変形性膝関節症を疑う材料。リスクファクターと現場で見るべき所見
瀬谷崎コラム
変形性膝関節症は、画像だけで疑わない
年齢、性別、肥満、外傷歴、内反変形、荷重時痛、動作開始時痛。変形性膝関節症を疑う材料は複数あります。ひとつの所見だけで決めつけず、リスクと臨床所見を重ねて考えることが大切です。
変形性膝関節症は「膝が変形しているから痛い」と単純に片づける病態ではありません。力学的要因、代謝的要因、外傷歴、活動量、生活背景まで含めて整理する必要があります。
膝の痛みを訴える患者さんを見た時、変形性膝関節症は非常に重要な鑑別候補になります。
ただし、「年齢が高いから」「X線で変形があるから」「膝が内反しているから」という単一の情報だけで、症状の原因を決めつけるのは危険です。
変形性膝関節症には、多くのリスクファクターがあります。
そして臨床では、そのリスクファクターと、実際に出ている所見を重ねて考える必要があります。

まなぶ先生

瀬谷崎
変形性膝関節症のリスクファクター
変形性膝関節症のリスクファクターは、ひとつではありません。
加齢や性別のように変えにくいものもあれば、体重、活動量、筋力、生活習慣のように介入できる可能性があるものもあります。
特に膝は荷重関節なので、力学的ストレスの影響を受けやすい一方で、肥満やメタボリックシンドロームなどの代謝的要因も無視できません。
年齢・性別
中高年以降で多く、女性に多い傾向があります。年齢だけで決めるのではなく、他の所見と合わせて考えます。
肥満・代謝要因
体重増加による荷重負荷だけでなく、メタボリックシンドロームや代謝異常との関連も考慮されます。
外傷・over use
関節外傷や繰り返しの負荷はリスクになります。過去の半月板損傷や靱帯損傷の有無も確認したいところです。
アライメント・形態
内反変形、関節の形態異常、マルアライメントは、局所への力学的ストレスを高める要因になります。
筋力・抗重力筋
抗重力筋の萎縮や下肢筋力の低下は、関節への負担や動作の質に影響します。
不活発な生活
身体を動かさない生活は、筋力低下、体重増加、活動耐性低下につながり、社会的ファクターとしても重要です。
「使いすぎ」だけでなく、「使わなさすぎ」も問題になります。膝に負担をかけないことと、身体を動かさないことは同じではありません。
不活発な生活も、見落としやすいリスクになる
変形性膝関節症では、過度な負荷や外傷に目が向きがちです。
しかし近年は、身体を動かさない不活発な生活も重要な要素として扱われます。
活動量が落ちると、筋力や関節可動域、バランス、体重管理に影響します。
さらに「痛いから動かない」「動かないからさらに動けなくなる」という循環に入りやすくなります。
避けたい説明
膝が悪いので、なるべく使わないでください。痛みが出ないように安静にしてください。
目指したい説明
痛みを見ながら、できる範囲で活動量と筋力を落とさないようにしましょう。
もちろん、痛みを無視して運動すればよいわけではありません。
ただ、安静を治療方針の中心に置きすぎると、かえって機能低下を招く可能性があります。
現場で見る判断材料
変形性膝関節症を疑う時は、リスクファクターだけでなく、実際の臨床所見も合わせて見ます。
年齢や体型だけではなく、痛みの出方、動作時痛、可動域、外観、触診、医療機関での診断の有無を整理します。
- 40〜50代以上である
- 女性に多い傾向がある
- 肥満体型である
- 内反変形が見られる
- 関節裂隙の狭小化や骨棘が疑われる
- 外傷起因ではなく、徐々に症状が出ている
- 屈伸時や荷重時に痛みがある
- 屈曲・伸展の可動域制限がある
- 単純X線で変形性膝関節症と診断されている
- 動作開始時に痛み、動いていると楽になる傾向がある
これらの所見が複数重なるほど、変形性膝関節症を疑いやすくなります。
一方で、外傷起因、強い腫脹、熱感、発赤、ロッキング、急激な悪化などがある場合は、別の病態も考える必要があります。
画像所見は大事。でも痛みの説明はそれだけでは足りない
医療機関での単純X線による診断は、変形性膝関節症を考えるうえで重要な情報です。
しかし画像所見があることと、目の前の痛みがすべてその所見で説明できることは同じではありません。
画像上の変化があっても症状が強くない人もいます。
逆に、画像所見だけでは説明しにくい痛みを訴える人もいます。
画像は重要な判断材料です。しかし、画像を見て患者さんの痛みを見なくなると、臨床はかなり危うくなります。
痛みは構造だけでなく、筋力、活動量、睡眠、体重、恐怖、不安、仕事や生活環境にも影響されます。
だからこそ、画像所見と臨床所見を分けて整理することが大切です。
判断材料は、介入の方向性にもつながる
リスクファクターと判断材料を整理する理由は、変形性膝関節症っぽいかを当てるためだけではありません。
どこに介入できるかを考えるためでもあります。
年齢や性別は変えられません。
しかし、体重管理、活動量、筋力、動作の工夫、痛みへの理解、生活環境は変えられる可能性があります。
リスクファクターの中には変えられないものもあります。臨床では、変えられる要素に目を向け、患者さんが実行できる介入へ落とし込むことが重要です。
たとえば、肥満があるなら体重管理の支援。
不活発な生活があるなら、痛みを悪化させない範囲での活動量の調整。
筋力低下があるなら、膝の状態に合わせた運動療法。
「変形しているから仕方ない」で終わらせず、変えられる要素を探すことが必要です。
疑う材料を集め、決めつけずに見る
変形性膝関節症を疑う材料はたくさんあります。
年齢、性別、肥満、外傷歴、内反変形、荷重時痛、動作開始時痛、可動域制限、画像所見。
これらはどれも大切です。
しかし、ひとつだけで判断するには弱いです。
大切なのは、複数の材料を重ねて、変形性膝関節症の可能性を考えること。
そして同時に、変形性膝関節症だけで説明してよいのかを疑うことです。
膝の痛みを見た時は、画像、所見、生活背景、活動量、患者さんの不安まで合わせて見ます。
そのうえで、変えられる要素に介入する。
それが、変形性膝関節症を見る時の基本になると思います。

瀬谷崎
参考:変形性膝関節症のリスクファクター、診断の考え方、活動量や運動療法に関するガイドライン・レビューを参照して整理しています。
NICE: Osteoarthritis in over 16s: diagnosis and management
AAOS OrthoInfo: Osteoarthritis
Risk factors for the development of knee osteoarthritis across the lifespan
Association between physical activity and knee osteoarthritis













