前かがみや体を横に倒すと痛み、歩くと強まっていた腰の痛みが施術とトレーニングを経て楽になった例(70代男性)
主訴
2020年6月、腰の痛みでご来院されました。体を前に倒す動作や横に倒す動作で動かせる範囲が狭くなっていて、その動きのたびに痛みが出るほか、歩いていると痛みが強まる状態でした。歩くほど痛みが増すため、外出や移動の場面でつらさを感じやすい状態だったとのことです。
当院の評価
患者様への説明
お体を確かめると、太ももの裏側の筋肉(ハムストリング)が硬くなっていて、股関節が曲がりにくくなっていました。股関節が十分に曲がらないと、前かがみになるときに腰が代わりに大きく丸まることになり、腰に負担が集まりやすくなります。また、お尻の横の筋肉(中殿筋)の働きが弱く、歩くときに骨盤を支えきれない分を、太ももの外側の筋肉(大腿筋膜張筋)や腰の横の筋肉(腰方形筋)が代わりに支え続けている状態でした。体を横に倒すと痛むこと、歩くと強まることは、この支え方のかたよりと関わっていると考えました。
日常動作・解剖学的動診
【動作】体幹の前屈・側屈で可動域低下と痛み/歩行時に痛みが増悪 【所見】股関節屈曲制限(ハムストリングの短縮)/殿筋群の出力低下
身体機能評価
ハムストリング・腰方形筋・大腿筋膜張筋の緊張/股関節屈曲可動域の低下/中殿筋・大殿筋の出力低下
判断
前屈と側屈で痛み、歩くと強まる腰痛で、股関節の曲がりにくさとお尻の筋力低下がそろっていたことから、腰そのものよりも、股関節が動かない分と支えきれない分を腰が引き受けている状態と考えました。方針は、まず太ももの裏側をゆるめて股関節が曲がる範囲を広げ、腰の横と太ももの外側の緊張を落としたうえで、お尻の筋肉が歩行時に骨盤を支えられるようにトレーニングを加えていくこととしました。年齢を考え、負荷は無理のない範囲から段階的に上げています。
施術の様子
患者様への説明
太ももの裏側の筋肉(ハムストリング)をゆるめて股関節が曲がりやすくなるようにする手技と、腰の横の筋肉(腰方形筋)、太ももの外側の筋肉(大腿筋膜張筋)の緊張を落とす手技を行いました。あわせて、お尻の筋肉(中殿筋・大殿筋)が歩くときに骨盤を支えられるようにするトレーニングを、無理のない負荷から段階的に進めています。
専門的内容
【手技療法】ハムストリングへのアプローチ(股関節屈曲制限に対して)/腰方形筋・大腿筋膜張筋へのアプローチ 【運動療法】殿筋群(中殿筋・大殿筋)のトレーニング
施術の経過
-
初期
初回から数回は、太ももの裏側と腰まわりをゆるめることを中心に進めました。5回目には、歩いているときの痛みがご来院当初より軽くなってきたとのことで、歩ける場面が少しずつ増えていきました。
-
中期
歩行時の痛みが落ち着いてきた段階で、お尻の筋肉のトレーニングの比重を増やしました。10回目には、前かがみや横に倒す動作、歩くときの痛みが気にならなくなったとのことです。
-
後期
約12回、4〜5か月の施術を経て、日常の動作や歩行で痛みを気にせず過ごせる状態になりました。現在も、股関節の動きとお尻の筋力を保つために、メンテナンスの施術とトレーニングを継続されています。
料金・通院目安
料金の目安
初回料金
3,740円
2回目以降の料金
7,480円(トレーニング 3,300円)
通院の目安
施術回数
約12回(その後はメンテナンスとトレーニングを継続中)
施術期間
約4〜5か月(その後もメンテナンスとトレーニングを継続中)
ここでは、この症例の記録とは別に、「前かがみや体を横に倒すと痛み、歩いていると強まってくる腰の痛み」という状態について、一般的な見方やご自宅でのヒント、医療機関へ相談する目安を順にたどります。
じっとしていると平気なのに、歩くと腰が痛くなるのはなぜ?
歩いているとき、片脚で体を支える瞬間には、お尻の横の筋肉(中殿筋)が骨盤を水平に保つ役割をしていると言われています。この筋肉の働きが弱くなると、骨盤が左右に揺れやすくなり、その揺れを腰の横の筋肉や太ももの外側の筋肉が代わりに止め続けることになります。一歩ごとに腰が支え役を引き受けるため、歩く距離が伸びるほど腰の負担が積み重なり、痛みとして出てくることがあります。
前かがみで痛むときは、股関節の曲がり方も見る
前かがみの動きは、本来は股関節と腰が分担して行うものですが、太ももの裏側の筋肉(ハムストリング)が硬いと股関節が十分に曲がらず、腰だけが大きく丸まって動くことになります。歩くと痛む腰痛と、前かがみで痛む腰痛が同じ方に出ている場合、股関節の曲がりにくさとお尻の筋力低下が同時に関わっていることがあり、この症例でもその組み合わせがそろっていました。
年齢を重ねた方ほど「支える力」を戻す工程が大切
硬くなった筋肉をゆるめると、動きの範囲は比較的早く広がることがあります。ただ、歩行時に骨盤を支える力は、ゆるめるだけでは戻りにくく、お尻の筋肉を使うトレーニングを続けることで少しずつ変わっていくと言われています。この症例では、無理のない負荷から段階的にトレーニングを進め、施術を終えたあともメンテナンスとトレーニングを継続する形をとっています。同じ70代の腰痛でも、起床時や立位で強まっていた10年来の腰痛の例のように、痛む場面によって見るところは変わります。
歩くと強まる腰の痛みでは、腰そのものだけでなく、股関節がどれだけ曲がるか、歩くときにお尻の筋肉が骨盤を支えられているかをあわせて確かめることが、進め方を考えるうえで役立つと言われています。
稲毛田 和磨「年だから腰が痛いのは仕方ない」とおっしゃる方は多いのですが、歩くと強まる腰痛は、どこが支えきれていないかを確かめると見通しが立つことがあります。硬いところをゆるめるだけで終わらせず、支える力を戻すところまで一緒に進めていきましょう。
こんな方に気になりやすい(セルフチェック)
次のような項目に心当たりが多い方は、負担が集まりやすい傾向があると言われています。当てはまること自体が異常を意味するわけではありません。
- 歩いているうちに腰の痛みが強くなってくる
- 前かがみになると腰が硬く、痛みが出る
- 体を横に倒す動きで腰の片側に痛みが出る
- 太ももの裏側が硬く、床に手が届きにくい
- 片脚で立つとふらつきやすい、お尻に力が入りにくいと感じる
ご自宅でできる工夫
痛みが和らいできたら、一般的なセルフケアとして次のような工夫が知られています。
- 太ももの裏側を、反動をつけずにゆっくり伸ばす時間をつくる
- 横向きに寝て上側の脚をゆっくり持ち上げ、お尻の横の筋肉を使う練習をする
- 歩く距離は一度に伸ばさず、痛みが出る手前で区切って少しずつ増やす
痛みやしびれが強いとき、力が入りにくいときは無理に行わず中止し、医療機関にご相談ください。
こんなときは医療機関へ
多くは時間とともに和らいでいくと言われていますが、次のような場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診してください。
- 脚にしびれや力の入りにくさが出てきた、またはつまずきやすくなった
- 歩ける距離が急に短くなり、休まないと歩けない
- 安静にしていても痛みが強く、夜も眠れない
- 排尿や排便の感覚に変化がある
- 発熱や体重減少など体調の不調を伴っている
よくある質問
70代でもトレーニングは必要ですか?
この症例では、硬さをゆるめる手技に加えて、お尻の筋肉のトレーニングを無理のない負荷から段階的に進めました。歩くときに骨盤を支える力は、ゆるめるだけでは戻りにくいと言われています。体の状態に合わせて内容と負荷を決めますので、来院時にご相談ください。
どのくらいの回数と期間がかかりましたか?
この症例では、約12回、4〜5か月の施術とトレーニングを経て、歩行や前かがみの痛みが気にならなくなりました。その後はメンテナンスとトレーニングを継続されています。経過は体の状態や生活によって異なります。
歩くと痛いのに、歩いたほうがいいのですか?
痛みが強く出る距離を無理に歩き続けることはおすすめしていません。この症例では、歩ける距離を一度に伸ばさず、施術とトレーニングで支える力が戻るのに合わせて少しずつ増やしていきました。しびれや力の入りにくさを伴う場合は、先に医療機関にご相談ください。
稲毛田 和磨歩くと腰が痛くなる、前かがみがつらいという方は、股関節の曲がり方とお尻の筋力から確かめると進め方が見えてきます。いつから、どんな場面でつらいかを教えていただければ、一緒にたどっていきますので、一度ご相談ください。
この症状について、担当者と複数のスタッフで臨床的に検討したカンファレンス記事もあります。評価の進め方や考え方の詳細はこちらをご覧ください。
施術担当者

経歴
症例レポートは、改善した例だけでなく、そうでなかった例も含めて結果を選ばず掲載しています。








前かがみと横に倒す動きの両方で痛み、歩くと強まるという訴えでしたが、腰そのものの問題というより、股関節が曲がりにくいことと、お尻の筋肉が歩くときに骨盤を支えきれていないことが重なっていました。70代の方の場合、硬さをゆるめるだけでは歩行時の支えは戻りにくいので、お尻のトレーニングを無理のない負荷で続けていただいたことが大きかったと感じています。今もメンテナンスとトレーニングを続けてくださっていて、歩くことを楽しんでいただけている様子です。