立っていると腰が痛い、歩くと出る腰痛をどう考えるか。症例をスタッフで検討

立位・歩行で出る腰痛、なぜ「股関節の伸展」に着目したのか

1つの症例を、担当した稲毛田和磨先生(とんとん整骨院 東武練馬店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。立っていると、歩いていると出る左の腰の痛み。座っているより立っているとつらい腰痛について、腰そのものでなく股関節の伸展に出どころを見た判断を、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、4か月ほど前から立っていると、歩いていると左の腰が痛む50代の女性。家事や外出で立つ・歩く時間が長い方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:立位・歩行で出る腰痛、股関節の伸展に着目
今回検討する症例(担当:稲毛田先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=立っているとき・歩いているときの左腰の痛み(50代・女性)。背景=4か月ほど前から、立つ・歩くと痛みが出て家事や外出に支障。所見=伸展と左側屈で左腰に痛み、股関節の伸展制限、臀部の筋出力低下と筋の延長、腹部の筋出力低下、大腿直筋の短縮、腰椎を反らせる代償。とらえ方=股関節の伸展制限が腰へ過剰な負担をかけていたと考えた。対応=股関節まわりと腰部への手技、股関節まわりのストレッチ、体幹・臀部のトレーニング、腰部への鍼、セルフケア指導。経過=立っていられる時間が長くなり、痛みが出るまでの時間も延びてきた。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

立っている・歩くと出る腰痛、原因は股関節の伸展制限か

主訴は立つ・歩くと出る腰の痛み。けれど稲毛田先生は、腰そのものより、股関節の伸展に出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

稲毛田先生稲毛田先生

主訴は立っているとき、歩いているときの腰の痛みでした。所見をとると股関節が後ろへ伸びにくく、その分だけ腰を反って補っていました。痛む腰そのものより、伸びない股関節に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

立つ・歩くと痛いと、腰そのものに負担がかかっている気がします。それでも股関節に目を向けたのはなぜですか。

稲毛田先生稲毛田先生

立つ・歩くときは股関節を後ろへ伸ばして体を支えます。そこが伸びないと、足りない分を腰の反りで補うことになる。立ち姿勢や歩行で腰の反りが増え、負担が集まる、という像が所見と一致したんです。だから断定でなく、まずその仮説で進めました。

座っていると楽なのに立つと痛いのはなぜか

この方は立つ・歩くで強く、姿勢によって変わりました。そこを確かめます。

教子先生教子先生

立つ・歩くで痛むのに、急いで受診すべき足のしびれや力の入りにくさはありませんでしたか。

稲毛田先生稲毛田先生

そこは確認しました。足への神経症状や、安静にしても引かない痛みはなく、痛みは姿勢と動作に伴って変わりました。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめて進めました。腰を反らせる立位・歩行で出て、丸めると和らぐ、という出かたでした。

瀬谷崎瀬谷崎

立つと腰を反って支えるので、股関節が伸びないと腰の反りが増えて痛みが出やすい。座って腰が丸まると楽になる、という出かたとも合っていますね。危険なものを外したうえで、姿勢で変わる要素に絞る。順序が妥当だと思います。

立つ・歩く時間を延ばす介入と経過

腰を直接ゆるめるだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

腰そのものでなく、股関節から負担を減らしていったんですね。

稲毛田先生稲毛田先生

はい。硬くなった股関節まわりをゆるめ、鍼も併用しつつ、体幹とお尻で支えられるようにしました。立っていられる時間が長くなって、痛みが出るまでの時間も延びてきています。今は股関節の柔軟性と体幹の筋力づくりを続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

立つ・歩くときの腰の反りを、股関節と体幹の支えで減らしにいっているのが要点ですね。反りすぎなければ負担は下がる。立てる時間が延びた経過も、その方向を支持しています。ただ立ち仕事や家事で負担が続くので、続ける前提で見ていきたいところです。

考察:股関節の伸展からとらえる立位・歩行時の腰痛

所見という事実(股関節の伸展制限・腰を反らせる代償・伸展や側屈での痛み)と、経過という結果(立っていられる時間が延び、痛みが出るまでの時間も延びたこと)。この両方が、「腰そのものでなく股関節の伸展に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。立つ・歩くと痛いのは、股関節が伸びない分を腰の反りで補うため。危険なものを外したうえで、決めつけずに姿勢と動作から出どころを絞る。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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