LIPUS(ライプス)は普通の超音波と何が違う?骨癒合を支える低出力パルス超音波療法

骨折治癒で使う超音波は、強く当てるものではない

LIPUS(ライプス:低出力パルス超音波療法)は、骨折部に低出力のパルス超音波を入れて、骨癒合を支える目的で使われる医療機器です。通常の超音波治療器と同じ感覚で考えると、少しズレて見えてしまいます。

LIPUSによる骨折部への低出力パルス超音波
LIPUSは、一般的な超音波治療器より低い出力のパルス超音波を骨折部に用いる治療機器です。
この記事について

LIPUSは、一般的な超音波治療器より低いmW/cm2単位の低出力パルス超音波を用い、骨折部の骨癒合を促す目的で使われる医療機器です。ここでは、通常の超音波との違い、骨折治癒で考えたい作用、遷延癒合・偽関節での位置づけ、使用時の注意点を整理しています。

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髙原佑輔

LIPUSは、強く当てて効かせる超音波ではありません。骨折部に低出力のパルス超音波を継続的に入れ、骨癒合を支える目的で使います。

結論:LIPUSは、一般的な超音波治療器のようにW/cm2単位で強く当てるものではなく、mW/cm2単位の低出力パルス超音波を使う医療機器です。骨折治療の経過を見ながら、医師の判断や管理のもとで使われることがあります。

LIPUSとは何か

LIPUSは、Low Intensity Pulsed Ultrasoundの略で、日本語では低出力パルス超音波と呼ばれます。名前の通り、出力を低く抑えた超音波をパルス状に照射する方法です。

一般的な超音波治療器は、筋・腱・関節周囲などの組織に対して温熱や非温熱的な刺激を狙うことが多いです。一方でLIPUSは、骨折部の骨癒合を促す補助として使われる医療機器で、狙いがかなり限定されています。

Chapter 1普通の超音波治療器との違い

まず見ておきたいのは、出力の単位です。一般的な超音波治療器ではW/cm2単位の強度が使われることが多いのに対し、LIPUSではmW/cm2単位の低い出力が用いられます。

つまりLIPUSは、「強く当てて温める」「刺激を強くして反応を出す」という考え方ではありません。骨折部に対して、低出力のパルス超音波を一定の条件で継続的に入れていくイメージです。

見る項目 一般的な超音波治療器 LIPUS
主な目的 軟部組織への温熱・非温熱的刺激、疼痛や組織反応の調整 骨折部の骨癒合を促す補助
出力の目安 W/cm2単位で扱われることが多い mW/cm2単位の低出力
当て方の考え方 目的部位、深さ、照射時間、プローブ操作を調整する 骨折部に対して、機器の条件に沿って継続的に照射する
判断の軸 痛み、可動性、組織の反応などを評価する 画像所見や医師の治療方針を含めて経過を見る

Chapter 2骨癒合を支えると考えられる仕組み

LIPUSによって、骨の血管新生の増加、骨芽細胞の分化、骨形成の誘導などが期待されると考えられています。

骨折が治るには、ただ骨がくっつくのを待つだけではなく、血流、細胞の働き、骨形成の環境が関わります。LIPUSはその過程を支える刺激として使われる、という見方をすると理解しやすいです。

LIPUSは「骨に強い刺激を入れる」よりも、「骨癒合の環境を支える」イメージで考えるとズレにくいです。出力が低いこと自体に意味があります。

Chapter 3遷延癒合・偽関節での位置づけ

整形外科の現場では、骨折の治りが遅い遷延癒合や、骨癒合が進みにくい偽関節の場面で、LIPUSが選択肢に入ることがあります。

整形勤務時代には「骨折治癒の最後の砦」のような位置づけで使い、遷延癒合や偽関節の経過で手応えを感じたと整理しています。ここは現場感として大事なところです。

ただし、LIPUSは万能ではありません。骨折部位、固定性、血流、感染の有無、喫煙、糖尿病などの基礎疾患、服薬、栄養状態によって骨癒合の進み方は変わります。LIPUSだけで判断するのではなく、治療全体の中の補助として見る必要があります。

臨床での見方

「LIPUSを使えば必ず癒合する」ではなく、「骨折治療の経過を支える選択肢のひとつ」として扱います。遷延癒合や偽関節では、医師の評価、画像所見、固定や荷重の方針とセットで考えます。

Chapter 4エビデンスは少し慎重に読む

LIPUSの研究は、対象が新鮮骨折なのか、遷延癒合・偽関節なのか、骨折部位や治療条件がどうかで結果の読み方が変わります。

たとえば、新鮮骨折に対する研究では、低リスクバイアスの研究に限ると明確な利益が示されにくいという報告があります。一方で、遷延癒合・偽関節に対しては、安全性に大きな懸念は少ないものの、有効性の根拠は十分とは言い切れないため、専門的な管理のもとで使うべきとするガイダンスもあります。

つまり、臨床では「効く・効かない」を一言で片づけるより、どの患者さんの、どの骨折に、どのタイミングで使っているのかを見た方が現実的です。

Chapter 5使う前に確認したいこと

LIPUSは骨折部に関わる医療機器なので、整骨院・整体院の現場で扱う場合も、骨折の診断や治療方針を勝手に置き換えないことが大切です。

  • 医師による骨折の評価や画像確認が行われている
  • 固定、手術、荷重制限などの方針が共有されている
  • 感染、強い炎症、皮膚トラブルなどのリスクが確認されている
  • 糖尿病、喫煙、栄養状態など骨癒合に影響する要因を把握している
  • 機器の添付文書や使用条件に合っている
  • 患者さんに「骨癒合を保証するものではない」と説明できている
安全管理

LIPUSは、骨折治療の主役を置き換えるものではありません。画像所見、固定性、荷重の可否、医師の方針を確認したうえで、補助的な位置づけとして扱います。

LIPUSは、骨折治療の選択肢を広げるための補助

骨折の治癒が思うように進まない時、現場では「もう少し何かできないか」と考える場面があります。LIPUSは、その時に選択肢として出てくる治療機器のひとつです。

ただし、LIPUSだけを見て判断すると危なくなります。骨折部の状態、固定性、患者さんの生活、基礎疾患、医師の方針を含めて見たうえで、骨癒合を支える補助として使うのが自然です。

低出力だからこそ、目的をはっきりさせて使う

LIPUSは、一般的な超音波治療器より低い出力で、骨折部にパルス超音波を入れる治療機器です。骨の血管新生、骨芽細胞、骨形成といった骨癒合の過程を支える目的で使われます。

一方で、効果を過度に言い切るのは避けたいところです。遷延癒合や偽関節で使われることはありますが、骨折治療の全体像、医師の管理、画像での経過確認があってこそ意味が出ます。LIPUSは「最後の砦」のように感じる場面もありますが、扱い方はあくまで慎重に、目的をはっきりさせて使うことが大切です。

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髙原佑輔

LIPUSは「なんとなく骨に良さそう」で使うものではありません。骨折部位、治癒段階、医師の方針を確認し、骨癒合を支える補助として位置づけます。

補足

LIPUSの有効性は、対象となる骨折の種類や時期によって研究結果の読み方が変わります。新鮮骨折では明確な利益が示されにくい報告があり、遷延癒合・偽関節では安全性に大きな懸念は少ないものの、有効性の根拠は十分とは言い切れないため、専門的な管理下での使用が前提になります。

髙原佑輔
株式会社とんとん/とんとん整骨院。店舗統括・物理療法指導責任者。柔道整復師。

2014年より整形外科に勤務し、骨折・捻挫など多数の外傷症例を経験。勤務先で出会った患者の「私、ここの病院に30年通ってるの」という一言をきっかけに、「症状を抑え続ける」のではなく「通院に頼らない身体づくり」を追求するようになる。その後、大手整骨院グループの技術統括責任者を経て現職。現在は、とんとん整骨院グループを統括し、物理療法の品質管理・スタッフ指導を担うほか、noteでは物理療法やテーピングに関する技術情報の発信にも取り組んでいる。

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