歩くと頭が下がってきて洗い物が続けられなかった状態が施術とトレーニングを経て楽になってきた例(70代女性)
主訴
2026年5月、顔が下がってしまうとのことでご来院されました。歩いていると頭が前へ下がってきてしまい、台所で洗い物を続けることもできないなど、日常生活に支障が出ていました。整形外科でレントゲン検査とMRI(エムアールアイ)検査を受け、異常はないと言われていました。動かしたときの痛みはなく、頭を支えきれない感覚が続いている状態でした。
当院の評価
患者様への説明
立ち姿勢を確かめると、頭が体より前に出て(頭部前方変位)、背中の上のほうが丸まったまま伸びにくく(胸椎の屈曲拘縮)、骨盤が前に出て上体が後ろへもたれるスウェイバックと呼ばれる姿勢になっていました。この形では、首の後ろから背中にかけての筋肉が常に引き伸ばされた位置で頭を支えることになり、支える力が足りなくなると頭が前へ落ちやすくなります。動かしたときの痛みがないことと、医療機関の画像検査で異常がないことを踏まえ、首と背中の支える筋力の不足が要因と考えました。
日常動作・解剖学的動診
【日常】歩いていると頭が前へ下がってくる/洗い物を続けられない/動作時痛なし、頭を支えきれない感覚 【経緯】整形外科のレントゲン検査・MRI(エムアールアイ)検査で異常なし
身体機能評価
静的アライメント:頭部前方変位/胸椎屈曲拘縮/スウェイバック姿勢/頚背部の筋力低下
判断
頭部前方変位、胸椎の屈曲拘縮、スウェイバックという静的アライメントから、首から背中にかけての筋肉が伸ばされた位置で頭を支え続け、支える力が足りずに頭が前へ落ちていると判断しました。首だけでなく、胸椎と骨盤の土台から姿勢を保つ力を育てる必要があると考えました。
施術の様子
患者様への説明
首だけをゆるめるのではなく、姿勢を保つ筋肉を働かせる運動とトレーニングを中心に進めました。肩甲骨を背骨へ寄せる運動で背中の上のほうを起こし、首の表面と深部の筋肉(頚部の外在筋・内在筋)を働かせるトレーニングを行いました。あわせて、骨盤を支える股関節の前側の筋肉(腸腰筋)を働かせ、太ももの裏(ハムストリングス)を伸ばして、骨盤が前に出た姿勢を整えていきました。姿勢を保つためのセルフケアもお伝えし、ご自宅でも続けていただいています。
専門的内容
【運動療法】肩甲骨の内転運動/頚部外在筋・内在筋のトレーニング/腸腰筋の賦活/ハムストリングスのストレッチ/【物理療法】電気療法を併用/【セルフケア】姿勢維持のトレーニングを自宅で継続
施術の経過
-
初期
最初の3か月は週2回のペースで施術とトレーニングを重ねました。支える筋肉は数回では変わらないため、この時期は姿勢を保つ運動をくり返し体に覚えていただくことを優先しました。
-
中期
3か月ほど続けるうちに、歩いているときに頭が下がってくることが出なくなってきました。台所で洗い物を続けられる時間も、少しずつ伸びてきたとのことでした。
-
後期
現在は週1回のペースに間隔を空けています。長い時間立ち続けたときの首の負担はまだ残っているため、トレーニングとセルフケアを続けながら、経過を確かめているところです。
料金・通院目安
料金の目安
初回料金
施術 3,740円+電気療法(別途)
2回目以降の料金
施術 5,940円+電気療法 990円
通院の目安
施術回数
約30回を超えて継続中(週2回×3か月、その後は週1回)
施術期間
週2回で3か月続け、現在は週1回でトレーニングとセルフケアを続けながら継続中
ここでは、この症例の記録とは別に、「動かしても痛くないのに、歩いていると頭が前へ下がってきて顔を上げていられない状態」という状態について、一般的な見方やご自宅でのヒント、医療機関へ相談する目安を順にたどります。
どうして歩いていると頭が下がってくるの?
頭の重さは5kg前後あると言われ、首の後ろから背中の筋肉が支え続けています。頭が体より前に出て、背中の上のほうが丸まり、骨盤が前に出た姿勢(スウェイバック)になっていると、首の筋肉は引き伸ばされた位置で頭を支えることになり、少しの時間で疲れて支えきれなくなると考えられています。歩くときは頭が揺れるぶん支える負担が増え、洗い物は下を向いたまま両手を使うため、どちらも頭が落ちやすい場面と言われています。転倒などのきっかけがないのに頭が下がってくる場合も、背景に神経や筋肉の病気が隠れていることがあるため、まず医療機関で検査を受けることが大切と言われています。
首だけでなく、胸椎と骨盤から考える理由
首の筋肉を働かせても、土台となる背中が丸まったまま、骨盤が前に出たままでは、頭はまた前へ落ちやすいと考えられています。肩甲骨を寄せて背中の上のほうを起こし、股関節の前側の筋肉を働かせて骨盤の位置を整えると、首の筋肉が無理のない位置で頭を支えやすくなると言われています。この症例の方も、首のトレーニングと同時に、肩甲骨、胸椎、骨盤の運動を組み合わせて進めました。転倒をきっかけに首が下がった別の症例はこちらでご紹介しています。
歩く、洗い物をする、長く立つ、の順に変わっていく理由
支える筋肉が育ってくると、まず短い時間の場面から頭を保てるようになると考えられています。歩くときの頭下がりが先に出なくなり、次に洗い物の時間が伸び、長く立ち続ける場面は最後まで残りやすいのは、支え続ける時間が長いほど筋肉に求められる持久力が大きいためと言われています。この症例の方も、週2回で3か月続けて歩くときの頭下がりが出なくなり、洗い物の時間が伸び、長時間の立位はまだ経過を見ているところです。
動かしても痛くないのに頭が下がってくる状態では、まず医療機関の検査で異常の有無を確かめたうえで、首だけでなく、背中の丸まりや骨盤の位置といった姿勢の土台から支える力を育てることが役立つと言われています。筋力の変化には数か月単位の時間がかかると言われています。
二宮 寿己痛みがないぶん、周りから理解されにくい症状です。この症例の方は、洗い物を続けられないことが一番の困りごとでした。首の筋肉だけでなく、背中と骨盤の土台から姿勢を保つ運動を組み立て、週2回のペースで3か月続けていただいたことで、歩くときの頭下がりが出なくなり、洗い物の時間も伸びてきました。長く立つ場面は最後まで残るので、いまは週1回に間隔を空けて一緒に確かめています。
こんな方に気になりやすい(セルフチェック)
次のような項目に心当たりが多い方は、負担が集まりやすい傾向があると言われています。当てはまること自体が異常を意味するわけではありません。
- 歩いていると、だんだん頭が前へ下がってくる
- 洗い物や料理など、下を向いて両手を使う作業が続けられない
- 動かしても痛くはないが、顔を上げていられない
- 背中が丸まっている、骨盤が前に出ていると指摘されたことがある
- 夕方になるほど首の疲れが強くなる
ご自宅でできる工夫
痛みが和らいできたら、一般的なセルフケアとして次のような工夫が知られています。
- 肩甲骨を背骨へ寄せる運動を、痛みのない範囲で少しずつ行う
- 座るときはお尻の下にクッションなどを敷き、骨盤を立てて背中の上のほうを起こす
- 太ももの裏を、痛みのない範囲でゆっくり伸ばす時間をつくる
- 洗い物や読書は台や本の高さを上げ、下を向く時間を短くする
痛みやしびれが強いとき、力が入りにくいときは無理に行わず中止し、医療機関にご相談ください。
こんなときは医療機関へ
多くは時間とともに和らいでいくと言われていますが、次のような場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診してください。
- 医療機関での検査をまだ受けていない
- 手足のしびれや力の入りにくさ、飲み込みにくさ、話しにくさを伴う
- 頭が下がる状態が数週間単位で進み続けている
- 体重の減少や強い疲れやすさを伴う
- 転倒や強い衝撃のあとに症状が出た
よくある質問
痛みがないのに、整骨院で相談してよいのですか?
この症例の方も、動かしたときの痛みはなく、頭を支えきれない感覚だけが続いていました。医療機関の画像検査で異常がないことを確かめたうえで、立ち姿勢と支える筋力を確かめ、姿勢を保つ運動を組み立てました。まだ検査を受けていない場合は、先に医療機関の受診をおすすめしています。
どのくらいのペースで、どのくらい続けましたか?
この症例では、最初の3か月は週2回のペースで施術とトレーニングを重ね、その後は週1回に間隔を空けました。3か月ほどで歩くときの頭下がりが出なくなり、洗い物の時間が伸びてきました。長く立ち続けたときの負担はまだ残っているため、経過を確かめながら続けています。経過には個人差があります。
首のトレーニングだけではだめなのですか?
この症例では、背中の上のほうが丸まり、骨盤が前に出た姿勢のために、首の筋肉が引き伸ばされた位置で頭を支えていました。首だけを鍛えても土台が同じままでは頭が落ちやすいと考え、肩甲骨を寄せる運動、股関節の前側の筋肉を働かせる運動、太ももの裏のストレッチを組み合わせました。
二宮 寿己頭が下がってきて顔を上げていられない状態は、年齢のせいとあきらめてしまう方も少なくありません。医療機関の検査で異常がなければ、姿勢の土台から支える力を育てる道があります。歩くときや家事のときに頭が下がってくる方は、一度ご相談ください。
この症状について、担当者と複数のスタッフで臨床的に検討したカンファレンス記事もあります。評価の進め方や考え方の詳細はこちらをご覧ください。
施術担当者

経歴
症例レポートは、改善した例だけでなく、そうでなかった例も含めて結果を選ばず掲載しています。








動かしても痛くないのに、頭が下がってきて顔を上げていられないというご相談でした。首だけを見ると支える力が足りない状態ですが、立ち姿勢を確かめると、背中が丸まり骨盤が前に出ていて、首の筋肉がずっと引き伸ばされた位置で頭を支えていました。そこで首だけでなく、肩甲骨、胸椎、骨盤の土台から姿勢を保つ運動を組み立てました。週2回で3か月続けていただき、歩いているときの頭下がりは出なくなり、洗い物の時間も伸びてきました。長く立ったときの負担はまだ残っているので、いまは週1回に間隔を空けて、セルフケアと一緒に続けていただいています。