20分の施術で運動療法をどう組み込むか?とんとん整骨院の練習会から考える
瀬谷崎コラム
20分の中で、運動療法を「おまけ」にしない
施術時間には限りがあります。その中で徒手療法も運動療法も入れ、患者さんに「動いても大丈夫かもしれない」という経験を作る。ここに、現場の臨床構成力が出ます。
運動療法は、最後に少し足すものではありません。患者さんの状態によっては、施術の前半から組み込み、動くことで症状が悪化しない経験を作ることが大切です。
とんとん整骨院では、スタッフ同士で施術練習会を行っています。
ただ手技を打ち合うだけではありません。
問診、評価、徒手療法、運動療法、時間配分、最後の説明まで、現場に近い形で通して練習します。
今回のテーマは、20分という限られた時間の中で、運動療法をしっかり組み込むこと。
これ、口で言うのは簡単です。
でも実際の現場では、徒手療法に時間を使いすぎて、運動療法が最後の数分だけになることがよくあります。

まなぶ先生

瀬谷崎
運動療法が最後のおまけになる理由
施術時間が20分だとします。
最初に状態を確認して、徒手療法をして、変化を見て、説明していると、あっという間に時間が過ぎます。
そして最後に「家でこれをやってください」と、運動を少しだけ伝える。
これでも悪くはありません。
ただ、患者さんの身体が変わる経験としては弱くなりやすいです。
少し辛口に言うと、運動療法を最後に足すだけなら、施術者側も患者さん側も「本体は手技で、運動は宿題」という認識になりやすいです。
慢性痛の患者さんには、「動くと痛くなる」「動かすのが怖い」という感覚があることがあります。
その人にとって、運動療法は筋力をつけるだけのものではありません。
動いても大丈夫だった。
少し動いたら、むしろ楽になった。
この経験そのものが大切です。
あえて最初に運動療法を入れる意味
状態によっては、徒手療法の後に運動を入れる方が良いこともあります。
一方で、あえて最初に運動療法を入れることで、患者さんの認知が変わることがあります。
「動くと悪化する」と思っていた人が、軽い運動で痛みが増えない。少し楽になる。
これはかなり大きな体験です。
運動療法の目的は、筋力をつけることだけではありません。安全に動ける経験を作り、痛みに対する怖さを少しずつ下げることも大切です。
もちろん、何でも最初に動かせばいいわけではありません。
痛みの出方、炎症の強さ、しびれや脱力、外傷の有無、医療機関での確認が必要な可能性。
こうした所見を見た上で、どの運動なら安全に試せるかを選びます。
20分の中で、何に時間を使うか
20分という枠の中で、全部を丁寧にやろうとすると時間が足りません。
だからこそ、最初に構成を決める必要があります。
今日の主目的は何か。
徒手療法で変化を出すのか。運動療法で成功体験を作るのか。両方をどう組み合わせるのか。
ここを決めずに始めると、時間はすぐに流れます。
| 構成の例 | 向いている場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 徒手療法から運動療法へ | 痛みが強く、まず動きやすさを少し作りたい時 | 徒手療法に時間を使いすぎると運動が薄くなる |
| 運動療法から徒手療法へ | 動くことへの怖さが強く、安全な運動で変化を見せたい時 | 痛みを誘発しない姿勢と負荷を選ぶ |
| 運動療法中心 | セルフマネジメントや再発予防を進めたい時 | 患者さんがやり方を理解できているか確認する |
練習会では、あえて「半分くらいは運動療法に使う」くらいの意識で行います。
普段の臨床で運動療法が少なくなりがちな人ほど、そのくらい意識してちょうどいいです。
最初の運動は、怖くないものから選ぶ
運動療法を早めに入れるなら、リスク管理が必要です。
たとえば腰を反らすと痛い人に、いきなり強い伸展方向の運動をさせると、痛みを強める可能性があります。
その場合は、痛みを誘発しにくい姿勢や、患部への負担が少ない筋収縮から入ることがあります。

まなぶ先生

瀬谷崎
大臀筋や体幹の軽い収縮、呼吸を合わせたドローイン、痛みの少ない範囲での等尺性収縮。
こうしたものから始めると、患者さんも安心して取り組みやすくなります。
運動療法は、気合いで動かすものではありません。
怖さを下げながら、できる経験を積むための設計です。
通しでやるから、時間配分の粗さが見える
手技の練習だけなら、時間を気にせずできます。
運動指導だけの練習もできます。
でも、実際の現場ではそれらが全部つながっています。
問診して、評価して、施術して、運動を入れて、変化を確認して、説明する。
通しでやると、どこに時間を使いすぎているかが見えます。
単発の技術練習では見えない課題があります。20分で通してやると、判断の遅さ、説明の長さ、運動療法の薄さ、優先順位の曖昧さがかなりはっきり出ます。
これは、少し恥ずかしい練習です。
でも、現場に近い形でやるからこそ改善点が見つかります。
店舗全体で、運動療法の量を見直す
個人が「運動療法を増やそう」と思っても、数日経つと元に戻りやすいです。
忙しい日、予約が詰まっている日、痛みが強い患者さんが続く日。
気づけば、また徒手療法中心になっていることがあります。
だから、店舗全体で確認する必要があります。
- 今日の施術で、運動療法にどのくらい時間を使ったか
- 運動療法が最後のおまけになっていなかったか
- 患者さんが「動けた」という経験を持てたか
- 痛みを誘発しない運動を選べていたか
- 次回までに自宅でできる内容まで整理できたか
こうした振り返りをしないと、運動療法は簡単に薄くなります。
臨床の質は、個人の気合いだけでは保ちにくいです。
仕組みとして見直すことも大切です。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、痛みをただその場で軽くするだけでなく、患者さんが自分の身体を使えるようになることを大切にしています。
そのために、徒手療法だけでなく運動療法も組み合わせます。
もちろん、運動が先でも後でも、どちらが正解というわけではありません。
大切なのは、その人の状態に合わせて、どの順番で何をするかを考えることです。
運動療法は、筋トレを教えるだけではありません。患者さんに「動けるかもしれない」と感じてもらうための臨床でもあります。
患者さんにとっての運動療法
患者さんからすると、運動療法は少し不安なことがあります。
痛いのに動かしていいのか。
悪化しないのか。
家でちゃんとできるのか。
だからこそ、いきなり難しいメニューを渡すのではなく、その場で一緒に確認します。
- 痛みが強くならない範囲でできるか
- 終わった後に動きやすさが変わるか
- やり方を患者さん自身が説明できるか
- 家で続けられる量になっているか
- 次回までの目安が分かるか
運動療法は、患者さんに丸投げするものではありません。
一緒に試して、できる形にして、生活の中に持ち帰ってもらうものです。
時間配分にも、臨床の考え方が出る
20分という時間は、長いようで短いです。
その中で何を優先するか。
手で変えるのか、動いて変えるのか、説明で安心してもらうのか。
時間配分には、施術者の臨床観が出ます。
運動療法をおまけにせず、患者さんが動ける経験を持ち帰れるようにする。
そのためには、通しで練習し、振り返り、店舗全体で習慣にしていく必要があります。

瀬谷崎
参考
- Exercise therapy for chronic low back pain. Cochrane. 2021.
Cochrane - Hayden JA, Ellis J, Ogilvie R, Malmivaara A, van Tulder MW. Exercise therapy for chronic low back pain. Cochrane Database Syst Rev. 2021.
PubMed - Fear Avoidance and Musculoskeletal Pain. International Association for the Study of Pain.
IASP PDF













