緊張型頭痛を「筋肉の硬さ」で決めない。後頭下筋群と徒手介入の注意点
瀬谷崎コラム
押せば良い頭痛ばかりではない
頭痛を「首や肩の筋肉が硬いから」と説明したくなる場面はあります。ただ、緊張型頭痛を筋肉の硬さだけで決めつけると、評価も介入も狭くなります。
緊張型頭痛は、筋肉を押せば解決する頭痛という意味ではありません。名称、分類、後頭下筋群の役割、徒手介入のリスクを分けて考える必要があります。
頭痛の患者さんに対して、首や肩の筋肉を確認すること自体は珍しくありません。
実際、後頭部から首にかけてのこわばりや圧痛を訴える方もいます。
花粉の時期に鼻づまりやくしゃみで頭痛がつらくなるように、頭痛は身体のいろいろな状態に影響を受けます。
だからこそ、頭痛を「筋肉が硬いから」「後頭下筋群を押せばいい」という単純な話にしない方がいいです。
今回は、既存の頭痛分類の記事とは少し分けて、緊張型頭痛という言葉と後頭下筋群への介入について整理します。

まなぶ先生

瀬谷崎
「筋緊張型頭痛」という言い方には注意する
臨床や日常会話では、「筋緊張型頭痛」という言葉を聞くことがあります。
しかし、国際頭痛分類で使われている名称は、基本的に「緊張型頭痛」です。
過去の分類では筋収縮性頭痛のような表現が使われていた時代もありますが、現在の分類名と混ぜて使うと、少し誤解が生まれます。
特に問題なのは、「筋緊張型」と言うことで、あたかも頭痛の原因が筋肉の緊張に限定されるように聞こえてしまうことです。
名前は、評価の方向を決めてしまうことがあります。「筋緊張」と呼んだ瞬間に、筋肉を緩めることだけが正解に見えてしまうかもしれません。
緊張型頭痛では、頭頸部周囲の圧痛やこわばりが関わることはあります。
ただ、それは「筋肉だけが原因」という意味ではありません。
痛みの持続、睡眠、ストレス、生活リズム、感覚の過敏さ、活動量など、複数の要素を合わせて見る必要があります。
緊張型頭痛を、筋肉の硬さだけで説明しない
国際頭痛分類では、緊張型頭痛は発作の頻度や慢性化の状態、頭蓋周囲の圧痛の有無などで分類されます。
また、緊張型頭痛では末梢の痛みの仕組みが関わる場合もあれば、慢性化したものでは中枢の痛みの仕組みがより重要になる可能性も示されています。
つまり、首や肩の筋肉を触って硬いからといって、それだけで頭痛の説明が終わるわけではありません。
頭頸部周囲の圧痛、姿勢、首の可動性、生活動作、睡眠、疲労、ストレス、頭痛の頻度や持続時間。
筋肉が硬いから頭痛、後頭下筋群が張っているから頭痛、押して痛いからそこが原因、という単純化。
患者さんに「筋肉が硬いから頭痛が出ています」と伝えると、一見分かりやすい説明になります。
しかし、その説明が強すぎると、患者さんは「硬い筋肉をほぐさないと治らない」と思い込みやすくなります。
それが、強いマッサージや頻繁なほぐしへの依存につながることもあります。
後頭下筋群は、単なる「押す場所」ではない
後頭下筋群は、後頭部の頭痛や首の違和感と関連して語られることが多い部位です。
ただし、後頭下筋群は単なる運動器官ではありません。
頭頸部の細かい動きを調整するための感覚情報にも関わる、かなり繊細な領域として考えたい場所です。
後頭下筋群には筋紡錘が多いとされ、頭部や頚部の位置感覚、姿勢制御、眼球運動との連動にも関わる可能性があります。
後頭下筋群を「硬いから押す場所」としてだけ見るのではなく、頭頸部の動きを調整するセンサーの一部として見ると、介入の強さや目的が変わります。
強く押して、その場で楽になったように感じることはあります。
しかし、感覚入力として重要な領域に対して、毎回強い刺激を入れることが本当に適切かは考える必要があります。
とくに、押された直後は軽くなるけれど、すぐ戻る、あるいは翌日つらくなるような患者さんでは、介入の刺激量を見直した方がいいかもしれません。
徒手介入は、慎重に使う
ここで言いたいのは、後頭下筋群への徒手介入がすべて悪いという話ではありません。
圧痛、過敏さ、首の動き、眼精疲労、睡眠、仕事中の姿勢などを見た上で、軽い接触や動きの再学習として使う場面はあります。
ただ、緊張型頭痛らしいから後頭下筋群を強く押す、という単純な介入は避けたいです。
- 押した直後だけ楽になり、すぐ戻る
- 強く押さないと効かないと患者さんが感じている
- 押圧後にだるさや頭痛の悪化が出やすい
- 睡眠不足や強いストレスが目立つ
- 頭痛の性状がいつもと違う、急に悪化している
このような場合、押圧の強さを上げるより、評価の視点を広げる方が大事です。
首を動かす練習、呼吸、睡眠、仕事中の姿勢、休憩の取り方、頭痛の記録など、介入は必ずしも「押す」だけではありません。
片側性・拍動性だけで片頭痛とも決めない
頭痛の鑑別で、片側性や拍動性を片頭痛の代表的な特徴として考えることがあります。
それ自体は間違いではありません。
ただ、そこだけを見てしまうと、頭痛の状態を適切に把握できないことがあります。
片頭痛では、痛みの性質だけでなく、日常動作で悪化するか、吐き気、光や音への過敏、発作の持続時間など、複数の要素を合わせて見ます。
一方で、緊張型頭痛も、頭蓋周囲の圧痛の有無、頻度、慢性化の程度によって見え方が変わります。

まなぶ先生

瀬谷崎
頭痛もBPSモデルで考える
腰痛や頚部痛では、生物心理社会モデルで考えることが少しずつ増えてきました。
頭痛でも同じです。
筋肉、関節、神経、血管、睡眠、ストレス、仕事環境、活動量、服薬、月経周期、鼻炎やアレルギーなど、複数の要素が絡みます。
その中で、整骨院ができることと、医療機関で確認すべきことを分ける必要があります。
突然の激しい頭痛、今までと違う頭痛、発熱や神経症状を伴う頭痛、外傷後の強い頭痛、ろれつの異常や歩行障害を伴う頭痛などは、整骨院だけで抱え込まず医療機関での確認が優先です。
緊張型頭痛らしく見えるから安全、というわけではありません。
逆に、危険な所見がない頭痛に対して、必要以上に怖がらせることも避けたいです。
このバランスを取るためにも、頭痛を筋肉の硬さだけで説明しないことが大切です。
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頭痛を、筋肉だけに閉じ込めない
緊張型頭痛という名前を聞くと、筋肉の緊張をイメージしやすいです。
しかし、頭痛は筋肉だけで作られるものではありません。
後頭下筋群は重要な部位ですが、ただ押す場所として扱うのではなく、頭頸部の感覚や動きに関わる繊細な領域として見たいです。
頭痛の評価では、筋肉の硬さ、圧痛、姿勢、睡眠、ストレス、随伴症状、危険なサインを合わせて見ます。
そして、必要な時は医療機関につなぐ。
押せば良い頭痛ばかりではありません。
そう考えるだけで、頭痛への介入は少し慎重で、少し誠実になるはずです。

瀬谷崎
参考資料
- International Headache Society. ICHD-3: Tension-type headache
- International Headache Society. ICHD-3: Migraine without aura
- Alahmari KA, et al. Suboccipital Muscles, Forward Head Posture, and Cervicogenic Dizziness. Int J Environ Res Public Health. 2022.
- Hack GD, et al. The cervical myodural bridge, a review of literature and clinical implications. J Can Chiropr Assoc. 2014.












