感度と特異度の正しい使い方。徒手検査で「陽性・陰性」をどう読むか

感度と特異度は、陽性・陰性の読み方を変える

感度が高いから陽性なら決まり。特異度が高いから陰性なら安心。この覚え方は、かなり危ないです。検査の数字は、どの結果に注目するかまでセットで見ます。

感度は陰性の時に、特異度は陽性の時に使いやすい指標です。ただし、どちらも単独で断定するためのものではなく、問診や他の所見と合わせて可能性を見積もるための材料です。

徒手検査を学ぶと、感度と特異度という言葉が出てきます。

どちらも検査の性能を見るための大事な指標です。

ただ、覚え方を間違えると、臨床でかなり危ない使い方になります。

感度が高い。特異度が高い。

この言葉だけで「良い検査」と判断してしまうと、その検査がどの場面で役立つのかが見えなくなります。

大事なのは、陽性の時に見たいのか、陰性の時に見たいのかです。

まなぶ先生
まなぶ先生

感度も特異度も、高ければ高いほど良い検査ってことではないんですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

高いこと自体は大事です。でも、それをどう読むかがもっと大事です。感度と特異度は、使いどころが違います。

まずは、感度と特異度を分けて見る

感度は、実際にその状態がある人のうち、検査で陽性になる人の割合です。

つまり、状態がある人をどれくらい拾えるかを見ています。

特異度は、実際にその状態がない人のうち、検査で陰性になる人の割合です。

つまり、状態がない人をどれくらい正しく陰性にできるかを見ています。

感度 = 状態がある人を陽性として拾う力
特異度 = 状態がない人を陰性として見分ける力

ここまでは、言葉の定義です。

でも臨床で大事なのは、その定義を結果の読み方につなげることです。

感度が高い検査は、陰性の時に注目する

感度が高い検査は、状態がある人を拾いやすい検査です。

ということは、本当にその状態があるなら、検査で陽性になりやすい。

そこで陰性だった場合、「その状態の可能性は低そうだ」と考える材料になります。

これが、感度の高い検査を陰性で使いやすい理由です。

感度の読み方

感度が高い検査で陰性なら、その可能性を低く見積もる材料になります。ただし、可能性をゼロにできるわけではありません。

逆に、感度が高い検査で陽性だった時に、「これで決まり」とは言いにくいです。

なぜなら、特異度が低ければ、状態がない人でも陽性になりやすいからです。

つまり、偽陽性が多い検査なら、陽性の意味は弱くなります。

特異度が高い検査は、陽性の時に注目する

特異度が高い検査は、状態がない人を陰性として見分けやすい検査です。

つまり、状態がない人なら陰性になりやすい。

そこで陽性だった場合、「それなら、その状態の関与を疑う材料として強い」と考えやすくなります。

これが、特異度の高い検査を陽性で使いやすい理由です。

特異度の読み方

特異度が高い検査で陽性なら、その状態の関与を疑う材料として使いやすいです。ただし、これも単独で断定するものではありません。

逆に、特異度が高い検査で陰性だったからといって、「ない」とは言いにくいです。

感度が低ければ、状態がある人でも陰性になりやすいからです。

つまり、偽陰性が多い検査なら、陰性の意味は弱くなります。

混同すると、説明が強くなりすぎる

感度と特異度を混同すると、検査結果の説明が強くなりすぎます。

感度が高い検査で陽性だから、この状態で決まり。

特異度が高い検査で陰性だから、この状態ではない。

こういう言い方は、かなり危ういです。

指標 注目しやすい結果 臨床での使い方
感度が高い 陰性 その可能性を低く見積もる材料
特異度が高い 陽性 その関与を疑う材料

もちろん、実際の臨床ではもっと複雑です。

検査前にどれくらい疑っていたか、症状が合っているか、複数の所見が一致しているかも関係します。

だからこそ、指標だけを暗記するのではなく、結果をどう読むかまでセットで理解する必要があります。

まなぶ先生
まなぶ先生

感度は陰性、特異度は陽性。ここだけ覚えておけば大丈夫ですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

入り口としてはかなり大事です。ただ、それだけで終わるとまた雑になります。問診や検査前の見立てと一緒に使うところまでが臨床です。

検査前の見立てがあるから、検査が意味を持つ

感度と特異度を使う時に忘れたくないのが、検査前の見立てです。

同じ検査結果でも、そもそもどれくらい疑っていたかで意味が変わります。

受傷機転、痛みの出方、神経症状、年齢、既往、生活での困りごと。

こうした情報から、「何を疑うか」を決めます。

その上で、感度の高い検査や特異度の高い検査を選ぶ。

この順番が大切です。

検査は、ゼロから答えを出す道具ではありません。問診で立てた見立てを、上げたり下げたりする道具です。

見逃しと誤認は、どちらも起こりうる

検査には、偽陰性と偽陽性があります。

偽陰性は、本当は状態があるのに陰性になることです。

偽陽性は、本当は状態がないのに陽性になることです。

感度と特異度を理解するのは、この2つのリスクを減らすためでもあります。

見逃しを減らしたい場面では、感度の高い検査の陰性に注目する。

疑いを強めたい場面では、特異度の高い検査の陽性に注目する。

ただし、どちらも100%ではありません。

整骨院での言い方

「この検査で確定です」ではなく、「この検査結果から、その可能性は低そうです」「この所見から関与を疑います」といった表現の方が、職域としても臨床としても自然です。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、検査結果を強い言葉で言い切りすぎないことを大切にしています。

感度が高い検査で陰性なら、可能性を低く見積もる材料にする。

特異度が高い検査で陽性なら、関与を疑う材料にする。

その上で、問診、動き、神経学的な所見、経過、患者さんの困りごとを合わせて見ます。

必要な場合は、医療機関での確認が必要な可能性もお伝えします。

  • 感度と特異度を混同しない
  • 陽性・陰性だけで説明を終わらせない
  • 検査前の見立てを持って検査を選ぶ
  • 偽陽性と偽陰性の可能性を忘れない
  • 患者さんに断定しすぎない言葉で説明する

検査の数字は、考えるためにある

感度と特異度は、暗記して終わりの用語ではありません。

検査結果をどう読むかを助ける道具です。

感度が高いなら、陰性の意味を考える。

特異度が高いなら、陽性の意味を考える。

そして、どちらも単独で白黒を決めるものではなく、問診や他の所見と合わせて判断します。

この使い分けができると、徒手検査はただの手順ではなく、臨床推論の道具になります。

参考

  • Centre for Evidence-Based Medicine, University of Oxford
    Likelihood Ratios
  • NCBI Bookshelf. Diagnostic Testing Accuracy: Sensitivity, Specificity, Predictive Values and Likelihood Ratios.
    StatPearls
瀬谷崎
瀬谷崎

感度は陰性で可能性を下げる、特異度は陽性で疑いを強める。まずはこの使い分けです。その上で、目の前の患者さんの文脈に戻して考えることが大事です。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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