整骨院経営で社員を守るとは何か。理想より先に会社を潰さないこと
瀬谷崎コラム
優しい会社が、社員を守れるとは限らない
社員を大切にしたい。その気持ちは大事です。ただ、社員のやりたいことを全部優先した結果、会社が傾いて給料が払えなくなったら、それは本当に社員を守ったことになるのでしょうか。
「守る」と「大切にする」は、いつも同じではありません。社員の希望を聞くこと、働きやすくすること、理想を追うこと。その前に、企業が存続していることが大前提です。
従業員を大切にする会社でありたい。
これは、経営者なら誰でも思うことだと思います。
給料を上げたい。休みを増やしたい。やりたいことに挑戦させたい。本人の希望を尊重したい。
どれも大切です。
ただ、それを全部そのまま優先すれば、良い会社になるわけではありません。
会社には、家賃も人件費も広告費も教育費もあります。
利益が残らなければ、給料は払えません。
企業が生き残れなければ、社員を守ることはできません。

まなぶ先生

瀬谷崎
企業が残っているから、給料も教育も約束できる
会社が社員を守れるのは、会社が生きている時だけです。
これは冷たい話ではありません。
むしろ、社員を本気で守ろうとするなら、かなり現実的に見なければいけない話です。
給料を払うにも、賞与を出すにも、研修を整えるにも、新しい機器を買うにも、採用を続けるにも、まず会社にお金が残っている必要があります。
「社員のために」と言いながら、数字を見ずに理想だけを積み上げると、どこかで無理が来ます。
そして、会社が苦しくなった時に最も困るのは、経営者だけではありません。
そこで働く社員です。
理想を捨てる必要はありません。ただし、理想は企業が存続できる土台の上に乗せるものです。土台がないまま理想だけを積むと、理想ごと崩れます。
大切にすることと、甘やかすことは違う
社員を大切にすることは、社員の希望をすべて通すことではありません。
社員のやりたいことを、すべて会社の方針より優先することでもありません。
もちろん、本人の希望や価値観を聞くことは必要です。
ただ、会社としてやるべきことをやらずに、やりたいことばかり優先してしまえば、組織は崩れます。
本人が嫌がるから厳しいことを言わない。希望を全部通す。数字や成果の話を避ける。結果として、会社も本人も伸びない。
本人の希望を聞きつつ、会社として必要な成果や基準を伝える。やるべきことをやった上で、挑戦できる余白を作る。
耳ざわりの良い言葉だけをかけることが、優しさとは限りません。
時には、やるべきことをやってもらう。
成果を求める。
基準に満たなければフィードバックする。
会社として守らなければいけないラインを明確にする。
それも、社員を守るために必要なことです。
理想はタダではない
働きやすい職場にしたい。
教育を充実させたい。
社員に挑戦の機会を作りたい。
患者さんに良い臨床を提供したい。
どれも理想としては素晴らしいです。
ただ、理想にはコストがかかります。
時間も、お金も、人も、管理も、仕組みも必要です。
「良いことだからやる」だけでは続きません。
良いことを続けられる状態にしてからやる必要があります。
- その取り組みに必要な人件費を払えるか
- 現場の売上や生産性が落ちても耐えられるか
- 教育に使う時間を、誰がどこで回収するのか
- 社員の希望と会社の方針がズレた時、どちらを優先するのか
- 理想を続けるための利益が残っているか
ここを見ずに理想だけを語ると、最初は良く見えても長続きしません。
経営は、きれいごとだけでは回りません。
でも、きれいごとを実現するために数字を見ることはできます。
やりたいことは、やるべきことの後に置く
やりたいことがあるのは良いことです。
社員にも、やりたい臨床、やりたい働き方、やりたい役割があると思います。
ただ、やりたいことをやるためには、まずやるべきことをやる必要があります。
患者さんに必要な価値を提供する。
売上を作る。
チームで決めた基準を守る。
教育や練習を積む。
周囲に迷惑をかけず、成果で信頼を積み上げる。
その先に、やりたいことを任せられる状態が生まれます。
自由にやることは、責任を免除されることではありません。やるべきことをやり、成果を出し、信頼を積み上げた人に、より大きな自由や挑戦の余地が生まれます。
会社も同じです。
理想をやりたいなら、まず企業として存続できる状態を作る。
社員を大切にしたいなら、まず給料を払い続けられる会社でいる。
その順番を間違えると、理想が社員を苦しめることすらあります。
社員を守るために、会社は強くなければいけない
社員を大切にすることは、優しい言葉をかけ続けることではありません。
社員の希望を全部聞くことでもありません。
企業として生き残り、給料を払い、成長の場を作り、必要な時には厳しいことも伝えられる状態でいることです。
もちろん、数字だけを見て社員を雑に扱う会社は論外です。
ただ、社員を大切にしたいからこそ、数字も見なければいけません。
会社が傾けば、理想も教育も働きやすさも守れません。
理想を追うのは、土台を固めてから。
やりたいことをやるのは、やるべきことをやってから。
少し冷たく聞こえるかもしれませんが、社員を本当に守るなら、この順番はかなり大事だと思います。

瀬谷崎












