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長時間座位で腰痛が出る患者への生活指導。仕事中・就寝中の癖にどう手を打つか

同一姿勢の腰痛は、屈曲・伸展・回旋の3パターンで考える

デスクワークで長時間座っていると腰が痛くなる。こういう患者さんに、施術者が介入できない仕事中や就寝中の時間をどう指導するか。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスに実際に挙がった質問をもとに、同一姿勢の持続を3パターンでとらえる見方と、物を使った指導の実際を紹介します。

週1回の施術なら、施術者が患者さんの体に触れているのは1週間のうちほんの数十分です。残りの大半は仕事中の座位と就寝中の姿勢で占められます。ここをどう扱うかという質問から、検討が始まりました。

まなぶ先生まなぶ先生

座位で腰痛が出る患者さんに「良い姿勢を意識してください」と伝えても、次の来院時にはもう元どおり、というのはよく経験します。意識に頼る指導には限界がありますよね。

教子先生教子先生

それに「同一姿勢が悪い」とひとくくりにすると、指導も漠然とします。どの方向の姿勢が続いているのかで、打つ手は変わるはずです。

瀬谷崎瀬谷崎

検討でもまずそこからでした。同一姿勢の持続を方向別に分けてとらえると、指導の中身が具体的になります。

同一姿勢の持続を、まず3パターンに分ける

長時間の同一姿勢が腰部へのストレスになっている場合、その持続のしかたは大きく次の3パターンでとらえられます。

  • 長時間の屈曲位。座位で腰椎が丸まったまま続くタイプ
  • 長時間の伸展位。腰椎が反ったまま続くタイプ
  • 回旋。回旋位が持続しているか、瞬間的に大きな回旋の運動が起きるかの2つに分かれる

どのパターンが疑われるかを評価してから、それに応じた指導をします。指導のやり方そのものは特殊なものではありません。ただ、検討の場で方針としてはっきり共有されたのは、「こういう姿勢を頑張って取ってくださいね」とはあまり言わない、ということでした。

指導の方針

姿勢を意識で保たせるのではなく、物を使って、座るだけで姿勢が変わる条件を作る。介入できない時間の指導は、本人の頑張りに依存しない形にします。

屈曲位の持続には、尾骨の下のクッションで骨盤を前傾させる

長時間の屈曲位が疑われる患者さんへの具体例として挙がったのが、尾骨の下あたりにクッションを置いてもらう方法です。クッションで座面に傾斜がつくと骨盤が前傾し、腰椎の前弯がある程度自然に保たれることがあります。

本人は姿勢を意識していなくても、座るという動作の中に条件が組み込まれているので、仕事中の時間にもそのまま効かせられます。「胸を張って座ってください」と言い続けるより、続きやすい指導です。

まなぶ先生まなぶ先生

屈曲位の人を伸展方向へ誘導するのはイメージしやすいです。逆に、反ったまま座っている伸展位持続の人を屈曲方向へ誘導する場合はどうでしょう。

教子先生教子先生

座り方の工夫だけで腰椎だけを屈曲位に持っていくのは、たしかに難しそうです。狙っていない部位が代わりに動いてしまいそうですね。

瀬谷崎瀬谷崎

そこが検討でも論点になりました。屈曲位は伸展位に持っていきやすいのですが、伸展位を屈曲位に持っていくのは結構難しい。おそらく腰椎ではなく胸椎のほうが屈曲してしまうのではないか、という見立てでした。

伸展位の持続は、生活指導より徒手介入・運動療法が中心になる

伸展位持続のタイプでは、物を使った座り方の工夫だけで腰椎を屈曲方向へ誘導するのは難しく、代償として胸椎の屈曲が出てしまう可能性が考えられます。この場合の生活指導は屈曲位のときほど単純にはいきません。

そのため伸展位持続の患者さんでは、介入できない時間の工夫よりも、施術の場での徒手介入や運動療法である程度改善を進めていく方針になります。同じ「同一姿勢の腰痛」でも、パターンによって生活指導の効かせやすさに差がある、という点は押さえておきたいところです。

要点

屈曲位持続は物を使った生活指導が効かせやすく、伸展位持続は徒手介入・運動療法が中心。同じ座位の腰痛でも、方向のパターンで指導の設計が変わります。

クリープ現象と、就寝中・足組みなど個別の癖への指導

方向のパターンに加えて、検討ではクリープ現象にも話が及びました。クリープ現象とは、同一姿勢の持続によって軟部組織が徐々に伸びていく現象のことです。腰椎の側屈症候群では、長時間の同一姿勢によるクリープ現象で下肢の筋が延長したり短縮したりしていることが非常に多い、という臨床印象が共有されました。

それが症状の原因になっているのであれば、施術での改善に加えて、延長や短縮を作っている生活の癖そのものに手を入れる必要があります。ここで効いてくるのが、就寝中の姿勢や足組みといった個別の癖への指導です。

  • 就寝中に側臥位が多い患者さん。「仰向けで寝てください」と伝えても、眠っている間に側臥位へ戻ってしまうため、大きい抱き枕を買って使ってもらう
  • 足を組む癖のある患者さん。こちらは物での工夫が難しく、「組まないでください」と注意を促すことになる

評価の中で「この患者さんの場合はこの筋が短縮する」「この場合は使いすぎになる」といった癖と組織の対応が見えてきたら、それに対する指導は基本的に早い段階から始めます。施術で変えた状態を、介入できない時間に癖が戻してしまう前に手を打つ、という順番です。

意識させる指導から、癖に合わせて条件を変える指導へ

今回の検討の軸は2つでした。ひとつは、同一姿勢の持続を屈曲位・伸展位・回旋の3パターンでとらえてから指導を選ぶこと。もうひとつは、姿勢の意識づけではなく、クッションや抱き枕のような物で、患者さんが頑張らなくても姿勢が変わる条件を作ることです。

介入できない時間は施術者にとって見えない時間ですが、問診と評価で癖を特定できれば、指導の対象にできます。なお、生活指導で対応しながらも症状が強まる場合や経過が思わしくない場合は、医療機関の受診を勧める判断も並行して持っておきたいところです。

瀬谷崎瀬谷崎

生活指導というと「良い姿勢を保ちましょう」になりがちですが、意識はまず続かないと考えておくくらいでちょうどいいと思います。どの方向の持続なのかを評価して、物で条件を変えられるところは物に任せる。物で変えにくい伸展位のようなタイプは、施術側で受け持つ。その振り分けが、介入できない時間の指導の設計だと考えています。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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