机に向かうと強まる20年来の首肩のこりが施術とトレーニングを経て楽になってきた例(30代女性)
主訴
2020年7月、首と肩のこりでご来院されました。20年ほど前、机に向かって勉強する時間が増えたころから自覚があり、その後はデスクワークのお仕事のなかでも、仕事中や勉強中に首肩のこりが出てくる状態が続いていました。
当院の評価
患者様への説明
肩甲骨が外側へ開いた位置になっていて、その分だけ首と背中の筋肉が頭と腕を支える負担を引き受けている状態でした。胸の前側(小胸筋)と脇の下から肩甲骨につながる筋肉(前鋸筋)が縮んで肩甲骨を前へ引き、肩甲骨を背骨側へ支える僧帽筋の働きが弱まっていました。あわせて、首の後ろの筋肉が使われ過ぎている一方で、首を内側から支える深い筋肉の働きが弱まっていたことから、机に向かう姿勢が長く続くほど首肩にこりが集まりやすくなっていたと考えました。
日常動作・解剖学的動診
【日常動作】仕事中・勉強中に首肩のこりが出る 【検査】肩甲骨の外転位/頚部伸筋群の過緊張
身体機能評価
前鋸筋・小胸筋の短縮/僧帽筋の筋出力低下/頚部伸筋群のオーバーユース/頚部内在筋の筋出力低下
判断
肩甲骨が外側へ開いた位置で固定され、首と背中に過剰な負担がかかっていたことが主な要因と考えられます。前鋸筋・小胸筋の短縮で肩甲骨が前へ引かれ、僧帽筋の働きが弱まった結果、頭を支える役割が首の後ろの筋肉に偏り、首を内側から支える深い筋肉が働きにくくなっていたため、机に向かう時間が長いほどこりが強まる状態になっていたと判断しました。
施術の様子
患者様への説明
まず、肩甲骨を前へ引いていた胸の前側と脇の下の筋肉をゆるめ、あわせて使われ過ぎていた首の後ろや首の横の筋肉の張りをゆるめました。そのうえで、肩甲骨を支える僧帽筋と、首を内側から支える深い筋肉を働かせるトレーニングを取り入れ、回数を重ねるにつれて施術の中心をトレーニングへ移していきました。
専門的内容
【手技療法】前鋸筋・小胸筋・胸鎖乳突筋・後頭下筋・頚部伸筋群へのアプローチ/【運動療法】僧帽筋・頚部内在筋のトレーニング/【物理療法】初回に実施
施術の経過
-
初期
1〜4回目は、施術後の2、3日は調子がよいものの、仕事が続くと戻ってくる状態でした。この時期は週1回のペースで施術を続けました。
-
中期
5〜10回目にかけては、施術の中心をトレーニングへ移していきました。疲労感はあるものの、平日に感じるこり感は少しずつ減っていきました。
-
後期
現在も、疲れがたまるとこり感は残っています。ただ、来院当初のように仕事中や勉強中に気になり続ける状態ではなくなり、メンテナンスとして通院を続けていただいています。
料金・通院目安
料金の目安
初回料金
施術 3,740円+物理療法 990円
2回目以降の料金
施術 6,490円
通院の目安
施術回数
10回を超えて継続中
施術期間
週1回のペースで開始し、現在はメンテナンスで継続中
ここでは、この症例の記録とは別に、「机に向かう時間が長いと首肩のこりが強まり、何年も続いている状態」という状態について、一般的な見方やご自宅でのヒント、医療機関へ相談する目安を順にたどります。
どうして何年も首肩のこりが続くの?
机に向かう姿勢が長く続くと、胸の前側や脇の下の筋肉が縮んで肩甲骨が外側へ開き、その位置で固定されやすいと言われています。肩甲骨が外側へ開いたままだと、肩甲骨を支える僧帽筋が働きにくくなり、頭と腕を支える役割が首の後ろや背中の筋肉に偏るため、机に向かうほどこりが集まりやすくなると考えられています。ほぐして一時的に楽になっても、支える配分が変わっていなければ同じ姿勢のなかで戻りやすく、これが何年も続く背景のひとつと言われています。
ゆるめる時期と、育てる時期
長く続いたこりでは、最初から筋肉を働かせようとしても、縮んだ筋肉に引かれて肩甲骨が動きにくいことがあります。そのため、まず縮んだ側をゆるめて肩甲骨が戻れる状態をつくり、戻り方が落ち着いてきた段階で、支える筋肉を働かせるトレーニングへ中心を移していくという順番が一般的に考えられています。この方も、最初の数回はゆるめることを中心に進め、5回目以降はトレーニングを施術の中心に置きました。
疲れによるこり感が残るのは失敗なのか
机に向かう生活そのものは続くため、疲れがたまった日にこり感が出ること自体は自然な反応と考えられます。目安になるのは、こりがゼロになったかどうかよりも、仕事中や勉強中に気になり続ける状態から抜けられているか、戻ったときに自分で立て直せるかという点です。支える力が育ってくると、戻る幅と戻るまでの時間が少しずつ変わっていくと言われています。
何年も続く首肩のこりでは、ほぐす場所だけでなく、肩甲骨がどの位置で固定されているか、支える筋肉が働ける状態か、そしていつからトレーニングへ中心を移すかを確かめることが、進め方を考えるうえで役立つと言われています。
二宮 寿己長く続いたこりの方ほど、ほぐしてもらうと楽になるけれど、すぐ戻る、というくり返しを経験されています。それは施術が効かなかったのではなく、支える配分がまだ変わっていないからだと考えています。ゆるめる段階と育てる段階を分けて進めると、変わり方が見えてきます。
こんな方に気になりやすい(セルフチェック)
次のような項目に心当たりが多い方は、負担が集まりやすい傾向があると言われています。当てはまること自体が異常を意味するわけではありません。
- 机に向かう仕事や勉強の時間が長い
- 首肩のこりが何年も続いていて、ほぐしてもらうとその時は楽になる
- 肩が前に出て、背中が丸くなりやすいと言われたことがある
- 疲れがたまった日に、首の後ろから背中にかけて重くなる
ご自宅でできる工夫
痛みが和らいできたら、一般的なセルフケアとして次のような工夫が知られています。
- 作業の合い間に、胸の前を痛みのない範囲でゆっくり開くように伸ばす
- 肩甲骨を背骨側へ軽く寄せて数秒キープする動きを、無理のない回数で続ける
- 画面や本の高さを、頭が前に出にくい位置に調整する
痛みやしびれが強いとき、力が入りにくいときは無理に行わず中止し、医療機関にご相談ください。
こんなときは医療機関へ
多くは時間とともに和らいでいくと言われていますが、次のような場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診してください。
- 腕や手にしびれや力の入りにくさがある
- 首を動かしていないときにも痛みが強まり続けている
- 強い頭痛やめまい、吐き気を伴う
- 転倒や強くぶつけたあとに痛みが続いている、発熱を伴う
よくある質問
20年も続いたこりでも変わりますか?
この症例の方は、最初の数回は施術後の2、3日だけ調子がよい状態でしたが、トレーニングへ中心を移してから、平日に気になり続ける状態から抜けてきています。年数が長い方ほど時間はかかりますが、支える力が育つと変わり方が見えてくることが多いと考えています。経過には個人差があります。
トレーニングはいつから始めましたか?
この症例では、1〜4回目はゆるめることを中心に進め、5回目以降にトレーニングを施術の中心に置きました。始める時期は、肩甲骨が戻れる状態になっているかを見ながら、お一人おひとりに合わせてご提案しています。
こり感が残っているのに通い続ける意味はありますか?
この症例の方は、疲れによるこり感は残っているものの、来院当初のように仕事中や勉強中に気になり続ける状態ではなくなっています。机に向かう生活は続くため、支える力を保ちながら戻り幅を小さくしていく目的で、メンテナンスとして通院を続けていただいています。
二宮 寿己首肩のこりは、机に向かう生活を変えにくいぶん、付き合い方を変えていく形になります。ゆるめる段階から支える力を育てる段階へ進めていけば、戻り幅は小さくしていけます。長く続いている方こそ、一度ご相談ください。
この症状について、担当者と複数のスタッフで臨床的に検討したカンファレンス記事もあります。評価の進め方や考え方の詳細はこちらをご覧ください。
施術担当者

経歴
症例レポートは、改善した例だけでなく、そうでなかった例も含めて結果を選ばず掲載しています。










20年続いた首肩のこりは、施術でゆるめるだけでは、机に向かう生活のなかでどうしても戻ってきます。この方も最初の数回は施術後の2、3日だけ調子がよく、仕事が続くと戻る、というくり返しでした。そこで5回目以降は、ゆるめることよりも、肩甲骨を支える僧帽筋と首を内側から支える筋肉を働かせるトレーニングを施術の中心に置きました。疲れによるこり感はいまも残っていますが、平日に気になり続ける状態からは抜けてきています。長く続いたこりほど、支える力を育てる時間をとることが要になると感じています。