手をつくと手首が痛い、ヨガで出る手首の痛みをどう考えるか。症例をスタッフで検討

手をつくと痛む手首、なぜ「前腕と肩の動き」に着目したのか

1つの症例を、担当した鈴木英二先生(とんとん整骨院 東武練馬店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。ヨガで手をついたときに走る手首の痛み。手首そのものでなく、前腕と肩の動きに出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、ヨガで手をついたときに手首が痛むようになった40代の女性。怖くて手をつけず、重い物を持つ・ひねる動作にも不安があり、趣味のヨガに戻りたい、という方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:手をつくと痛む手首、前腕と肩の動きに着目
今回検討する症例(担当:鈴木先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=手をつくと走る手首の痛み(40代・女性)。背景=2〜3か月前から、ヨガで手をついた際にピキッと痛みが出るようになり、怖くて手をつけない。日常生活でも重い物を持つ・ひねる動作に不安があった。所見=手をつく動き(前腕を内にひねり、手首を反らせて体重をかける)で痛み、前腕の回外(外へのひねり)可動域の制限、肩関節の内旋可動域の制限。とらえ方=前腕や肩の動きが硬く、手をついたときの負担が手首に集まっていたと考えた。対応=前腕回内筋群のストレッチ、肩甲骨モビライゼーション、肩関節内旋可動域の改善、前腕屈筋群のストレッチ、僧帽筋上部のトレーニング。経過=気をつけながら手をつけるようになり、日常の不安が和らいだ。床から立つくらいの荷重であれば気になりにくくなり、ヨガでも手をつけるように。現在もセルフケアを継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

手をつくと手首が痛む、原因は前腕と肩の動きか

主訴は手をつくと走る手首の痛み。けれど鈴木先生は、手首そのものより、前腕と肩の動きに出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

鈴木先生鈴木先生

主訴は、ヨガで手をついたときに走る手首の痛みでした。所見をとると、前腕を外へひねる動きと、肩を内にまわす動きが硬くなっていました。手をつくときは、前腕を内にひねって手首を反らせ、体重をかけます。痛む手首そのものより、その動きを支える前腕と肩に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

手首が痛いと、手首そのものを痛めたように思えます。それでも前腕や肩に目を向けたのはなぜですか。

鈴木先生鈴木先生

手をつく動きは、手首だけでなく、前腕のひねりと肩の安定で分担しています。前腕の外へのひねりや肩の動きが硬いと、足りない分を手首が無理に受ける。ヨガで手をついた瞬間にピキッと出る、という出かたが、その像と一致したんです。

趣味のヨガに、手をついて戻れるか

この方は、できれば趣味のヨガに戻りたい、という希望がありました。そこを確かめます。

教子先生教子先生

趣味に戻りたい、という希望なんですよね。念のため、手首が大きく腫れる・熱をもつ、手や指のしびれ、力が入りにくい、安静にしても強く痛むといった、急いで受診すべきサインは外せていましたか。転倒やぶつけたきっかけもなかったですか。

鈴木先生鈴木先生

そこは確認しました。強い腫れや手指のしびれ、力の入りにくさ、安静時の強い痛みはなく、転倒などのきっかけもありませんでした。痛みは手をつく動作で再現しました。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめたうえで、趣味に戻れるよう進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

怖くて手をつけないと、かばって別のところに負担がいきがちですよね。前腕と肩が動いて分担できるようになれば、同じ手つきの動作でも手首に集まる負担は減らせる。危ないものを外したうえで、負担そのものを小さくして趣味と付き合っていく。その方向が妥当だと思います。

手をつく動作に強い手首にするための介入と経過

手首を直接ケアするだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

手首そのものでなく、前腕や肩のほうから整えていったんですね。

鈴木先生鈴木先生

はい。硬くなっていた前腕をゆるめ、肩甲骨を動かして肩のまわる範囲を広げました。前腕と肩で手つきの動きを分担できるようにして、セルフケアも一緒に続けてもらいました。気をつけながら手をつけるようになり、床から立つくらいの荷重なら気にならなくなって、ヨガでも手をつけるようになっています。

瀬谷崎瀬谷崎

手首の痛みの出どころを、手首そのものでなく、前腕と肩の動きに戻して整えにいっているのが要点ですね。分担できれば、同じ手つきの動作でも手首に集まる負担が小さくなる。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただ繰り返し手をつく趣味なので、前腕と肩の柔軟性づくりは続ける前提で見ていきたいところです。

考察:前腕と肩の動きからとらえる、手をつくと痛む手首

所見という事実(前腕の外へのひねりと肩の内へのまわりの制限・手をつく動作での痛み)と、経過という結果(気をつけながら手をつけるようになり、荷重をかけられる範囲が広がって、趣味のヨガに戻れたこと)。この両方が、「手首そのものでなく、前腕と肩の動きに出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。手をつくと手首が痛むのは、前腕のひねりと肩の安定が足りない分を手首が受けるため。その場をケアするだけで終わらせず、前腕と肩が分担できるように整える。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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