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変形性膝関節症の痛みは軟骨だけではない。膝の内側・前側・後ろ側で見るポイント

画像の変形と、いま感じている痛みは同じではない

変形性膝関節症と聞くと、軟骨がすり減って痛い、と考えがちです。ただ、膝の痛みは軟骨だけでは説明できません。

変形性膝関節症では、画像上の変形や関節裂隙の狭小化に目が向きやすくなります。

もちろん、画像所見は重要です。

ただ、患者さんが感じている痛みを考える時に、「軟骨がすり減っているから痛い」とだけ説明すると、かなり粗くなります。

軟骨そのものには神経支配が乏しいため、痛みの発生源としては、滑膜、軟骨下骨、半月板、関節包、靭帯、膝蓋下脂肪体、筋腱、筋膜、神経系などを含めて考える必要があります。

まなぶ先生 まなぶ先生

変形性膝関節症だと、つい「軟骨が原因」と説明してしまいそうです。

瀬谷崎 瀬谷崎

画像上の変形と痛みは、分けて考えた方がいいです。変形があることと、今そこが痛みを出していることは同じではありません。

変形性膝関節症は、関節全体で起きる

変形性膝関節症は、軟骨だけの問題ではありません。

近年は、軟骨、軟骨下骨、滑膜、半月板、靭帯、関節包、筋腱、膝蓋下脂肪体などを含む、関節全体の疾患として考えられています。

つまり、画像で軟骨の変化が見つかったとしても、痛みの主な発生源が軟骨周辺だけにあるとは限りません。

滑膜炎が強い人もいれば、膝蓋下脂肪体が敏感になっている人もいます。鵞足部や腸脛靭帯周辺、半膜様筋周辺に圧痛が強い人もいます。

最初に分けたいこと

変形がある膝と、痛みを出している組織は同じとは限りません。変形性膝関節症では「画像上の変化」と「現在の痛みの出どころ」を分けて見る必要があります。

この分け方がないと、すべてを「年齢だから」「軟骨だから」で片づけてしまいます。

そうなると、変えられる要素まで見落としてしまう可能性があります。

変形性膝関節症で候補になる痛みの出どころ

変形性膝関節症の痛みは、一つの組織だけで説明できないことが多いです。

関節内の組織も、関節外の組織も、痛みの出どころになりえます。

関節内

滑膜、軟骨下骨、半月板、十字靭帯、関節包、膝蓋下脂肪体などを考えます。

関節外

鵞足、腸脛靭帯、半膜様筋、膝窩筋、腓腹筋、筋膜、腱、靭帯などが候補になります。

神経系

痛みが長引く場合、局所組織だけでなく、痛みの過敏性や疼痛伝達系の影響も考えます。

生活負荷

体重、歩行量、階段、仕事動作、活動量の急な変化などが痛みの出方に影響します。

関節内に問題があるから、関節外を見なくてよいわけではありません。

逆に、鵞足部や腸脛靭帯付着部に圧痛があるからといって、関節内の問題を見なくてよいわけでもありません。

変形性膝関節症では、複数の痛みの出どころが重なっている前提で見た方が安全です。

圧痛部位は、痛みの分布を教えてくれる

変形性膝関節症では、圧痛部位を丁寧に見ることで、どの組織に負担が集まっているかを推測しやすくなります。

例えば、内側関節裂隙、膝蓋下脂肪体、鵞足、内側半月板周辺、MCL(内側側副靭帯)、半膜様筋停止部、膝窩筋、腸脛靭帯付着部などです。

圧痛は確定診断ではありません。

ただ、痛みの分布や動作痛と合わせることで、介入の優先順位を考える材料になります。

  • 内側関節裂隙の圧痛
  • 膝蓋下脂肪体周辺の圧痛
  • 鵞足部や内側近位脛骨周辺の圧痛
  • 半膜様筋停止部や膝窩内側の圧痛
  • 膝窩筋や外側後方の圧痛
  • 腸脛靭帯付着部や外側半月板周辺の圧痛
  • 膝蓋大腿関節周辺、内外側膝蓋支帯の圧痛

圧痛部位を確認する時は、単に「痛いところ探し」にならないようにします。

その部位に負担がかかる動作は何か。歩行や立ち上がりで再現されるか。介入で変化するか。ここまで見て、ようやく臨床的な意味が出てきます。

膝蓋下脂肪体は、見落とされやすい痛みの候補

膝蓋下脂肪体は、膝の前方、膝蓋腱の深部にある脂肪組織です。

単なるクッションのように見られることもありますが、変形性膝関節症においては炎症や痛みと関係する組織として注目されています。

膝の前方痛、伸展終末での痛み、膝蓋腱周辺の圧痛、膝の腫れぼったさがある場合は、膝蓋下脂肪体周辺も見たいところです。

注意したい説明

「軟骨がすり減っているから痛いです」とだけ説明すると、膝蓋下脂肪体や滑膜、筋腱、関節包など、変化しうる要素が患者さんから見えなくなります。

変形性膝関節症では、痛みを減らすために関節全体の状態を見ます。

膝蓋下脂肪体も、その中の一つです。

内側だけでなく、外側と後方も見る

変形性膝関節症というと、内側型をイメージしやすいかもしれません。

実際、内側関節裂隙や鵞足部、MCL(内側側副靭帯)周辺を確認する場面は多いです。

ただ、膝の痛みは内側だけとは限りません。

外側半月板、腸脛靭帯付着部、外側膝蓋支帯、膝窩筋、腓腹筋外側頭、ファベラ腓骨靭帯など、外側・後方の組織も候補になります。

まなぶ先生 まなぶ先生

変形性膝関節症だと内側ばかり見てしまいがちです。

瀬谷崎 瀬谷崎

内側は大事です。ただ、外側や後方に痛みがある人もいます。圧痛部位と動作痛を合わせて、どこにストレスが集まっているかを見たいですね。

「変形性膝関節症だから内側」と決めすぎると、別の痛みの出どころを見落とします。

画像所見ではなく、患者さんが今困っている動作と痛みの場所から、評価を組み立てる必要があります。

圧痛の分布を、介入の優先順位に変える

圧痛部位を確認する目的は、病名を増やすことではありません。

介入の優先順位を決めることです。

立ち上がりで内側が痛い人と、階段で膝蓋下が痛い人と、深く曲げると膝窩部が痛い人では、同じ変形性膝関節症でも見方が変わります。

  • どの動作で痛むのか
  • どの部位に圧痛があるのか
  • 腫れや熱感があるのか
  • 膝の伸展・屈曲制限はどちらが強いのか
  • 歩行時に膝内側・外側・前方のどこへ負担が出るのか
  • 体重、活動量、筋力、恐怖感がどう関わっているのか

こうして分けて見ると、同じ変形性膝関節症でも、介入の内容は一人ひとり変わります。

関節内の炎症が強そうなら負荷量の調整が必要です。

膝蓋下脂肪体周辺が敏感なら、伸展終末の刺激や膝前方の圧迫を見直します。

鵞足や半膜様筋周辺に負担が集まっているなら、歩行、下腿三頭筋、股関節、足部の影響も見ます。

変形性膝関節症は「変形」ではなく「今の痛み」に注目する

変形性膝関節症という名前がつくと、どうしても変形そのものに目が向きます。

でも、臨床で見たいのは、患者さんが今どの動作で、どこに、どんな痛みを感じているかです。

画像所見は大事です。

ただ、それだけで痛みの説明を終えると、変えられる要素を見落とします。

滑膜、軟骨下骨、半月板、膝蓋下脂肪体、鵞足、腸脛靭帯、半膜様筋、膝窩筋、筋力、活動量、歩き方。

これらを総合して、今の痛みの地図を作る。

変形性膝関節症を見る時は、この視点を持っておきたいところです。

瀬谷崎 瀬谷崎

変形性膝関節症は、軟骨の話だけで終わらせない方がいいです。圧痛部位、動作痛、腫れ、可動域、歩行を合わせて、今どこが痛みを出していそうかを考える。そこから介入の優先順位が見えてきます。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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