洗濯物を干すと肩が痛い、腕を伸ばす動作で出る肩の痛みをどう考えるか。症例をスタッフで検討

腕を伸ばすと出る肩の痛み、なぜ「肩甲骨の動き」に着目したのか

1つの症例を、担当した杉生真悟先生(とんとん整骨院 南浦和店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。物を取ろうとしたり、洗濯物を干すために腕を伸ばすと出る肩の痛み。肩そのものでなく、肩甲骨の動きに出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、1年ほど前から腕を遠くに伸ばすと肩が痛むようになった70代の女性。洗濯物を干す動作がつらく、特に対処しないまま過ごしてきた、という方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:腕を伸ばすと出る肩の痛み、肩甲骨の動きに着目
今回検討する症例(担当:杉生先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=物を取るときや洗濯物を干すために腕を伸ばすと出る肩の痛み(70代・女性)。背景=1年ほど前から腕を遠くに伸ばすと痛むようになり、洗濯物が干しづらい状態が続いていたが、特に対処はしていなかった。所見=肩の曲げ・横挙げ(屈曲・外転)で痛み、背中で手を回す動作(結滞動作)で痛み、肩甲骨の上方への回り(上方回旋)の不足、肩を支える筋肉(棘下筋・僧帽筋)の働きの低下、姿勢の崩れ。とらえ方=肩甲骨が十分に動かず、肩を支える筋肉が働きにくいことで、腕を上げる動作の負担が肩の関節に集まっていたと考えた。対応=肩まわりの手技と肩甲骨を動かす手技、肩を支える筋肉のトレーニング、腕の使い方の指導、肩甲帯のセルフケア。経過=数回で腕を伸ばすときの痛みが和らぎ、日常の支障が減ってきた。高い所に干すときにわずかな違和感が残る程度まで変化し、現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

腕を伸ばすと肩が痛む、原因は肩甲骨の動きか

主訴は腕を伸ばすと出る肩の痛み。けれど杉生先生は、肩そのものより、肩甲骨の動きに出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

杉生先生杉生先生

主訴は、物を取るときや洗濯物を干すために腕を伸ばすと出る肩の痛みでした。所見をとると、腕を上げる・横へ広げる動きで痛みが出て、背中で手を回す動作もつらく、肩甲骨が十分に回りきれていませんでした。肩を支える筋肉の働きも落ちていて、痛む肩の関節そのものより、肩甲骨の動きに出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

肩が痛いと、肩の関節そのものの問題に思えます。それでも肩甲骨に目を向けたのはなぜですか。

杉生先生杉生先生

腕を上げるとき、肩の関節だけでなく、背中の上で肩甲骨も一緒に回って分担します。肩甲骨が十分に回らないと、足りない分を肩の関節が無理に動いて補う。腕を遠くに伸ばす・高い所へ手を伸ばす動作ほど負担が集まりやすい。洗濯物を干すとつらい、という出かたとも一致したんです。

毎日の家事で腕を伸ばすたびに痛むのをどうするか

この方は、洗濯物を干すなど、毎日の家事で腕を伸ばすたびに痛む、という困りごとがありました。そこを確かめます。

教子先生教子先生

毎日の家事で繰り返し痛む、とのことですよね。念のため、腕がまったく上がらない、力が入りにくい、肩が大きく腫れる、安静にしても強く痛むといった、急いで受診すべきサインは外せていましたか。

杉生先生杉生先生

そこは確認しました。腕がまったく上がらない・力が入らない、強い腫れや安静時の強い痛みはなく、痛みは腕を伸ばす動作に伴って変わりました。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめたうえで、毎日の家事の動きに合わせて進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

家事は休めないので、痛む動きを避けるだけでは続きませんよね。肩甲骨が動いて分担できるようになれば、同じ洗濯物干しでも肩の関節に集まる負担は減らせる。危ないものを外したうえで、毎日の動作そのものを楽にしていく。その方向が妥当だと思います。

腕を伸ばす動作に強い肩にするための介入と経過

肩を直接ほぐすだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

肩の関節そのものでなく、肩甲骨や支える筋肉から整えていったんですね。

杉生先生杉生先生

はい。硬くなっていた肩まわりをゆるめて、肩甲骨が回りやすいようにし、肩を支える筋肉を使えるようにしました。腕の使い方やセルフケアも一緒に続けてもらって、数回で腕を伸ばすときの痛みが和らぎ、日常の支障が減ってきました。今は高い所に干すときにわずかな違和感が残る程度です。

瀬谷崎瀬谷崎

肩の痛みの出どころを、関節そのものでなく、肩甲骨の動きと支える筋肉に戻して整えにいっているのが要点ですね。肩甲骨が分担できれば、同じリーチ動作でも肩に集まる負担が小さくなる。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただ毎日使う場面が多いので、支える力づくりは続ける前提で見ていきたいところです。

考察:肩甲骨の動きからとらえる、腕を伸ばすと出る肩の痛み

所見という事実(肩甲骨の上方への回りの不足・肩を支える筋肉の働きの低下・屈曲や外転、結滞動作での痛み)と、経過という結果(数回で腕を伸ばすときの痛みが和らぎ、日常の支障が減って、高い所に干すときにわずかな違和感が残る程度まで変化したこと)。この両方が、「肩そのものでなく、肩甲骨の動きに出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。腕を伸ばすと肩が痛むのは、肩甲骨が十分に回らない分を肩の関節が無理に補うため。その場をほぐすだけで終わらせず、肩甲骨が分担できるように整える。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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