ばね指(弾発指)を評価する。A1プーリー腱鞘の病態と保存療法、鑑別
セラピスト向け
指の「引っかかり」を腱鞘で考える
ばね指(弾発指)は、手指の屈筋腱がA1プーリー部を通過する際の障害で、引っかかりや弾発、朝のこわばりを生じます。腱と腱鞘の不適合・肥厚が主体で、糖尿病や女性、反復負荷が背景に挙がります。多くは保存療法が第一で、ドケルバン病や関節由来の疾患との鑑別、注射・手術の位置づけの理解が要点になります。
「指が引っかかる」という訴えは、関節の問題と取り違えられることがあります。臨床ではばね指を、腱と腱鞘の通過障害として、病態・評価・鑑別・保存療法に分けて扱います。
病態:A1プーリーでの通過障害
手指を曲げる屈筋腱は、指の付け根でA1プーリー(靭帯性腱鞘)の下を通ります。ここで腱や腱鞘が肥厚し、滑走時に通過障害が起こると、引っかかり(弾発)や、曲げ伸ばしの途中で止まる現象が生じます。
名称に「炎」は付きませんが、純粋な炎症というより、腱と腱鞘の不適合・肥厚による機械的な滑走障害が主体です。母指・中指・環指に多く、糖尿病や関節リウマチ、女性、手をよく使う反復負荷が背景に挙げられます。朝にこわばり、日中に軽快するパターンがよくみられます。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎疫学と自然経過(期待値の設定)
中年以降、女性に多く、糖尿病患者では頻度が高く難治化しやすい傾向があります。軽症例は保存療法やセルフケアで改善することも多い一方、弾発が強くロックを繰り返す例は遷延します。
「軽症は保存的に改善が期待できるが、強い弾発・ロックや糖尿病背景では難治化しうる」という見通しを共有しておくと、適切な段階で注射・手術の相談につなげられます。
評価:単独所見で決めない
- A1プーリー部(指の付け根の手のひら側)の圧痛・結節(しこり)の触知
- 弾発現象:屈伸での引っかかり、カクッとした弾発、ロック(伸びない/曲がらない)
- 重症度:弾発の有無・自動で戻せるか・他動が必要か・固定したままか
- 朝のこわばりのパターン、罹患指の数
- 背景:糖尿病、関節リウマチ、手の使用状況
引っかかりの訴えだけでは関節疾患と区別できません。圧痛部位と弾発の再現、他の関節所見の有無を組み合わせて判断します。
鑑別(外せないもの)
- ドケルバン病(手首の親指側の腱鞘炎):部位が異なる
- へバーデン結節・ブシャール結節(指関節の変形性関節症):関節中心の腫れ・変形
- 関節リウマチ:多関節・腫脹・朝のこわばりが長い・全身所見
- 母指CM関節症:母指の付け根の関節痛
- デュピュイトラン拘縮(手掌腱膜の拘縮):索状物と屈曲拘縮
介入:保存療法を設計する
軽症〜中等症はまず保存療法。負荷を抜くだけでなく、滑走を保ちつつ刺激を減らす設計にします。
- 相対的安静と負荷調整:強く握る・反復する動作の見直し
- 装具:MP関節を伸展位で固定し弾発を抑える夜間装具など
- 運動:腱の滑走を保つ範囲での自動運動、過度なストレッチは避ける
- 物理療法は補助的。糖尿病など背景の管理も並行
- 注射・手術の位置づけを共有し、適応は医師判断につなぐ
ステロイドの腱鞘内注射は有効性が報告され、保存療法の中心的選択肢の一つですが、糖尿病例では効果が劣る・再発しやすい傾向があります。反復・難治例やロックが強い例では、A1プーリー切開(手術)が検討されます。これらの適応判断は医師の領域で、徒手のみで弾発を解消しようと無理をしないことが大切です。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎「指の関節」でなく「腱の通り道」で見る
ばね指は、関節でなくA1プーリー部の通過障害として捉えると、評価も介入も焦点が定まります。圧痛部位と弾発を症状に結びつけ、鑑別と注射・手術の位置づけを押さえて進めます。難治・強い弾発は医師につなぎます。














