階で整理すると分かりやすくなります。
| 段階 | 夜間痛の状態 | 臨床で見ること |
|---|---|---|
| Type 1 | 夜間痛がない | 日中の動作痛や可動域制限を中心に見る |
| Type 2 | 時々痛いが、目が覚めるほどではない | 寝る姿勢、日中の負荷、肩周囲の過緊張を確認する |
| Type 3 | 毎晩痛みがあり、一晩に数回目が覚める | 炎症、拘縮、腱板・滑液包の問題を丁寧に評価する |
| Type 4 | 明らかな睡眠障害を訴える | 痛みの制御、医療機関との連携、危険サインの確認を優先する |
夜間痛が強い方は、単に肩が痛いだけでなく、睡眠不足によって回復力や痛みの感じ方まで悪化しやすくなります。
だからこそ、夜間痛は「あるかないか」ではなく、睡眠への影響として評価した方が実用的です。
肩の夜間痛は、複数の仕組みで起こる
肩の夜間痛には、いくつかのメカニズムが関わります。
ひとつは、炎症や腫脹によって肩峰下や烏口肩峰弓周辺の圧が高まり、腱板や滑液包が刺激されやすくなることです。
もうひとつは、寝ている時の姿勢です。横向きで痛い側を下にすると肩が圧迫されますし、仰向けでも腕の位置によって肩前方や後方組織に負担がかかることがあります。
さらに、血流や骨内圧の変化も一つの仮説として考えられています。
滑液包、腱板、烏口肩峰弓周辺の圧が高まり、横になることで痛みが目立ちやすくなることがあります。
肩関節疾患の夜間痛では、肩周囲の血流変化が関与する可能性も報告されています。
棘下筋や小円筋の過緊張が肩後方の静脈系に影響し、骨内圧上昇につながる可能性があります。
凍結肩のように関節包の拘縮や炎症が強い時期は、夜間痛と睡眠障害が目立ちやすくなります。
夜間痛は「寝方が悪いから」だけではなく、肩の組織の状態、圧、血流、炎症、睡眠中の姿勢が重なって起こります。ひとつの説明に決め打ちしないことが大切です。
腱板断裂・凍結肩・石灰性腱炎は見え方が似る
中高年の肩関節痛では、安静時痛や夜間痛が似て見えることがあります。
たとえば腱板断裂、凍結肩、石灰性腱炎、肩峰下滑液包炎などは、どれも夜痛くなることがあります。
そのため、夜間痛だけで病名を決めるのは危険です。
外傷後に急に上がらなくなったのか、発症機転がはっきりしない急な強い痛みなのか、肩全体が固まるように動かないのか、上腕外側の痛みが強いのか。
こうした情報を合わせて、可能性を絞っていきます。

まなぶ先生

瀬谷崎
夜間痛で見落としたくない危険サイン
肩の夜間痛の多くは、肩周囲の運動器疾患で説明できることがあります。
ただし、夜間痛や安静時痛は、全身性の疾患や悪性腫瘍などの鑑別で重要になることもあります。
特に、痛みが動作や姿勢でほとんど変わらない場合や、肩を動かしていないのに進行している場合は注意が必要です。
- 悪性腫瘍の既往がある
- 原因不明の体重減少がある
- 発熱や強い倦怠感など全身症状を伴う
- 安静時痛・夜間痛が強く、姿勢や動作で変化しにくい
- 時間経過とともに痛みが悪化している
- 広範囲のしびれ、脱力、歩行障害など神経症状を伴う
- 胸の圧迫感、息苦しさ、冷汗など肩以外の緊急サインがある
複数の危険サインが重なる場合や、痛みが明らかに悪化している場合は、整骨院だけで判断せず医療機関での確認が必要になることがあります。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、夜間痛を「肩が悪いから痛い」で終わらせないようにしています。
まず、どの姿勢で痛いのか、痛い側を下にした時だけなのか、仰向けでも痛いのか、寝返りで痛いのかを確認します。
次に、日中の動作痛、肩の可動域、他動運動での制限、筋力、痛みの場所を見ます。
その上で、必要があれば医療機関での確認が必要な可能性もお伝えします。
夜間痛は患者さんの不安が強くなりやすい症状です。
だからこそ、怖がらせすぎず、軽く扱いすぎず、ひとつずつ確認することが大切です。
こんな肩の夜間痛は一度ご相談ください
- 肩が痛くて夜中に目が覚める
- 痛い側を下にして眠れない
- 朝方になると肩がズキズキする
- 肩が固まってきて、服を着る動作や髪を結ぶ動作がつらい
- 腱板断裂や五十肩と言われたが、説明に納得できていない
- 夜間痛が続き、睡眠不足で日中の生活にも影響している
夜間痛は、痛みの強さだけでなく「眠れなさ」まで見る
肩の夜間痛は、腱板、滑液包、凍結肩、関節包、肩周囲の血流や圧の変化など、複数の要因で起こります。
そして痛みが続けば、睡眠不足そのものが痛みを増幅させることもあります。
夜痛いから重症と決めつける必要はありません。
でも、夜痛いのに「寝方の問題ですね」で終わらせるのも違います。
どの程度眠れないのか、どの姿勢で痛いのか、肩の所見と合っているのか、危険サインがないのか。
そこまで見て、初めて肩の夜間痛をきちんと評価できると思っています。

瀬谷崎
参考
- Cho CH, et al. Sleep quality and nocturnal pain in patients with shoulder disorders.
PubMed - Page MJ, et al. Frozen shoulder: A systematic review of therapeutic options.
PMC - Terabayashi N, et al. Synchronization of Blood Flow Velocity in the Anterior Humeral Circumflex Artery and Reduction in Night Pain After Arthroscopic Rotator Cuff Repair.
PMC - McClure P, et al. Is sleep position associated with glenohumeral shoulder pain and rotator cuff tendinopathy?
PubMed - Mayo Clinic. Shoulder pain: When to see a doctor.
Mayo Clinic












