きっかけなく1年かけて出てきた右肩の痛みが施術とセルフケアを経て楽になった例(40代男性)
主訴
2026年6月、右肩の痛みでご来院されました。1年ほど前から動かしたときの違和感が出はじめ、徐々に痛みとして表れてきたとのことでした。はっきりとしたきっかけはなく、筋力トレーニングは続けている状態で、腕を上げる動きと、手を背中側に回す動き(結帯動作)で痛みが出ていました。
当院の評価
患者様への説明
腕を上げるときには、肩甲骨が一緒に回りながら腕の動きを受け止める必要があります。この方は肩甲骨の回る動きが足りず、そのぶん上腕骨の頭が前上へ押し出されるような力が働いて、肩の前上で挟まれるように痛みが出ていると考えました。肩の後ろ側(棘下筋)や肩の外側(三角筋)、二の腕の後ろ側(上腕三頭筋)が緊張して、上腕骨を前上へ引く方向に働いていました。
日常動作・解剖学的動診
【日常動作】腕を上げる動作・手を背中に回す動作(結帯動作)で右肩の痛み 【検査】肩関節屈曲・結帯動作で疼痛誘発/肩甲骨の回旋不足
身体機能評価
肩甲骨の回旋不足/上腕骨頭が前方・上方へ変位する力/棘下筋・三角筋・上腕三頭筋の過緊張/肩甲下筋の筋出力低下
判断
肩甲骨の回旋不足と、それに伴って上腕骨頭が前方・上方へ変位する力が働いていたことが主な要因と判断しました。肩甲骨が腕の動きについてこないぶん、上腕骨の頭が前上へ押し出され、腕を上げる動きや手を背中に回す動きで肩の前上に負担が集まって痛みが出ていたと考えられます。トレーニングを続けている状態で、上腕骨を前上へ引く筋肉の緊張が積み重なっていた点も背景にあると考えました。
施術の様子
患者様への説明
まず、上腕骨を前上へ引く方向に働いていた肩の後ろ側と外側、二の腕の後ろ側の筋肉をゆるめて、上腕骨の頭が前上へ押し出されにくい状態をつくりました。そのうえで、上腕骨の頭を関節のなかに引き込んで支える肩の内側の筋肉(肩甲下筋)を働かせるトレーニングをお伝えし、ご自宅でのセルフケアとして続けていただく方針で進めました。
専門的内容
【手技療法】棘下筋・三角筋・上腕三頭筋へのアプローチ/【運動療法】肩甲下筋のトレーニング(セルフケアとして指導)/【物理療法】初回に実施
施術の経過
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初期
初回から3回目にかけて、腕を上げる動きや手を背中に回す動きで出ていた痛みは、はっきりと軽くなりました。
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中期
4〜5回目には、動かしたときにわずかに感じる程度まで減りました。この間、肩甲下筋のトレーニングをセルフケアとして続けていただきました。
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後期
現在もセルフケアを続けながら、再発予防のメンテナンスとして通院を続けていただいています。
料金・通院目安
料金の目安
初回料金
施術 3,740円+物理療法 990円
2回目以降の料金
ー
通院の目安
施術回数
5回を超えて継続中(再発予防のメンテナンス)
施術期間
5回目までで落ち着き、現在はセルフケアと並行してメンテナンスで継続中
ここでは、この症例の記録とは別に、「きっかけがないまま少しずつ出てきて、腕を上げる動きや手を背中に回す動きで痛む肩の痛み」という状態について、一般的な見方やご自宅でのヒント、医療機関へ相談する目安を順にたどります。
どうしてきっかけがないのに肩が痛くなるの?
腕を上げる動きでは、腕の骨(上腕骨)だけでなく、肩甲骨も一緒に回りながら動きを受け止めています。肩甲骨の回る動きが足りないと、そのぶん上腕骨の頭が前上へ押し出されるような力が働き、腕を上げるたびに肩の前上で挟まれるような負担がくり返されると考えられています。1回の負担は小さくても、日々の動作やトレーニングのなかで積み重なると、はっきりしたきっかけがないまま違和感から痛みへ進むことがあると言われています。
いわゆる五十肩と同じなのか
40代以降にきっかけなく出てくる肩の痛みは、いわゆる五十肩と言われる状態と出方が似ていることがあります。ただ、肩甲骨の回旋不足や上腕骨頭の位置のずれが背景にある場合は、動かし方の負担を変えていくことで経過が変わりやすいと言われており、この症例の方も数回のうちに痛みがはっきり軽くなっています。一方で、夜間の強い痛みや、あらゆる方向で動かせない状態が続く場合は別の背景も考えられるため、一度確かめることをおすすめしています。
セルフケアとして肩甲下筋を働かせる理由
肩の内側にある肩甲下筋は、上腕骨の頭を関節のなかへ引き込んで支える役割を持つと言われています。この筋肉が働いていると、腕を上げるときに上腕骨の頭が前上へ押し出されにくくなるため、施術でゆるめた状態をご自身で保ちやすいと考えられています。トレーニングを続ける方ほど、施術に頼るだけでなく、ご自身で支えられる状態をつくることが要になります。
きっかけのない肩の痛みでは、痛む場所だけでなく、腕を上げるときに肩甲骨がきちんと回っているか、上腕骨の頭が前上へ押し出されていないか、それを引き込んで支える筋肉が働いているかを確かめることが、進め方を考えるうえで役立つと言われています。
鈴木 英二きっかけがないのに肩が痛くなった方は、年齢のせいと思われがちですが、確かめてみると肩甲骨の動きや上腕骨の位置に理由があることが少なくありません。トレーニングを続けている方ほど、その負担が積み重なりやすい面があります。動かし方の負担を確かめてみてください。
こんな方に気になりやすい(セルフチェック)
次のような項目に心当たりが多い方は、負担が集まりやすい傾向があると言われています。当てはまること自体が異常を意味するわけではありません。
- はっきりしたきっかけがないまま、肩の痛みが少しずつ出てきた
- 腕を上げる動きや、手を背中に回す動きで肩の前上が痛む
- 筋力トレーニングを続けていて、肩まわりが張りやすい
- 肩をすくめるくせがある、肩甲骨が動きにくいと言われたことがある
ご自宅でできる工夫
痛みが和らいできたら、一般的なセルフケアとして次のような工夫が知られています。
- 痛みの出る動きは無理に反復せず、痛みのない範囲で腕を動かす
- 肩の後ろ側から二の腕の後ろ側を、痛みのない範囲でゆっくり伸ばす
- 脇を軽く締めた状態で手のひらをお腹側へ押し当てるように力を入れ、上腕骨の頭を引き込む筋肉を無理のない回数で働かせる
痛みやしびれが強いとき、力が入りにくいときは無理に行わず中止し、医療機関にご相談ください。
こんなときは医療機関へ
多くは時間とともに和らいでいくと言われていますが、次のような場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診してください。
- 転倒や強くぶつけたあとに痛みが出た、腕に力が入らない
- 夜間に痛みで眠れない、安静にしていても痛みが強まり続けている
- 腕や手にしびれや力の入りにくさがある
- 肩に腫れや熱感がある、発熱を伴う
よくある質問
きっかけがないのに肩が痛くなるのは、五十肩ですか?
40代以降にきっかけなく出る肩の痛みは、いわゆる五十肩と言われる状態と出方が似ていることがあります。この症例の方は、肩甲骨の回旋不足と上腕骨頭が前上へ押し出される力が背景にあり、そこに対応することで数回のうちに痛みがはっきり軽くなりました。背景はお一人おひとり異なるため、まず動かし方の負担を確かめています。
トレーニングは休んだほうがいいですか?
この症例の方は、筋力トレーニングを続けながら施術を進めました。痛みの出る動きを無理に反復しないことは大切ですが、すべて休む必要があるとは限りません。状態を確かめたうえで、続けてよい内容と控える内容をご相談しながら決めています。
何回くらいで変わりましたか?
この症例では、初回から3回目までに痛みがはっきり軽くなり、4〜5回目には動かしたときにわずかに感じる程度になりました。その後はセルフケアを続けながら、再発予防のメンテナンスで通院を続けていただいています。経過には個人差があります。
鈴木 英二きっかけのない肩の痛みは、動かし方の負担が積み重なったサインであることが少なくありません。肩甲骨の動きと上腕骨を支える力から進めていけば、トレーニングを続けながらでも痛みは変えていけます。違和感の段階で、一度ご相談ください。
この症状について、担当者と複数のスタッフで臨床的に検討したカンファレンス記事もあります。評価の進め方や考え方の詳細はこちらをご覧ください。
施術担当者

経歴
症例レポートは、改善した例だけでなく、そうでなかった例も含めて結果を選ばず掲載しています。








きっかけがないまま1年かけて徐々に出てきた肩の痛みで、筋力トレーニングを続けている方でした。確かめてみると、腕を上げるときに肩甲骨がついてこず、上腕骨の頭が前上へ押し出される力が働いていましたので、緊張していた筋肉をゆるめることに加えて、上腕骨の頭を引き込んで支える肩甲下筋をご自身で働かせられるようになることを重視しました。3回目までに痛みがはっきり軽くなり、4〜5回目にはわずかに感じる程度になっています。トレーニングを続ける生活は変わらないため、いまはセルフケアを軸に、再発予防のメンテナンスを続けていただいています。