膝の後ろが痛い時に見るもの。膝窩部痛と後方組織の整理
瀬谷崎コラム
深く曲げる時、伸ばす時の「後ろの痛み」を分ける
膝の後ろが痛い時、筋肉の張りだけで考えると見落とすものがあります。膝窩部には、半膜様筋、腓腹筋、膝窩筋、後方関節包、滑液包、神経血管系が集まっています。
膝の後ろが痛い。
深くしゃがむと詰まる。伸ばしきると突っ張る。歩くと膝窩部が重い。階段やランニングの後に、膝の後ろが張る。
このような訴えは、現場では珍しくありません。
ただ、膝窩部痛は「ハムストリングスが硬い」「腓腹筋が張っている」だけで片づけると危ない場所です。
膝の後ろには、筋・腱・関節包・滑液包・神経血管系が集まっています。さらに、関節内の問題が後方に症状として出ることもあります。

まなぶ先生

瀬谷崎
膝窩部は、構造が密集している
膝窩部は、単純な空間ではありません。
内側には半膜様筋や腓腹筋内側頭、外側には大腿二頭筋や腓腹筋外側頭、深部には膝窩筋や後方関節包、さらに膝窩動脈・静脈、脛骨神経などが通ります。
そのため、同じ「膝の後ろが痛い」でも、背景はかなり違います。
後方組織の挟み込み、半膜様筋周辺、内側半月板後節、滑液包の緊張などを考えます。
後方関節包、ハムストリングス、腓腹筋、膝窩部の滑走性低下などが関わることがあります。
ベイカー嚢腫、関節内水腫、滑液包の拡張などを考えます。抱え込まない判断も必要です。
ベイカー嚢腫破裂、血管系、神経系の問題も除外したい場面です。
膝窩部痛は、痛みの場所だけでなく、どの動きで出るか、腫れがあるか、神経血管系の違和感があるかを合わせて見る必要があります。
深く曲げた時の後ろの痛み
膝を深く曲げた時に、膝の後ろが詰まるように痛い。
この場合、単純に「膝が硬い」と見るだけでは不十分です。
膝深屈曲では、後方組織の圧縮や滑走、半月板の移動、ハムストリングスや腓腹筋の関係が変化します。
特に膝窩部の内側寄りに痛みがある場合、半膜様筋周辺や内側半月板後方、腓腹筋内側頭との関係も考えたいところです。
深屈曲で痛い時は、筋肉の伸張痛なのか、後方組織の圧縮なのか、関節内の問題なのかを分けます。痛い場所を揉むだけでは、原因の整理にならないことがあります。
深屈曲時の痛みが、介入によってすぐ変化することもあります。
ただ、その変化だけで病態を確定するのではなく、「どの組織の負荷を変えたら痛みが変わったのか」と逆算して考えることが大切です。
伸ばしきれない膝と後方組織
膝が伸び切らない、伸ばすと膝の後ろが突っ張る。
この場合、後方関節包、半膜様筋、斜膝窩靭帯、弓状膝窩靭帯、膝窩筋、腓腹筋など、膝関節運動軸より後方にある軟部組織が関わることがあります。
後方組織の滑走性や伸張性が落ちると、膝伸展時に抵抗感や痛みが出ることがあります。
また、膝蓋下脂肪体の炎症や線維化、関節内の水腫、変形性膝関節症に伴う関節内組織の変化も、伸展制限と絡みます。
- 膝伸展終末で後方に突っ張りがある
- 膝窩部の内側または外側に圧痛がある
- 膝を伸ばす時に筋性の抵抗だけではない硬さがある
- 膝蓋下脂肪体や関節内の腫れも疑われる
- 歩行時に膝が軽く曲がったまま接地している
伸展制限を「ハムストリングスが硬い」で終わらせると、後方関節包や膝窩筋、関節内の影響を見落としやすくなります。
ベイカー嚢腫は、後ろの痛みの代表候補
膝の後ろに膨らみがある。膝窩部に張りがある。曲げ伸ばしで後ろが苦しい。
このような場合、ベイカー嚢腫も考える必要があります。
ベイカー嚢腫は、一般的に半膜様筋と腓腹筋内側頭の間に関連する滑液包の拡張として説明されます。変形性膝関節症や半月板損傷など、関節内の問題と関連することもあります。
つまり、膝の後ろにある膨らみだけを問題にするのではなく、なぜ関節内の液体が増えたのか、なぜその滑液包が拡張したのかまで考える必要があります。
急なふくらはぎの痛み、腫れ、熱感、強い圧痛、歩行困難、明らかな左右差がある場合は、ベイカー嚢腫の破裂や血管系の問題なども考えます。整骨院内で処理しようとせず、医療機関での評価を優先したい場面です。
膝窩部痛では、筋肉の問題として扱ってよいものと、画像評価や医師の判断が必要なものを分けることが重要です。
膝窩筋と外側後方の痛み
膝窩部痛は内側だけではありません。
外側後方に痛みがある場合、膝窩筋や後外側支持機構、大腿二頭筋、腓腹筋外側頭なども候補になります。
膝窩筋は、膝の後外側に位置し、膝の安定性や回旋制御に関わる筋です。
下り坂、ランニング、切り返し、膝の回旋ストレスが強いスポーツでは、膝窩筋周辺に負荷が集まることがあります。

まなぶ先生

瀬谷崎
膝窩部痛を評価する時の流れ
膝窩部痛では、まず医療機関での評価が必要な所見を確認します。
そのうえで、痛みの場所、動作、腫れ、可動域制限、筋力、歩行を順番に見ます。
危険所見、腫れ、深屈曲、伸展制限、内外側の位置、歩行。この順番で整理すると、筋肉の張りだけに引っ張られにくくなります。
特に、急な腫れやふくらはぎ症状がある場合は、徒手介入でどうにかしようとしない方が安全です。
一方で、慢性的な伸展制限や深屈曲時の後方痛では、後方組織の滑走性、半膜様筋、腓腹筋、膝窩筋、関節内の影響を分けながら介入を組み立てます。
同じ膝窩部痛でも、対応はかなり変わります。
膝の後ろは、揉む場所ではなく分ける場所
膝の後ろが痛い時、触ると張っている場所が見つかることは多いです。
でも、その張りが本当に痛みの原因なのか。関節内の問題が後方に出ているのか。滑液包が拡張しているのか。神経血管系の問題が隠れていないか。
ここを分けないまま介入すると、良くなるものもあれば、抱え込んではいけないものを見逃す可能性もあります。
膝窩部痛は、筋肉だけで見ない。
深屈曲、伸展、腫れ、内外側、歩行まで含めて、後方組織を立体的に整理する。
この視点があるだけで、膝の後ろの痛みはかなり扱いやすくなるはずです。

瀬谷崎












