胸郭出口症候群は検査陽性だけで決めない。TOS評価で見落としたくないこと

有名なテストほど、結果の読み方がむずかしい

胸郭出口症候群は、名前も検査もよく知られています。ただし、エデンテストやライトテストが陽性だったからといって、それだけでTOSと決めるのは危険です。

胸郭出口症候群は、検査陽性だけで診断する疾患ではありません。症状の出方、誘発される場面、神経・血管の所見、そして類似疾患の除外を合わせて考える必要があります。

手や腕のしびれ、だるさ、冷え、重さ、肩から腕にかけての違和感。

こうした症状があると、胸郭出口症候群という名前が候補に上がることがあります。

胸郭出口症候群は、首から腕へ向かう神経や血管が、鎖骨周囲や斜角筋、肋骨、胸の前のスペースなどで圧迫されることで起こるとされる病態です。

ただ、臨床ではかなり難しい疾患です。

なぜなら、症状が頚椎由来の神経症状、末梢神経障害、肩関節疾患、血管系の問題などと似やすく、さらに徒手検査の偽陽性も少なくないからです。

まなぶ先生
まなぶ先生

胸郭出口症候群って、エデンテストやライトテストで陽性なら判断できると思っていました。

瀬谷崎
瀬谷崎

そこが落とし穴ですね。陽性になること自体はありますが、それだけでTOSと決めるには弱いです。検査はあくまで推論の一部です。

胸郭出口症候群は、ひとつの病気というより「圧迫される場所と構造」の問題

胸郭出口症候群は、神経性、静脈性、動脈性に分けて考えられます。

多くは神経性とされますが、静脈や動脈の問題が関わる場合もあります。

そのため、同じ胸郭出口症候群という名前でも、しびれが中心の人、腕のだるさが中心の人、むくみや色の変化が目立つ人では、見るべきポイントが変わります。

神経性TOS

腕神経叢への刺激により、しびれ、だるさ、痛み、脱力感などが出ることがあります。

静脈性TOS

腕の腫れ、重だるさ、色の変化など、静脈還流の問題を疑う症状が出ることがあります。

動脈性TOS

冷感、蒼白、拍動の変化など、動脈血流の問題を疑う所見が関わることがあります。

混在・重複

実際には症状が重なって見えることもあり、単純な分類だけでは説明しきれないことがあります。

エデンテストやライトテストは、偽陽性を考える

胸郭出口症候群の検査として、エデンテスト、ライトテスト、アドソンテスト、Roosテストなどが知られています。

これらの検査では、腕の位置を変えたり、胸郭出口周囲に負荷をかけたりして、症状や拍動の変化を確認します。

しかし、問題は「陽性になりやすい」ことです。

健常者でも拍動が変わることがありますし、肩や首まわりに過敏さがある人では症状が誘発されることもあります。

つまり、検査陽性はTOSの可能性を考える材料にはなりますが、TOSと確定する材料としては弱いことがあります。

検査の読み方

拍動の変化だけを見るのではなく、患者さんが普段困っている症状が再現されるかを確認します。それでも、検査単独ではなく他の所見と組み合わせて判断します。

拍動よりも、症状の再現を重視する場面がある

胸郭出口症候群の検査では、橈骨動脈の拍動変化を見るものがあります。

ただし、神経性TOSが多いことを考えると、拍動だけで判断するのは臨床的にズレることがあります。

大事なのは、その検査で「患者さんが普段困っているしびれやだるさが再現されるか」です。

もちろん血管性の症状が疑われる場合は、色の変化、腫れ、冷感、拍動、左右差なども重要です。

しかし、神経性の症状を見ているのに拍動変化だけを根拠にするのは、目的と所見がかみ合っていません。

まなぶ先生
まなぶ先生

拍動が弱くなったら陽性、という見方だけだと足りないんですね。

瀬谷崎
瀬谷崎

そうですね。何を見たい検査なのかを整理した方がいいです。神経症状を疑うなら、拍動よりも症状の再現性を丁寧に見たいです。

TOSは、似た疾患を除外していく作業が大切

胸郭出口症候群の鑑別が難しい理由は、決め手になる検査が少ないことだけではありません。

似た症状を出す疾患が多いことも大きな問題です。

頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、肘部管症候群、手根管症候群、円回内筋症候群、橈骨神経障害、肩関節疾患など、複数の候補を考える必要があります。

そのため、TOSを疑う時は「TOSっぽいテストが陽性だった」だけではなく、「他の疾患では説明しにくいか」を確認します。

  • 首の動きで症状が変化するか
  • デルマトームや末梢神経領域と症状が合うか
  • 手根管症候群や肘部管症候群の所見がないか
  • 肩関節の可動域や腱板由来の痛みでは説明できないか
  • 腕を挙げる、荷物を持つ、長時間同じ姿勢で症状が出るか
  • しびれだけでなく、冷感、腫れ、色の変化があるか

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、胸郭出口症候群という名前だけで施術を進めないようにしています。

まず、どの動作で症状が出るのか、どの指にしびれがあるのか、首や肩の動きで変化するのかを確認します。

その上で、TOSの検査だけでなく、頚椎、肩、肘、手首、末梢神経の所見も見ます。

必要であれば、医療機関での確認が必要な可能性もお伝えします。

胸郭出口症候群は、メジャーな名前だからこそ安易に使われやすい病名です。

だからこそ、検査陽性という一点ではなく、全体の整合性を大切にしたいと考えています。

こんな症状は一度ご相談ください

  • 腕を挙げていると手や腕がしびれる
  • 荷物を持つ、デスクワークを続けると腕がだるい
  • 首、肩、腕、手のしびれの原因がはっきりしない
  • 胸郭出口症候群と言われたが、説明に納得できていない
  • 手根管症候群や頚椎の問題とも言われ、どれが原因か分からない
  • 検査では陽性と言われたが、症状とのつながりがよく分からない

検査は、病名を貼るためではなく確率を整理するために使う

胸郭出口症候群の検査は有名です。

でも、有名な検査ほど、結果の読み方には注意が必要です。

陽性だったからTOS。

陰性だったからTOSではない。

そう単純に分けられる疾患ではありません。

症状の再現性、拍動や色の変化、しびれの分布、首や肩や末梢神経の所見、類似疾患の除外。

それらを合わせて、初めて胸郭出口症候群らしさを評価できます。

瀬谷崎
瀬谷崎

TOSは、検査名を知っているだけだと逆に危ないです。陽性所見をどう扱うか、何を除外するかまで考えて、ようやく臨床で使える評価になります。

参考

  • Neurogenic Thoracic Outlet Syndrome: Presentation, Diagnosis, and Treatment.
    PMC
  • Thoracic Outlet Syndrome: A Narrative Review.
    PMC
  • Diagnosing Thoracic Outlet Syndrome: Current Approaches and Future Directions.
    PMC
  • Thoracic Outlet Syndrome Part I: Systematic Review of the Literature and Consensus on Anatomy, Diagnosis, and Classification.
    PMC
  • Society for Vascular Surgery. Thoracic Outlet Syndrome.
    Society for Vascular Surgery

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