治療家を目指す学生の本音。早く一人前になりたい気持ちと努力量のギャップ
瀬谷崎コラム
本音が出るのは、きれいな志望動機より努力量かもしれない
早く一人前になりたい。その気持ちは大事です。ただ、臨床で患者さんを任される仕事では、「なりたい」と「そのために積み上げる」は別の問題として見た方がいいと思っています。
治せる治療家になりたいなら、努力量の前に、自分が何に向かって努力するのかを見た方がいいです。最小限で済ませたい人が悪いのではなく、目指す場所と選ぶ環境が合っているかが大事です。
学生さんや就活中の方と話していると、「早く一人前になりたい」という言葉を聞くことがあります。
その気持ちは、とても自然です。
学校を卒業して、国家資格を取って、現場に出る。
どうせ働くなら、患者さんに頼られる存在になりたい。
いわゆる「治せる治療家」になりたい。
そう思う人は多いはずです。
ただ、ここで一度見たいのは、そのためにどれくらいの努力を引き受けるつもりがあるのかです。

まなぶ先生

瀬谷崎
アンケートに出た、学生さんの本音
学生さんに向けて、「一人前になるための努力量をどう考えているか」というアンケートを取ったことがあります。
結果は、かなり現実的でした。
| 回答 | 割合 | 読み取れること |
|---|---|---|
| いくらでも努力して一人前になりたい | 51.7% | 臨床に向かう熱量が高い層 |
| 最小限の努力で一人前になりたい | 26.7% | 効率や負担感を重視する層 |
| 努力するくらいなら半人前のままでいい | 5% | 現場に出る前に仕事観の確認が必要な層 |
| ぶっちゃけ臨床なんて興味ない | 16.7% | 資格取得と臨床志向が一致していない可能性がある層 |
もちろん、60票のアンケートなので、この結果だけで学生全体を代表しているとは言えません。
ただ、就活前の本音を考えるきっかけとしては、十分に面白い結果だと思います。
この結果を見て、「最近の学生は甘い」と言いたいわけではありません。
むしろ、本音が出ている分だけ健全だと思います。
臨床に興味がある人もいる。
できれば効率よく上達したい人もいる。
臨床そのものにそこまで興味がない人もいる。
それぞれいて当然です。
問題は、本音そのものではなく、本音と職場選びがズレたまま入社してしまうことです。
最小限の努力は、悪い言葉ではない
「最小限の努力で一人前になりたい」と聞くと、少し冷たく感じるかもしれません。
でも、これは必ずしも悪い考えではありません。
無駄な努力を減らしたい。
遠回りせず、重要なことから学びたい。
効率よく成長したい。
こういう意味なら、むしろ大切な視点です。
ただし、「必要な努力まで避けたい」という意味なら話は変わります。
効率よく学ぶことと、楽をして臨床力を手に入れようとすることは違います。前者は戦略ですが、後者は患者さんを前にした時に危うくなります。
臨床は、暗記だけでも、手技の数だけでも、動画を見ただけでも上手くなりません。
患者さんの話を聞く。
身体を評価する。
仮説を立てる。
結果を見て修正する。
必要なら医療機関につなぐ。
この繰り返しには、どうしても時間がかかります。
半人前のままでいい、は患者さんの前では通用しない
「努力するくらいなら半人前のままでいい」という回答もありました。
これも、本音としては分からなくはありません。
でも、臨床の現場では少し重い話になります。
なぜなら、目の前にいるのは練習台ではなく、痛みや不安を抱えた患者さんだからです。
新人が最初から完璧である必要はありません。
むしろ、最初はできないことの方が多いです。
ただ、できない自覚があるなら、学ぶ姿勢と安全に働ける環境は必要です。
- 危険なサインを見落とさないために学ぶ
- 分からない時に相談できる環境を選ぶ
- 患者さんに断定しすぎない説明をする
- 失敗や疑問をそのままにしない
- できないことを隠さず、できるようにしていく
半人前から始まるのは当たり前です。
でも、半人前のままでいいと思ってしまうと、成長が止まります。
そこは、資格を持って患者さんに触れる仕事として、やはり軽く見ない方がいいと思います。
臨床に興味がない人が悪いわけではない
「ぶっちゃけ臨床なんて興味ない」という回答もあります。
これも、無理に責める話ではありません。
資格を取る理由は人それぞれです。
スポーツに関わりたい人もいる。
美容やリラクゼーションに興味がある人もいる。
経営や発信に向いている人もいる。
現場で患者さんを評価し、施術し、説明することが全員に向いているとは限りません。
ただし、臨床に興味がないまま、臨床力を強く求める職場に入ると苦しくなります。
自分は臨床を深めたいのか、生活の安定を重視したいのか、接客が好きなのか、教育環境を求めているのか。ここを曖昧にしたまま条件だけで選ぶと、入社後のギャップが大きくなります。
努力量と職場の相性はかなり大事
職場には、それぞれ求める基準があります。
研修が多い職場。
数字を強く見る職場。
技術練習を重視する職場。
マニュアル通りに進める職場。
自由度が高い代わりに、自分で学ぶ力を求める職場。
どれが絶対に良い悪いではありません。
大事なのは、自分が引き受けたい努力量と、職場が求める努力量が合っているかです。

まなぶ先生

瀬谷崎
だから、就職前に良いことだけを聞くより、しんどい部分も聞いた方がいいです。
どれくらい勉強するのか。
研修はどの頻度であるのか。
練習は勤務時間内なのか、時間外もあるのか。
患者さんを任されるまでに、何をクリアする必要があるのか。
分からない時に誰に相談できるのか。
こういう部分こそ、入社後の現実に近いです。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、最初から完成された人だけを求めているわけではありません。
むしろ、最初は分からなくて当然です。
ただ、臨床に向き合う気持ちと、学び続ける姿勢はかなり大切にしています。
患者さんを安全に見るために、評価を学ぶ。
説明できるように、知識を増やす。
分からない症例を放置しない。
うまくいかなかった時に、見立てを修正する。
こういう地味な積み重ねが、結局は一人前に近づく道だと思っています。
楽に一人前になれる職場ではありません。ただ、ちゃんと臨床を学びたい人にとっては、努力の向きが見えやすい環境でありたいと思っています。
学生さんに見てほしいチェックポイント
就職先を選ぶ時は、給与や休日だけでなく、自分の本音も確認しておくといいです。
- 臨床が上手くなりたい気持ちはどれくらいあるか
- 自分はどれくらいの努力なら継続できそうか
- 分からないことを質問できるタイプか
- できないことを指摘されても学びに変えられるか
- 患者さんを任される責任をどう受け止めているか
- その職場の研修量や基準が、自分に合っているか
ここを見ないまま入社すると、条件は良いのに苦しい、ということが起こります。
反対に、自分の本音と職場の基準が合っていると、多少しんどくても意味を持って頑張れます。
一人前になりたいなら、自分の本音も見ておく
一人前になりたい。
治せる治療家になりたい。
その言葉は、とても良い入口です。
でも、入口だけでは臨床力はつきません。
どれくらい努力するつもりがあるのか。
どんな環境なら努力を続けられるのか。
臨床にどれくらい興味があるのか。
そこまで自分で見ておくと、就職先の選び方も少し変わります。
きれいな志望動機より、自分の本音を見た方が、長い目では強いと思います。

瀬谷崎












