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レントゲンで異常なしでも膝の痛みが続く。変形性膝関節症を米国リウマチ学会(ACR)の臨床基準で確かめる

膝のレントゲンに所見がないとき。X線を使わない臨床基準の当てはめ方

膝のレントゲンで異常なしと言われたのに、痛みが続く。その膝を、画像だけで変形性膝関節症ではないと言い切れるでしょうか。問診と触診だけで当てはめられる臨床基準と、その読み方を取り上げます。

この記事について

このコラムでは、当院のカンファレンスで検討した膝痛の相談をもとに、米国リウマチ学会(ACR・エーシーアール)が示した変形性膝関節症の臨床分類基準を取り上げます。X線を使わない6項目の中身、感度95%という数字の読み方、X線あり基準との使い分け、病院へ相談し直す目安まで触れています。

著者アイコン 伊藤聡史

画像は大切な情報ですが、画像だけで決まらない膝もあります。問診と手で確かめた所見を基準に沿って数え直すと、疑いの強さを言葉にして医師へ伝えられると考えています。

結論:レントゲンに所見がないことは、変形性膝関節症(膝OA・オーエー)の否定とは限りません。ACRにはX線を使わない臨床基準があり、膝の痛みに加えて6項目中3項目以上が該当すれば、X線検査に関係なく感度95%とされます。該当の数を疑いの強さの目安にして、必要なら医師へ相談し直します。

画像で異常なし。それでも痛みが続く膝

検討したのは、膝蓋骨(膝のお皿の骨)の上あたりと、下腿(すね)の筋に痛みが出ている方の相談でした。整形外科でレントゲンを撮り、医師からは変形性膝関節症ではないと説明を受けています。

一方で、気になる材料もありました。体重がここ最近で10kg増えていることです。体重の増加は、立つ・歩くたびに膝へかかる負荷を大きくします。画像に骨の変化が写らないことと、膝OAを疑わせる材料があることが、同じ膝の中で同居している状態です。

こうしたときに役に立つのが、X線(レントゲン)の結果に頼らずに当てはめられる臨床基準です。検討の場で共有されたのが、ACRの分類基準でした。

X線を使わない臨床基準の6項目

ACRの基準には、問診と身体所見だけで当てはめられるものがあります。前提は膝の痛みがあること。そのうえで、次の6項目のうちいくつ該当するかを数えます。

  • 50歳以上である
  • 軋轢音(あつれきおん)がある。膝を動かしたときのグズグズ、ゴリゴリとした音や感触
  • 骨の圧痛がある。膝の骨の縁を押さえたときの痛み
  • 骨の肥大がある。骨の形が張り出すような変形
  • 触れても熱感がない
  • 朝のこわばりが30分未満でおさまる

膝の痛みに加えてこのうち3項目以上が該当すると、X線検査に関係なく感度95%と報告されています。特別な機器は要らず、問診と触診でその場で数えられるのがこの基準の持ち味です。

使い方の前提

これは患者さんを分類するための基準であり、診断そのものは医師が行うものです。施術者側は、評価を組み立て直す目安、そして病院で相談し直すかどうかの目安として使います。

感度95%は否定の方向に強い

感度とは、実際にその病気を持つ人のうち、検査で陽性になる人の割合です。感度95%なら、実際に膝OAである人の大半が、この基準に引っかかる計算になります。

裏を返すと、感度の高い検査で陰性、つまり3項目未満しか該当しない場合、膝OAである可能性は下がります。感度が高い基準は「当てはまれば確定」ではなく、「当てはまらなければその病気らしくない」という否定の方向で力を発揮します。

今回のように画像で所見がない膝でも、3項目以上が該当するなら、膝OAの疑いを残したまま評価を続ける根拠になります。逆に該当が少なければ、別の原因を探す方へ舵を切りやすくなります。

朝のこわばり30分未満はリウマチとの線引き

6項目の中で目を引くのが、朝のこわばりが30分未満という項目です。こわばりがあることではなく、短くおさまることが該当の条件になっています。

これは関節リウマチとの判別を意識した項目です。リウマチでは朝のこわばりが1時間以上続くことが多いとされます。リウマチを専門とする学会が作った基準だからこそ、まぎらわしい相手を外す仕掛けが織り込まれています。

朝のこわばりが長く続く膝は、膝OAとして扱う前に、医師への相談を優先したいサインです。

X線あり基準との使い分けと当てはめの手順

ACRの基準には、X線所見を組み合わせた版もあります。骨棘(こつきょく。骨の縁にできるトゲ状の張り出し)などの画像所見を含めて判定するものです。今回のようにレントゲンで所見が見られなかった膝では、次の手順で臨床基準の方を当てはめます。

  1. 画像の有無と所見を聞き取るレントゲンを撮っているか、骨棘や関節裂隙(かんせつれつげき。骨と骨のすき間)の狭小化を指摘されたかを問診で確認します。
  2. 所見がなければX線なしの臨床基準へ撮影済みで所見がない膝は、X線あり基準では拾えません。問診と触診で6項目を当てはめます。
  3. 該当項目を数えて記録する膝の痛みに加えて何項目が該当したかを数え、日を置いて数え直せるように記録します。
  4. 結果を評価と受診相談に反映する3項目以上なら膝OAの疑いを残して評価を組み立て、医師へ相談し直す材料にします。該当が少なければ他の原因の評価を進めます。

基準はあくまで参考の一つ。最後は医師への相談で確かめる

該当が3項目に届かなかったからといって、膝OAを完全に否定できるわけではありません。基準は白黒をつける道具ではなく、疑いの強さを測るものさしで、該当の数は体の変化とともに動きます。

痛みが長引く、強くなる、腫れや熱感が出てきた、朝のこわばりが長くなってきた。そうした変化があれば、以前に異常なしと言われていても、あらためて医療機関で相談してください。施術者側も、確かめた項目とその結果をそのまま伝えることで、医師の判断材料を増やせます。

著者アイコン 伊藤聡史

基準は確定のための道具ではなく、疑いの強さを測るものさしだと考えています。数え直すたびに結果は動くので、記録を残しておいて、変化が出たときに医師へつなげるようにしています。

参考文献

Altman R, et al. Development of criteria for the classification and reporting of osteoarthritis. Arthritis Rheum. 1986;29(8):1039-1049.

伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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