オスグッド・シュラッター病はなぜ成長期に起こるのか。脛骨粗面(けいこつそめん)の発達過程から発症を考える

膝下が痛くなる10〜11歳。育ちきっていない脛骨粗面に牽引ストレスが重なる時期

オスグッド・シュラッター病は、脛骨粗面(けいこつそめん)が育っていく途中の力学的に弱い時期に起こりやすくなります。膝蓋腱(しつがいけん)を介した牽引ストレスと発達段階の関係から、なぜ10〜11歳ごろに多いのかを図で見ていきます。

この記事について

成長期に膝のお皿の下を痛がる子どもは少なくありません。同じ運動量でも痛む子と痛まない子がいる背景には、脛骨粗面がどの段階まで育っているかという土台があります。

ここでは、脛骨粗面の発達段階と、二次骨化中心が出現する骨端核出現期に力学的に弱くなる理由、そして競技の固定化や反復動作がリスクを押し上げる仕組みを取り上げます。

著者アイコン 伊藤聡史

脛骨粗面は生まれつき今の形なのではなく、軟骨から骨へ段階を追って育ちます。その途中に、牽引ストレスに対して弱くなる時期があります。年齢と運動歴を、この発達段階とあわせて見ると見通しがよくなります。

結論:オスグッド・シュラッター病は、発達途中の脛骨粗面に膝蓋腱を介した牽引ストレスが繰り返し加わって起こります。二次骨化中心が出現する10〜11歳ごろ(骨端核出現期)が力学的に最も弱く、競技の固定化とジャンプ・キックの反復が重なると発症リスクが上がります。

オスグッド・シュラッター病とは

膝のお皿のすぐ下にある骨の出っぱりを、脛骨粗面(けいこつそめん)と呼びます。太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)は、膝蓋腱(しつがいけん)を通してこの脛骨粗面を引っぱります。オスグッド・シュラッター病は、成長期にこの引っぱる力が繰り返し加わり、まだ育ちきっていない脛骨粗面が痛む、いわゆる骨端症(こったんしょう)のひとつです。

膝のお皿の下が痛む、押すと痛い、腫れて硬くなるといった症状が出ます。走る・跳ぶ・蹴るなど、膝を強く伸ばす動作でとくに痛みが出やすいのが特徴です。ジャンプやダッシュ、キックの多いスポーツをする10代前半に多くみられます。

大切なのは、痛みの背景に発達途中の脛骨粗面という土台があることです。同じ運動量でも、骨がどの段階まで育っているかで、かかるストレスの受け止め方が変わります。

オスグッド・シュラッター病と脛骨粗面の発達過程。年齢と発達段階、脛骨粗面の形の変化を示した図表
オスグッド・シュラッター病の発症を、脛骨粗面の発達過程からとらえた図(作図・伊藤聡史)

脛骨粗面は段階を追って育つ

脛骨粗面は、およそ次の段階を経て完成していきます。下の図は、すねの上の部分の断面が段階ごとにどう変わるかを示したものです。

脛骨粗面の発達段階。軟骨期・骨端核出現期・癒合期・骨性成熟期・完成熟の5段階の骨の形を並べた図
脛骨粗面の発達段階(左から、軟骨期・骨端核出現期・癒合期・骨性成熟期・完成熟)
年齢の目安 発達段階 特徴
10歳未満 軟骨期(なんこつき) 二次骨化中心(にじこっかちゅうしん)はまだ出現していない
10〜11歳 骨端核出現期(こったんかくしゅつげんき) 二次骨化中心が出現する。オスグッド・シュラッター病が最も起こりやすい時期
13〜15歳 癒合期(ゆごうき) 脛骨粗面が発達し、牽引ストレスの影響を受けやすい
15〜17歳 骨性成熟期(こつせいせいじゅくき) 骨端軟骨板(こったんなんこつばん)が閉鎖へ向かう
成長完了 完成熟(かんせいじゅく) 脛骨粗面の発達が完了する

なぜ10〜11歳ごろが最も起こりやすいのか

ポイントは、二次骨化中心(脛骨粗面の中に新しく骨ができ始める芯)が出現する骨端核出現期です。この時期の脛骨粗面は、軟骨から骨へと切り替わる途中で、牽引ストレスに対して力学的に弱くなります。骨と軟骨の移行部に負荷が集中しやすく、そこに大腿四頭筋の引っぱる力が繰り返し加わると、痛みや出っぱりにつながりやすいのです。

その後の癒合期(13〜15歳)でも、脛骨粗面が発達していく途中は牽引ストレスの影響を受けやすい状態が続きます。骨性成熟期に骨端軟骨板が閉鎖へ向かい、発達が完了すると、この弱さは落ち着いていきます。年齢に幅があるのは、成長のスピードに個人差があるためです。

押さえておきたい点

痛みの強さと骨の状態は、必ずしも一致しません。年齢はあくまで目安で、成長の早い子・遅い子で前後します。実際の段階はレントゲンなどでの確認が必要です。年齢だけで判断せず、痛み方や運動歴とあわせて考えます。

競技の固定化と反復動作が重なるとき

発達段階に加えて、発症のリスクを押し上げるのが運動の中身です。骨端核出現期以降、ひとつの競技に絞り込まれ(競技の固定化)、ジャンプやキック、ダッシュのような膝を強く伸ばす動作が繰り返されると、脛骨粗面にかかる牽引ストレスが積み重なります。

とくに、身長が伸びる時期は骨の成長に筋肉や腱の柔軟性が追いつかず、大腿四頭筋の張りが強くなりがちです。硬くなった筋肉が脛骨粗面をより強く引っぱるため、練習量が同じでもストレスが増えます。発達途中という土台に、競技の固定化と反復動作、筋の張りが重なったときに、痛みとして表面化しやすくなります。

  • 脛骨粗面は段階を追って育つ。10〜11歳の骨端核出現期は力学的に弱くなる
  • 痛みの背景に、発達途中の脛骨粗面と膝蓋腱を介した牽引力がある
  • 競技の固定化とジャンプ・キックの反復が、牽引ストレスを積み重ねる
  • 身長が伸びる時期は大腿四頭筋が張りやすく、引っぱる力が強まる
  • 年齢は目安。段階はレントゲンで確認し、痛み方や運動歴とあわせて考える

こんなときは医療機関へ

受診・相談の目安

安静にしても痛みが強い・長引く、腫れや熱っぽさがある、夜間もうずく、歩き方がおかしい、転んだあとから痛む、といったときは、成長期のよくある痛みと決めつけず、整形外科など医療機関にご相談ください。骨や関節の別の病気が隠れていることもあります。当院でも、必要と判断したときは医療機関の受診をおすすめしています。

よくある質問

Q. オスグッドは成長痛と同じですか?
いわゆる成長痛とは区別して考えます。オスグッド・シュラッター病は、発達途中の脛骨粗面に牽引ストレスが加わって起こる骨端症で、痛む場所や運動との関係がはっきりしています。気になるときは受診で確かめましょう。

Q. 運動はやめないといけませんか?
痛みの程度や段階によります。完全に止めるかどうかは自己判断せず、痛みの出る動作や練習量の調整を含めて、医療機関や施術者と相談して決めるのが安全です。

Q. 大人になっても痛みますか?
脛骨粗面の発達が完了すると、成長期特有の弱さは落ち着いていきます。ただし出っぱりが残ることや、まれに大人になって症状が出ることもあります。気になる症状が続くときはご相談ください。

著者アイコン 伊藤聡史

膝下の痛みを様子見で片づける前に、発達段階と運動の中身を一緒に見てあげてください。素因は変えられませんが、練習量や動作、太ももの前の柔軟性は工夫できる部分です。痛みが強い・長引くときは、早めに医療機関へご相談を。

出典・参考

  • 伊藤聡史(とんとん整骨院 臨床研修担当)「脛骨粗面の発達過程とオスグッド・シュラッター病の発症」解説スライドおよびX投稿より
伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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