脳梗塞を疑う小さな左右差。整骨院で両側確認が大切な理由

片側だけを見ない。小さな左右差を拾うために

整骨院には、本人も「脳の病気かもしれない」と思っていない状態で来院される方がいます。軽い運動障害や感覚障害を見落とさないために、患側だけでなく両側を比べて確認する流れを整理します。

脳梗塞の割合と危険因子に関する臨床メモ
脳梗塞のタイプや危険因子を知っておくと、整骨院で「いつもと違う左右差」に気づきやすくなります。
この記事について

整体院・整骨院に来院する可能性がある軽い運動障害や感覚障害を見落とさないために、ラクナ梗塞、危険因子、両側確認、医療機関へつなぐ判断をまとめました。

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伊藤聡史

片側の痛みやしびれだけを追っていると、軽い麻痺や感覚低下に気づきにくいことがあります。違和感がある時ほど、必ず両側で比べて確認します。

結論:突然の片側の脱力、しびれ、話しにくさ、顔のゆがみなどがある場合は、施術で様子を見る場面ではありません。脳卒中を疑う材料があれば、速やかに医療機関へつなぐことを優先します。

整骨院でも脳梗塞を頭に置く理由

脳梗塞というと、倒れる、意識がなくなる、強い麻痺が出る、というイメージがあるかもしれません。もちろん重い症状で発症することもありますが、最初は軽い片側の違和感、手足の動かしにくさ、感覚の左右差として見えることもあります。

そのため、患者さん本人が「肩こりかな」「腰からのしびれかな」「疲れているだけかな」と考えて、整体院や整骨院に来院する可能性もあります。ここで大切なのは、整骨院で病名を決めることではなく、施術で対応してよい状態か、医療機関での確認が必要そうかを見極めることです。

Chapter 1ラクナ梗塞を軽く見ない

脳梗塞は、血管の詰まり方によって、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓などに分けられます。国立循環器病研究センターの解説では、これらの脳梗塞タイプはいずれも全体の約4分の1程度と説明されています。

ラクナ梗塞は、脳の深い部分を通る細い血管が詰まるタイプです。運動麻痺や感覚障害が出ることがありますが、意識障害を伴わないこともあります。だからこそ、軽い左右差として現れた時に「たいしたことない」と見落とさない姿勢が必要です。

整体院・整骨院に来院する可能性を考えるうえでは、ラクナ梗塞を念頭に置くことが大切です。軽い片側症状でも、背景によっては医療機関での確認が必要です。

Chapter 2危険因子は問診で拾っておく

脳梗塞の危険因子としては、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、肥満、大量飲酒、心房細動などの心疾患、慢性腎臓病などが挙げられます。特に高血圧は、脳卒中全体と関わりが深い重要な背景です。

問診でこうした背景があると分かった場合、手足のしびれや力の入りにくさを、単純な筋肉や関節の問題だけに寄せすぎない方がよいことがあります。

確認したい背景 臨床での見方
高血圧 脳卒中の大きな危険因子。普段の血圧や服薬状況を確認する
糖尿病・脂質異常症 動脈硬化の背景として、血管性の問題を考える材料になる
喫煙・大量飲酒・肥満 生活習慣の背景として、脳血管疾患リスクの確認に関わる
心房細動などの心疾患 心原性脳塞栓の背景になり得るため、既往歴や服薬を確認する

Chapter 3患側だけでなく両側を見る

患者さんが「右だけしびれる」「左だけ力が入りにくい」と言うと、その側ばかり詳しく見たくなります。ただ、軽い運動障害や感覚障害は、患側だけを見ても分かりにくいことがあります。

両側を同じ条件で比べると、握る力、腕の保持、足の上げやすさ、触られた感覚、表情の左右差などが見えやすくなります。これは病名を決めるためというより、医療機関での確認が必要そうなサインを見落とさないための確認です。

  • 握力や指の動きに左右差がないか
  • 両腕を前に出して保持した時、片側だけ落ちないか
  • 両脚を上げた時、片側だけ上げにくくないか
  • 触覚やしびれ感に左右差がないか
  • 笑った時の口角、顔の動きに左右差がないか
  • 話しにくさ、ろれつの回りにくさ、言葉の出にくさがないか
確認のコツ

「痛い側だけ詳しく見る」ではなく、「左右を同じ動き・同じ刺激で比べる」ことが大切です。本人が気づいていない軽い左右差が、そこで初めて見えることがあります。

Chapter 4FASTと急な変化は必ず確認する

脳卒中を疑う時の合言葉として、FASTがよく使われます。Face、Arm、Speech、Timeの頭文字で、顔のゆがみ、腕の脱力、言葉の異常、そして時間を確認する考え方です。

整骨院では、これを難しい検査としてではなく、「今すぐ医療につなぐべきか」を見るための安全確認として使います。

FAST 見ること 確認例
Face 顔の片側が下がる、口角が左右で違う 笑ってもらい、左右差を見る
Arm 片腕が上がらない、保てない、力が入りにくい 両腕を前に出して保持してもらう
Speech ろれつが回らない、言葉が出にくい、会話が不自然 短い会話や復唱で違和感を見る
Time いつから始まったか、急に出たか 発症時刻や最終確認時刻を聞く
重要

突然の片側の脱力やしびれ、顔のゆがみ、話しにくさ、視野の異常、ふらつき、激しい頭痛などがある場合は、施術を優先せず、119番への相談・救急要請を含めて医療機関での確認をすすめます。症状が一度おさまった場合でも、一過性脳虚血発作の可能性があるため軽く扱いません。

整骨院での対応は「施術するか」より先に安全確認

脳梗塞が疑われる時に、整骨院で無理に原因を説明したり、施術で様子を見たりするのは適切ではありません。急な神経症状は時間が重要です。

大切なのは、患者さんの訴えを筋肉や関節だけに寄せず、危険因子、発症の急さ、左右差、言葉や顔の変化を短時間で確認することです。そのうえで、少しでも脳卒中を疑う材料があれば、医療機関での確認につなげます。

小さな左右差を拾える準備をしておく

脳梗塞は、整骨院で扱う疾患ではありません。ただ、整骨院に来院する患者さんの中に、本人も気づいていない軽い運動障害や感覚障害が混ざっている可能性はあります。

患側だけを見るのではなく、両側を比べる。危険因子を聞く。急に出た症状かを確認する。顔、腕、言葉の変化を見る。こうした基本を持っておくことで、施術前の安全確認の精度は上がります。

「たぶん大丈夫」で流さず、違和感があれば医療機関へつなぐ。この判断が、患者さんを守るうえでとても大切です。

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伊藤聡史

軽い症状ほど、患者さんも施術者も見逃しやすくなります。両側で比べて、急な変化やFASTの所見があれば、施術ではなく医療につなぐ判断を優先します。

参考

伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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