下を向く作業で首が痛い、うつむき仕事の首肩こりをどう考えるか。症例をスタッフで検討

うつむき作業の首の痛み、なぜ「肩甲骨の下がり」に着目したのか

1つの症例を、担当した杉生真悟先生(とんとん整骨院 南浦和店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。仕事で下を向く時間が長く、強くなる首の痛み。下を向くだけなのに、なぜ肩甲骨の下がりに着目したのか、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、2〜3年前から仕事で下を向く時間が長く、首肩こりが強くなる20代の女性。うつむく作業の多い方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:うつむき作業の首の痛み、肩甲骨の下がりに着目
今回検討する症例(担当:杉生先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=仕事で下を向く動作がつらく、首肩こりが強くなる(20代・女性)。背景=2〜3年前から仕事で下を向く時間が長い。所見=頸部の屈曲で首の後ろに強い突っ張り、右側屈で左に強い突っ張り、肩甲骨の下制(とくに左が強い)、僧帽筋上部の筋出力低下と筋の延長。とらえ方=肩甲骨の下制と背中の筋力低下で、首や肩に過剰な負担がかかっていたと考えた。対応=上腕二頭筋・広背筋への手技、肩甲骨のモビライゼーション、頸部の伸筋群への手技、僧帽筋上部のトレーニング、疼痛抑制の電気施術、セルフケア指導。経過=下を向く動作での首の痛みが落ち着いてきた。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

下を向く作業で出る首の痛み、原因は肩甲骨の下がりか

主訴はうつむく作業での首の痛み。けれど杉生先生は、首そのものより、肩甲骨の下がりに出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

杉生先生杉生先生

主訴は下を向く作業での首の痛みでした。所見をとると、肩甲骨が下に引き下がった位置で固まり、とくに左が強く、首や肩に負担が偏っていました。痛む首そのものより、下がった肩甲骨に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

下を向くと痛いなら、首そのものの問題に思えます。それでも肩甲骨に目を向けたのはなぜですか。

杉生先生杉生先生

下を向くと、頭を支えるために首の後ろと肩甲骨まわりが働き続けます。肩甲骨が下がったまま固まると、その負担を逃がせず首に集まる。長く下を向く生活で出る、という像が所見と一致したんです。

下を向くだけなのに、なぜ肩甲骨が関係するのか

首と肩甲骨は一続きで働きます。そこを確かめます。

教子先生教子先生

下を向くだけで肩甲骨まで、というのはつながりが分かりにくいですよね。そこはどう考えましたか。

杉生先生杉生先生

首と肩甲骨は筋肉でつながっていて、別々には動きません。下を向く姿勢が続いて肩甲骨が下がると、首を支える筋肉が引っぱられ続けます。だから首だけをゆるめても、肩甲骨が下がったままだと戻りやすいんです。

瀬谷崎瀬谷崎

首の症状でも、肩甲骨の位置とセットで見たいですよね。下を向く負担を、首と肩甲骨のどちらからも下げにいく。腕や手のしびれなど神経を疑う所見がないことも確かめたうえでなら、その筋道は通っていると思います。

うつむき作業を続けながら負担を減らす介入と経過

首だけをゆるめて終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

首そのものでなく、肩甲骨から整えていったんですね。

杉生先生杉生先生

はい。硬くなった上腕や脇の筋肉をゆるめ、肩甲骨の動きを引き出して、下がった肩甲骨を支える筋肉を使えるようにしました。電気施術で痛みも抑えつつ進めて、下を向く動作での痛みが落ち着いてきています。今は肩甲骨まわりのケアと姿勢づくりを続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

下を向く負担を、肩甲骨の支えから減らしにいっているのが要点ですね。仕事で下を向くこと自体は続くので、負担に耐えられる肩甲骨の位置をつくる。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただ作業が続く方なので、続ける前提で見ていきたいところです。

考察:肩甲骨の位置からとらえるうつむき作業の首の痛み

所見という事実(肩甲骨の下制・僧帽筋上部の弱さ・下を向くと出る突っ張り)と、経過という結果(下を向く動作での首の痛みの落ち着き)。この両方が、「首そのものでなく肩甲骨の下がりに出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。首と肩甲骨は一続きで働くため、下を向く負担は肩甲骨の支えからも下げられる。神経を疑う所見がないことを確かめたうえで、決めつけずに出どころを絞る。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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