運動前のストレッチは何秒がいい?ウォームアップと静的ストレッチを分けて考える

準備運動とストレッチは、同じものではない

運動前に、とりあえず静的ストレッチ。昔からよくある流れですが、目的を整理しないまま行うと、狙った効果とズレることがあります。

運動前に大切なのは、身体を動ける状態にすることです。静的ストレッチは使い方次第で役立ちますが、ウォームアップそのものではありません。

運動前にストレッチをする。

この習慣は、かなり広く根づいています。

ただ、そこで行われているストレッチが、何を目的にしているのかは意外と曖昧です。

ケガ予防なのか、可動域を広げたいのか、パフォーマンスを上げたいのか、筋肉を温めたいのか。

目的が違えば、選ぶ方法も変わります。

ウォームアップとストレッチを同じものとして扱うと、身体の準備として足りない部分が出てきます。

まなぶ先生
まなぶ先生

運動前は、まずストレッチをしておけばいいと思っていました。

瀬谷崎
瀬谷崎

ストレッチが悪いわけではないです。ただ、ウォームアップの目的を考えると、静的ストレッチだけでは足りないことがあります。

ウォームアップの目的は、身体を温めて動ける状態にすること

ウォームアップでは、体温や筋温を上げ、血流を増やし、神経筋系を運動に向けて準備することが重要です。

筋温が上がると、筋の収縮や弛緩がスムーズになり、酸素の利用や組織の粘性にも影響します。

こうした変化は、軽い有酸素運動や競技動作に近い動き、段階的に強度を上げる運動で起こりやすくなります。

一方、静的ストレッチだけを長く行っても、身体温度を十分に高めるウォームアップにはなりにくいです。

ウォームアップ

体温、筋温、血流、神経筋の準備、競技動作への移行を目的にします。

静的ストレッチ

一定時間伸ばすことで可動域や伸張感の変化を狙います。身体を温める主役ではありません。

静的ストレッチは、長ければ長いほど良いわけではない

静的ストレッチは、短時間であれば可動域を一時的に広げることがあります。

一方で、長時間・高強度の静的ストレッチを運動直前に行うと、筋力やパワー、スプリント、ジャンプなどのパフォーマンスに悪影響が出る可能性があります。

近年の整理では、短時間の静的ストレッチを、軽い有酸素運動や動的ウォームアップの中に組み込む場合、その影響は小さいとされることもあります。

つまり、問題は「静的ストレッチをするかしないか」だけではありません。

どれくらいの時間、どの強度で、何の前に、どんなウォームアップの中で使うのかが重要です。

誤解しやすい点

「長く伸ばすほど良い」「毎日やれば必ず良い」という単純な考え方は避けたいところです。目的、部位、競技、タイミングによって適切な使い方は変わります。

ストレッチには種類がある

ストレッチと一口に言っても、いくつかの種類があります。

静的ストレッチ、動的ストレッチ、バリスティックストレッチ、PNF(固有受容性神経筋促通法)など、それぞれ身体への刺激が違います。

種類 特徴 使いやすい場面
静的ストレッチ 一定時間、反動をつけずに伸ばす 可動域の一時的な拡大、クールダウン、セルフケア
動的ストレッチ 動きながら可動域を使う 運動前、競技動作への準備
バリスティック 反動や勢いを使う 競技特性に応じて慎重に使う
PNF(固有受容性神経筋促通法) 収縮と弛緩を利用する 院内介入で即時的な可動域変化を狙う場面

運動前なら、静的ストレッチだけで終わるよりも、動的な動きや競技特異的な動作へつなげる方が自然です。

可動域を少し広げたい場合は短時間の静的ストレッチを入れ、その後に動的ウォームアップを行うという使い方も考えられます。

筋の粘弾性を雑に説明しない

ストレッチの話では、筋の粘弾性という言葉が出ることがあります。

弾性は、伸ばされたものが元に戻ろうとする性質です。

粘性は、一定の張力が加わった時にじわっと変形する性質です。

静的ストレッチでは、こうした組織の一時的な変化や、伸ばされる感覚への慣れが関係すると考えられています。

ただし、「筋肉が物理的に長くなった」と単純に説明するのは慎重にした方がいいです。

説明の注意

ストレッチ後に可動域が広がっても、それがすべて筋肉の構造変化とは限りません。感覚の慣れ、神経系の変化、組織の一時的な性質の変化を分けて考えます。

痛い圧迫を足せば効く、とは限らない

ストレッチと同時に筋肉へ圧迫を加えると、即時的に動きやすくなることがあります。

しかし、圧迫が痛みを伴うほど強い場合、その刺激自体が侵害刺激となり、筋緊張を高めてしまうことがあります。

「痛い方が効く」という考え方は危険です。

圧迫の感じ方には個人差があり、同じ刺激でも人によっては強い痛みや不快感になります。

介入では、反応を見ながら強度を調整する必要があります。

運動前に考えたい実用的な流れ

運動前に行うなら、次のような流れが現実的です。

  • 軽い有酸素運動で体温と筋温を上げる
  • 必要な関節可動域を確認する
  • 可動域が足りない部位には短時間の静的ストレッチを検討する
  • その後、動的ストレッチや競技に近い動作へ移行する
  • 直前に長時間の静的ストレッチだけで終わらない
  • 痛い圧迫や無理な反動を入れない
  • 最終的に、実際の動きが良くなっているか確認する
まなぶ先生
まなぶ先生

結局、運動前の静的ストレッチはやっていいんですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

やっていい場面はあります。ただ、静的ストレッチだけでウォームアップ完了にしないことですね。使うなら短時間で目的を持って、その後に動的な準備へつなげたいです。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、ストレッチを「良い」「悪い」で単純に分けないようにしています。

何のために行うのか。

どのタイミングで行うのか。

その人の痛みや可動域、運動目的に合っているのか。

ここを確認します。

運動前なら、身体を温め、実際の動きに近づけることが大切です。

可動域を広げたいなら、ストレッチだけでなく、その後にその可動域を使える運動までつなげます。

目的が曖昧なまま続けるストレッチよりも、必要な場面で必要な量を使うことを大切にしています。

こんな方は一度ご相談ください

  • 運動前に何をすればいいか分からない
  • ストレッチをすると一時的には楽だが、すぐ戻る
  • ストレッチ後にパフォーマンスが落ちる感じがある
  • 身体が硬いと言われたが、どこをどう伸ばせばいいか分からない
  • 競技前やトレーニング前の準備を見直したい
  • 痛みがある状態でストレッチを続けてよいか不安

ストレッチは、目的が決まってから使う

ストレッチは便利です。

でも、万能ではありません。

運動前の目的がウォームアップなら、身体を温め、動ける状態を作る必要があります。

可動域を一時的に広げたいなら、静的ストレッチが役立つ場面もあります。

ただし、長くやれば良い、毎日やれば良い、痛いほど効く、という単純な話ではありません。

時間、頻度、強度、順番、運動の種類。

そこを整理して使うから、ストレッチは臨床でもスポーツでも意味を持つのだと思います。

瀬谷崎
瀬谷崎

ストレッチをするかどうかより、何のために、どの順番で使うかが大事です。ウォームアップとストレッチを混ぜて考えない方が、かなり整理しやすくなります。

参考

  • Behm DG, et al. Mechanisms underlying performance impairments following prolonged static stretching without a comprehensive warm-up.
    PubMed
  • Chaouachi A, et al. Effect of warm-ups involving static or dynamic stretching on agility, sprinting, and jumping performance in trained individuals.
    PubMed
  • Small K, et al. A systematic review into the efficacy of static stretching as part of a warm-up for the prevention of exercise-related injury.
    NCBI Bookshelf
  • Short Durations of Static Stretching when Combined with Dynamic Stretching do not Impair Repeated Sprints and Agility.
    PMC
  • Effects of Dynamic and Static Stretching Within General and Activity Specific Warm-Up Protocols.
    PMC
瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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