高齢で首を動かすと痛い、振り向きにくい首をどう考えるか。症例をスタッフで検討

70代の首の痛み、なぜ「頭の位置と肩甲骨」に着目したのか

1つの症例を、担当した鈴木英二先生(とんとん整骨院 東武練馬店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。振り返る、上を向くなど、首を動かすと痛む右の首。高齢で首が回りにくいのは歳のせいだけか、頭の位置と肩甲骨に出どころを見た判断を、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、振り返る・上を向くなど首を動かすと右の首が痛む70代の女性。日常で下を向く時間が長い方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:高齢で首を動かすと痛む、頭の位置と肩甲骨に着目
今回検討する症例(担当:鈴木先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=首を動かすと右の首が痛む(70代・女性)。所見=肩をすくめる・上を向く・振り返る動きや、首の曲げ伸ばし・側屈・回旋で痛みと可動域の制限、僧帽筋の筋出力低下、頭部前方位と肩甲骨が外下方に位置。背景=日常で下を向く時間が長い。とらえ方=頭部前方位に合わせて肩甲骨が外下方に位置し、首に過剰な負担がかかっていたと考えた。対応=上腕二頭筋のストレッチ、肩甲骨のモビライゼーション、小胸筋・前鋸筋をゆるめ、僧帽筋中部のトレーニング、姿勢と画面を見る時間の調整のセルフケア指導。経過=動かしたときの首の痛みが落ち着いてきた。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

首を動かすと痛む、振り向きにくい、原因は頭の位置と肩甲骨か

主訴は首を動かすと出る痛み。けれど鈴木先生は、首そのものより、頭の位置と肩甲骨に出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

鈴木先生鈴木先生

主訴は振り返る・上を向くなど、首を動かすと出る痛みでした。所見をとると、頭が前に出て、肩甲骨が外側の下に引き下がった位置にありました。痛む首そのものより、頭の位置と肩甲骨に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

首を動かすと痛いなら、首そのものの問題に思えます。それでも頭の位置や肩甲骨に目を向けたのはなぜですか。

鈴木先生鈴木先生

頭が前に出ると、その重さを支えるために首の後ろが働き続けます。肩甲骨も下がって、首を動かす土台が崩れる。だから振り返る・上を向くといった動きで首に負担が集まる、という像が所見と一致したんです。

高齢で首が回りにくいのは、歳のせいだけか

年齢が高い方では、何が変えられるかの見極めが大事です。そこを確かめます。

教子先生教子先生

70代の方ですよね。腕のしびれや力の入りにくさ、めまい、安静にしても引かない痛みといった、医療機関での評価が必要なサインは外せていましたか。

鈴木先生鈴木先生

そこは慎重に確認しました。腕への神経症状やめまい、安静時の強い痛みはなく、痛みは首を動かす動作に伴って変わりました。こうしたサインがあれば、まず医療機関の受診をご案内する前提で進めています。今回はそれらがないことを確かめました。

瀬谷崎瀬谷崎

『歳だから首が回らない』と思われがちですが、頭の位置や肩甲骨の土台が崩れていると、年齢に関わらず首は動かしにくくなります。危険なものを外したうえで、土台から動きを取り戻せるなら、その方向は妥当だと思います。

無理のない範囲で首の動きを取り戻す介入と経過

首だけを動かすのでなく、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

首そのものでなく、頭の位置や肩甲骨から整えていったんですね。

鈴木先生鈴木先生

はい。硬くなった上腕や胸の筋肉をゆるめ、肩甲骨の動きを引き出して、肩甲骨を支える筋肉を使えるようにしました。下を向く時間や姿勢の見直しも一緒に。動かしたときの首の痛みが落ち着いてきています。今は無理のない範囲で姿勢づくりと肩甲骨まわりのケアを続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

首の動きを、頭の位置と肩甲骨という土台から取り戻しにいっているのが要点ですね。土台が整えば、首は動かしやすくなる。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただ年齢や体調の波があるので、無理のない範囲で続けたいところです。

考察:頭の位置と肩甲骨からとらえる高齢の首の痛み

所見という事実(頭部前方位と肩甲骨が外下方に位置・僧帽筋の弱さ・首を動かすと出る痛みと可動域の制限)と、経過という結果(動かしたときの首の痛みの落ち着き)。この両方が、「首そのものでなく頭の位置と肩甲骨に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。頭が前に出て肩甲骨が下がると、首を動かす土台が崩れて負担が集まる。危険なものを外したうえで、年齢に関わらず土台から動きを取り戻せる部分がある。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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