柔道整復師の給料が上がらない理由。努力より先に見るべき給与の構造
瀬谷崎コラム
給料が上がらない時、努力の向きがズレていることがある
一生懸命働いているのに、なぜ評価されないのか。その答えは、努力の量ではなく、会社にどんな利益を生んでいるかを見ると少し整理しやすくなります。
給料は、時間や気合いだけでは上がりません。個人売上、マネジメント、経費削減、会社が将来必要とする役割まで見て、利益にどう貢献するかを考える必要があります。
柔道整復師や鍼灸師として働いていて、「もっと給料を上げたい」と思うのは自然です。
毎日患者さんを見て、練習して、勉強して、遅くまで残っている。それなのに給料があまり変わらない。
そうなると、「この業界は給料が低い」「会社が評価してくれない」「開業するしかない」と考えたくなります。
もちろん、会社側に問題があるケースもあります。
ただ、少し辛口に言うと、努力しているのに給料が上がらない人は、努力の方向が会社の利益とズレていることがあります。

まなぶ先生

瀬谷崎
給料の原資は、会社ではなく患者さんの売上
まず、給料の原資を考える必要があります。
給料は会社から振り込まれます。だから、会社が払っているように見えます。
でも、実際には患者さんからいただいた売上があり、そこから家賃、広告費、材料費、システム費、税金、教育費などが支払われ、最後に人件費が出ます。
つまり、会社にお金が湧いているわけではありません。
給料は「働いた時間へのご褒美」ではなく、会社に残せた成果や利益の中から支払われるものです。
治療院では、人件費率の目安として売上の30〜40%程度を見ることがあります。
もちろん業態やステージによって違いますが、ここを無視すると経営は苦しくなります。
スタッフ側から見ると、「月給30万円ほしい」と思うのは自然です。
でも経営側から見ると、その給与を払った上で、他の経費と利益が残るだけの売上や貢献が必要になります。
評価されにくい努力がある
努力しているのに評価されにくい人には、いくつか共通点があります。
| ありがちな努力 | 本人の感覚 | 経営側から見た課題 |
|---|---|---|
| 時間をかけて頑張る | 人より努力している | 生産性が低いと評価されにくい |
| 個人売上だけを追う | 自分は数字を作っている | 労働集約なので上限がある |
| 自己流で成果を出す | 結果が出ているから問題ない | 再現性や組織運用のリスクになる |
| 不満だけを伝える | 正当に評価してほしい | 利益への貢献案がないと交渉になりにくい |
時間をかけること自体が悪いわけではありません。
若手のうちは、練習や勉強に時間が必要です。
ただ、社会では「長くやった」だけでは評価されません。短い時間で成果を出す人の方が、生産性は高く見られます。
個人売上だけでは、どこかで頭打ちになる
施術者として個人売上を上げることは大事です。
患者さんに選ばれ、説明ができ、継続して通ってもらえる。これは大きな価値です。
ただ、1対1で施術をする以上、個人売上には上限があります。
1日の時間も、身体も、予約枠も有限です。
だから、一定以上の給料を目指すなら、自分の売上だけでなく、他の人が成果を出せる仕組みを作る必要があります。
個人プレイヤーとして売上を作る段階から、チームの生産性を上げる段階へ移る。ここが、雇われのまま収入を上げる大きな分岐点です。
院長やマネージャーが評価されるのは、本人が売れるからだけではありません。
新人が育つ。スタッフの離職が減る。予約が安定する。院全体の売上や利益が上がる。
このように、他者の成果を作れるようになるから評価されます。
自己流で売上を作る人は、組織では任せにくい
短期的に売上を作れる人でも、会社の理念や方針を無視して自己流で動く人は、評価が難しくなります。
患者さんへの説明が院の方針と違う。売り方が強すぎる。自分だけのやり方で再現性がない。後輩に教えられない。
こういう状態だと、経営側は大きな役割を任せにくいです。
売上を作れるかだけでなく、再現性があるか、会社の方針と合っているか、他のスタッフに展開できるかも見られます。
「結果を出しているから自由にさせてほしい」という気持ちは分かります。
でも、組織で給料を上げるなら、自分だけの成果では足りません。
会社の中で、他の人にも使える形に変換できるかが大事です。

まなぶ先生

瀬谷崎
王道は、役職について組織の成果を上げること
給料を上げる王道は、役職について組織の成果を上げることです。
院長、マネージャー、教育担当、採用担当、マーケティング担当。
名前は何でもいいですが、要するに「自分以外の成果に影響を与えられる役割」を担うことです。
- 新人が早く戦力化する仕組みを作る
- スタッフの離職を減らす
- 院全体のリピート率や説明力を上げる
- 採用や広報を改善する
- 院内研修や評価基準を整える
- 現場の無駄なコストを減らす
こういう仕事は、個人施術の延長ではありません。
だから、最初は難しいです。
でも、ここに入らないと、給料は上がりにくくなります。
経費を下げる人は、利益を作っている
売上を上げるだけが貢献ではありません。
経費を下げることも、会社の利益に直結します。
たとえば、外注しているSNS運用、広告運用、動画編集、院内研修、採用業務などを自分が学び、一定の質で内製化できるようになったとします。
会社が外部に払っていた費用が減れば、その分だけ利益は残ります。
「自分がこれをできるようになれば、会社はいくら経費を下げられるか」。この視点を持てる人は、給与交渉がかなりしやすくなります。
大事なのは、ただ「給料を上げてください」と言うことではありません。
この業務を自分が巻き取る。これだけコストが下がる。だから、その一部を給与として還元してほしい。
こういう形なら、経営者も判断しやすくなります。
会社が将来必要とする役割を先に取りにいく
もう一つ大事なのは、会社の未来を見ることです。
店舗が増えるなら、教育担当が必要になります。採用が増えるなら、人事や広報が必要になります。広告費が増えるなら、マーケティングを見られる人が必要になります。
その時、会社は外部から高い給料で人を採るかもしれません。
なら、その役割を自分が担えるように準備しておく。
「自分は頑張っています」ではなく、「会社が次に必要とするこの役割を、自分が担えます」と言えるようにする。これが交渉材料になります。
これは副業をゼロから始めるより、現実的な場合があります。
本業とつながるスキルなら、会社にも自分にもメリットがあります。
動画編集、採用、SNS、広告、教育、マネジメント。どれでもいいですが、会社の利益に直結するものを選ぶことです。
会社に変わる気がないなら、転職も選択肢
ここまでの話は、会社側に成長する意思がある場合です。
店舗展開もしない。採用もしない。教育にも投資しない。新しい役割も作らない。利益もスタッフに還元する気がない。
こういう会社で、いくら提案しても給料が上がらないことはあります。
その場合は、転職も選択肢です。
会社に利益を作る提案をしても、役割も評価も変わらないなら、その環境では成長の上限が近いかもしれません。
ただし、転職前に一度は考えてほしいです。
自分は会社にどんな利益を作れるのか。どんな役割を担えるのか。どの経費を下げられるのか。どのチーム成果を上げられるのか。
ここを考えずに転職しても、次の職場で同じ壁にぶつかることがあります。
とんとん整骨院が大切にしていること
とんとん整骨院では、給料を「長く働いたから上がるもの」とは考えていません。
臨床力を上げる。患者さんへの説明力を上げる。新人を育てる。院の仕組みを整える。採用や教育に関わる。経費を下げる。
そうやって、会社と患者さんに価値を作れる人を評価したいと思っています。
もちろん、会社側にも責任があります。
スタッフが成長できる道筋を作ること。役割を任せること。成果を見て還元すること。
一方で、スタッフ側も「給料を上げたい」だけではなく、「何を引き受けるのか」を考える必要があります。
「頑張っているから上げてほしい」だけだと、交渉としては弱いです。「会社にこれだけ利益を作れるから、その一部をください」と言える状態を作りたいですね。
給料を上げたいなら、利益の作り方を見る
給料を上げたいなら、まず給与の構造を見る必要があります。
自分の売上はいくらか。院全体にどんな影響を与えているか。経費を下げられるか。後輩を育てられるか。会社が次に必要とする役割を担えるか。
この視点を持つと、努力の方向が変わります。
ただ長く働くのではなく、利益につながる役割を取りにいく。
個人の施術だけでなく、組織の成果を上げる。
そこまで考えられるようになると、雇われのままでも収入を上げる道は見えてきます。

瀬谷崎













