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部活のアップでだけ痛むオスグッド病。矛盾する問診情報をどう扱うか

体育では痛くないのに、部活のアップでは痛い。典型から外れるオスグッド病の検討

バスケ部の女子中学生のオスグッド病。部活のアップのジョグやダッシュでだけ痛み、体育の授業では痛まないという。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスに実際に挙がった相談をもとに、問診の情報が矛盾するときの確かめ方と、評価の広げ方を考えます。

相談されたのは、バスケットボール部に所属する女子中学生の症例です。1年生のときに膝をぶつけたのをきっかけに、お皿の下(脛骨粗面のあたり)の周囲が痛みはじめ、当初は走ってもプレーしても痛む状態でした。オスグッド病(成長期に脛骨粗面へ牽引ストレスがかかって痛むスポーツ障害)として経過を追っています。

発症から3〜4か月がたち、痛みはかなり引いてきました。ところが、部活のアップで走ったときの痛みだけが抜けずに残っています。練習も試合もふつうにこなせて、終わったあとに1時間弱ほど痛みが出るものの、悪化はしていません。

  • 痛むのは部活のアップ(ジョグ・ダッシュ)のときと、練習後の1時間弱だけ。悪化はしない
  • ジャンプ動作では痛みが出ない。エリーテスト(大腿四頭筋の伸長テスト)も陰性
  • HBD(踵殿距離。うつ伏せで膝を曲げ、かかととお尻の間の距離を測る)は2cmとかなり柔らかい
  • 本人いわく、体育の授業や学校で走る場面では痛くない
まなぶ先生まなぶ先生

アップで痛むなら、体が温まっていない朝の登校時にも痛みが出そうなものです。強豪校ではなく、アップも軽く走る程度と聞くと、バスケのアップだけで痛むというのは引っかかりますね。

教子先生教子先生

エリーテストが陰性で、HBDも2cm。大腿四頭筋の伸長ストレスで説明しようとすると、どこか噛み合わない症例ですよね。

瀬谷崎瀬谷崎

情報が矛盾して見えるときこそ、介入を足す前に問診を確かめ直す価値があると思います。矛盾を残したままだと、評価の軸が定まらないので。

矛盾に気づいたら、他の活動での症状から確かめ直す

検討でまず挙がったのは、体育の授業・休み時間の遊び・マラソン練習など、部活以外の運動で本当に症状がないのかを確かめ直すことでした。負荷の軽い部活のアップで痛むなら、学校生活で走る場面にも痛みが出ているはずだからです。

実際に聞き直すと、「マラソン大会の練習のときは痛かった」という追加情報が出てきました。最初の問診で「体育では痛くない」だった答えが、場面を具体的に挙げて聞くと変わったわけです。

問診の確かめ方

「痛い場面」をひとつ聞いて終えず、活動ごとに聞き分けます。体育の授業・休み時間・マラソン練習・登下校。負荷の水準が近い場面どうしで答えが食い違うなら、施術の追加より先に、情報の取り直しです。

あわせて、良くなっていく途中の経過という可能性も挙がりました。体が温まる前の時間帯にだけ痛みが残るのは、回復期にありうる出方です。検討の場では、学生時代のオスグッド病は朝から痛く、温まると楽だったという経験談も共有されました。

バスケ特有の負荷。パワーポジションと着地の観察

競技特性からの確認も挙がりました。バスケットボールなら、パワーポジション(膝と股関節を曲げて構える基本姿勢)の取り方をよく見る、という意見です。観察の要点は次の3つでした。

  • パワーポジションで骨盤の前傾を保てているか。後傾して大腿四頭筋だけで支える構えになっていないか
  • ジャンプの着地で膝が内側に入っていないか
  • 負担が四頭筋に集中する動きか、股関節側でも受けられている動きかの見分け

本例はジャンプでは痛みが出ないため、ジャンプ練習やレイアップシュートで痛むタイプとは分けて考える必要があります。それでも、構えと着地の癖は膝前面への負荷のかかり方を左右するので、実際の動きで確かめておく価値があります。

柔らかいのに痛い。柔軟性の実測をハムストリング側へ広げる

HBDが2cmという実測は、大腿四頭筋側の柔軟性がかなり高いことを示します。一方で、FFD(指床間距離。立位体前屈で指先と床の間の距離を測る)は未測定でした。検討では、ハムストリングのタイトネスと骨盤の後傾を確かめるよう勧められています。

骨盤の後傾はオスグッド病との関連がありうる、という見方も検討の場で共有されました。断定できる話ではありませんが、四頭筋側だけ測って柔軟性の評価を終えると、この線を確かめないまま通り過ぎることになります。

教子先生教子先生

HBDが柔らかいと、そこで柔軟性の評価を切り上げたくなります。でもそれは四頭筋側の情報だけなんですよね。

まなぶ先生まなぶ先生

FFDなら前屈ひとつで測れますし、次の来院ですぐ埋められる項目ですね。

瀬谷崎瀬谷崎

ハムストリングが硬くて骨盤が後傾したまま走っていれば、膝の前側の使われ方は変わってきます。測っていない項目をつぶしていくことが、矛盾した症例では特に効いてくると思います。

介入の方針。伸ばす・鍛える・押さえる

評価を続けながら、検討で挙がった介入の方針は次の3本立てです。

  1. 伸長性を高める大腿四頭筋とハムストリングの伸長性を高めます。実測が柔らかくても、走る場面での使われ方までは保証しないので、実施後の症状変化とセットで確かめます。
  2. 殿筋を鍛える中殿筋・大殿筋のトレーニング。着地で膝が内側に入る癖や、骨盤の前傾を保ちにくい構えに対する土台づくりとして挙がりました。
  3. テーピングキネシオ仕様のテープでパテラ(膝蓋骨)を押さえる貼り方。本例では貼ると楽だという反応が出ています。四頭筋の張力が膝蓋腱へ伝わりにくくなり、痛む角度までの屈曲を抑えるという見方が共有されました(検討の場での臨床印象です)。

これらで変化が出るかどうかは、方針を組み直す判断材料にもなります。痛みが長引く場合や、成長軟骨の状態を画像で確かめたい場合は、整形外科の受診を勧めます。診断は医師の領分です。

力学の説明が行き詰まったとき。その子への関心の持ち方

今回の検討で特徴的だったのは、心理面の扱いです。相談したセラピスト自身が、「この子の気持ちの問題として処理していいのか」というためらいを口にしていました。

まなぶ先生まなぶ先生

気持ちの話を聞くのは、評価から逃げているようで気が引ける場面もあります。

教子先生教子先生

でも、力学で説明のつかない出方をしている以上、部活での立場や日々の背景もこの子の情報のうちですよね。

瀬谷崎瀬谷崎

オスグッド病として見るのではなく、バスケ部で頑張っているひとりの中学生として見る。そうすれば、バスケへの気持ちや部活の楽しさを自然な会話の中で聞くのは、逃げでも何でもありません。問題なのは、安易に気持ちの問題だと決めつけて評価をやめてしまうことのほうです。矛盾した情報は、確かめ直しの合図として扱ってもらえたらと思います。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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