それ、本当にいつもの偏頭痛ですか。整骨院で確認したい頭痛の聞き方
瀬谷崎コラム
片側・吐き気・光過敏だけで安心しない
偏頭痛っぽい所見がある。それは大事な情報です。ただ、それだけで「いつもの偏頭痛ですね」と決めると、見落とすものがあります。
この記事では、一般に「偏頭痛」と呼ばれる頭痛について、医学的には「片頭痛」と表記しながら解説します。整骨院で診断名をつけるためではなく、「医療機関での確認が必要そうか」を見極めるための聞き方を整理します。
頭痛の患者さんが来たとき、片側性の痛み、吐き気、光や音への過敏さがあると、「偏頭痛っぽい」と感じることがあります。
実際、それらは片頭痛を考えるうえで重要な情報です。
ただし、ここで話を終わらせるのは危ないです。
片頭痛らしい症状があることと、いま目の前の頭痛を整骨院だけで見てよいことは、同じではありません。
大事なのは、「片頭痛っぽいか」だけではなく、「本人にとっていつもの頭痛なのか」まで確認することです。

まなぶ先生

瀬谷崎
「偏頭痛っぽい」は、診断ではなく入口
片頭痛では、片側性、拍動性、中等度から重度の痛み、日常動作で悪化すること、悪心・嘔吐、光過敏・音過敏などが参考になります。
また、閃光暗点のような視覚症状を伴う片頭痛もあります。
こうした特徴を知っておくことは大切です。
しかし、頭痛の鑑別では「それっぽい症状がある」だけで安心しない方がいいです。
片側の頭痛、吐き気、光過敏・音過敏は片頭痛を考えるヒントになります。ただし、それらは「医療機関で確認すべき頭痛ではない」と保証するサインではありません。
たとえば、吐き気や嘔吐を伴う頭痛は片頭痛でも見られます。
一方で、急な発症や神経症状、意識の変化などと組み合わさる場合は、別の問題を考える必要があります。
光や音がつらいという訴えも、片頭痛の情報としては重要ですが、それだけで安全側に倒す材料にはなりません。
症状名を当てるより先に、頭痛のパターンを聞く必要があります。
本人にとって「いつもの頭痛」か
頭痛の問診でかなり大切なのが、「これまでにも同じ頭痛を経験しているか」です。
片頭痛は、基本的には反復する頭痛発作として捉えます。
つまり、患者さん本人にとって「いつもの頭痛」として認識されていることは、ひとつの重要な情報になります。
逆に、片頭痛っぽい要素があっても、初めての頭痛、急に出た頭痛、今までと明らかに違う頭痛であれば、扱い方は変わります。
- 同じような頭痛を過去に何度も経験しているか
- 発症の仕方や痛み方が、いつもと同じか
- 持続時間や頻度が、いつもと変わっていないか
- 前兆や随伴症状が、いつものパターンと一致しているか
- 患者さん本人が「今回は何か違う」と感じていないか
このあたりを聞くと、単に「片頭痛っぽいか」ではなく、「いつもの片頭痛らしいか」という見方になります。
ここが抜けると、片頭痛らしい所見に引っ張られて、二次性頭痛のサインを見逃しやすくなります。
閃光暗点はヒント。ただし過信しない
閃光暗点のような視覚症状は、片頭痛を考えるうえで分かりやすい情報です。
視界にギザギザした光が見える、視野の一部が見えにくくなる、時間とともに広がっていく。
こうした訴えが、過去にも何度か同じようにあり、その後に頭痛が来るというパターンであれば、片頭痛の文脈で考えやすくなります。
ただし、視覚症状があるから片頭痛で確定、という話ではありません。
徐々に広がる前兆、5分以上かけて進む症状、60分以内におさまる症状、過去にも同様の経験がある場合は片頭痛の文脈で考えやすくなります。
突然の視野異常、片眼だけの視力低下、ろれつの異常、手足の脱力、初めての症状、今までと違う経過は軽く扱わない方がよい情報です。
前兆の有無は、片頭痛を考えるうえで有用です。
ただし、視覚症状や感覚症状は、脳血管障害などとの鑑別が問題になることもあります。
だからこそ、症状の出方、広がり方、持続時間、過去の経験、神経症状の有無をセットで確認したいところです。
血管圧迫で楽になる、も情報のひとつ
片頭痛では、こめかみ付近を押さえたり、血管を圧迫するようにすると楽になると表現する人がいます。
これも片頭痛を考えるうえで、ひとつの参考情報になります。
ただし、これも単独で決め手にはしません。
大切なのは、複数の情報を組み合わせることです。
「片側だから」「吐き気があるから」「光がつらいから」「押さえると楽だから」だけで片頭痛と決めるのではなく、それらが患者さんの過去の頭痛パターンと一致しているかを確認します。
臨床では、分かりやすい所見ほど強く印象に残ります。
しかし、印象に残る所見が正しい判断を保証するわけではありません。
偏頭痛っぽさに引っ張られすぎると、「いつもと違う」という患者さんの小さな違和感を見落とします。
危ない頭痛は、派手な顔だけで来るとは限らない
突然の激しい頭痛、嘔吐、めまい、広範囲の神経症状があれば、多くの人は危険だと感じます。
もちろん、そうしたサインは重要です。
ただ、本当に怖いのは、もっと普通に見える頭痛です。
肩こり症状だけに見える。首が重いだけに見える。本人も「いつもの頭痛かも」と思っている。
そういう時ほど、他の所見や経過から違和感に気づけるかが大切です。
- 突然、今までにない強い頭痛が出た
- 初めて経験するタイプの頭痛である
- 頭痛の頻度や強さが進行している
- 発熱、体重減少、癌の既往など全身の情報がある
- 脱力、しびれ、ろれつの異常、歩行障害、視野異常がある
- 外傷後、妊娠・産後、免疫低下、薬剤使用など背景に注意点がある
こうした情報がある場合は、整骨院だけで抱え込まない方がいいことがあります。
僕らがすべきことは、頭痛の疾患名を当て切ることではありません。
「これは医療機関で確認した方がいいかもしれない」と気づき、適切につなぐことです。
整骨院で聞いておきたいこと
頭痛の問診では、痛む場所や強さだけでは足りません。
片頭痛らしい所見を拾うことと、二次性頭痛を疑う所見を拾うことを、同時に行う必要があります。
片側性、拍動性、日常動作での悪化、悪心・嘔吐、光過敏・音過敏、前兆、過去の反復経験、血管圧迫での軽減など。
初発、突然発症、進行性、いつもと違う、神経症状、発熱、外傷、既往歴、薬剤、妊娠・産後、免疫状態など。
この2つを分けて聞くと、患者さんへの説明も変わります。
「片頭痛っぽいですね」で終わらせず、「過去の頭痛とかなり似ているのか」「今回は違う要素があるのか」を確認できます。
そして違和感があれば、施術でどうにかしようとせず、医療機関での確認を優先できます。
名前を当てるより、見逃さない聞き方を
片側性、吐き気、光や音への過敏さ。
これらは片頭痛を考えるうえで重要な情報です。
ただし、それだけで「偏頭痛ですね」と決めてよいわけではありません。
何度も経験している頭痛なのか。
いつもの経過と同じなのか。
今回は何か違うのか。
神経症状や全身症状、外傷や既往歴が隠れていないか。
そこまで聞いて初めて、頭痛の扱い方が見えてきます。
整骨院で頭痛に関わるなら、疾患名を当てることより、危ない頭痛を見逃さないことを優先したいです。

瀬谷崎
参考資料
- International Headache Society. ICHD-3: Migraine without aura
- International Headache Society. ICHD-3: Migraine with aura
- Do TP, et al. Red and orange flags for secondary headaches in clinical practice: SNNOOP10 list
- American Migraine Foundation. Migraine Signs and Symptoms












