売上があるのに給料が上がらない。整骨院の給与を考える前に見たい会社のお金

売上は、会社を動かす全部の原資になる

自分が売上を作っているのに、なぜ給料がもっと上がらないのか。そう感じた時は、まず売上がどんな支出に変わっているのかを見る必要があります。

患者さんからいただいた売上は、そのまま給料になるわけではありません。整骨院を続けるための支出を差し引いた先に、給与や昇給の原資があります。

給与に不満を持つこと自体は、悪いことではありません。

もっと評価されたい。

もっと給料を上げたい。

そう思うのは自然です。

ただし、その話をする前に、ひとつ見ておきたいことがあります。

それは、患者さんからいただいた売上が、会社の中でどこへ流れているのかです。

まなぶ先生
まなぶ先生

自分が月にこれだけ売上を作っているなら、もっと給料に反映されてもいいのでは、と思う人は多そうです。

瀬谷崎
瀬谷崎

気持ちは分かります。ただ、その売上から何が支払われているのかを知らないと、給料の話が感情だけになってしまいます。

売上は、そのまま給与にはならない

整骨院の売上は、患者さんからいただいた大切なお金です。

その売上から、会社は毎月さまざまな支払いをしています。

たとえば、次のようなものです。

人にかかる費用

  • 給与・賞与
  • 法定福利費
  • 採用費
  • 研修費
  • 福利厚生費
店舗を維持する費用

  • 家賃
  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 清掃・衛生管理費
  • 保険料
施術・運営にかかる費用

  • 施術に関わる原価
  • 消耗品費
  • 設備・機器の維持費
  • 減価償却費
  • 雑費
集客・外部連携の費用

  • 広告費
  • ホームページ運用費
  • 外部委託費
  • 予約システムや各種ツール費
  • 専門家への相談費用

つまり、スタッフ個人が売上を作っていたとしても、その売上がすべて個人の給与に回るわけではありません。

会社を維持するための費用を支払い、次の採用や教育、広告、設備投資にも使われます。

まず見たい前提

「自分の売上」と「自分の給料」は直結しているように見えますが、実際にはその間に会社運営の支出があります。ここを見ないまま給与だけを見ると、判断がかなりズレやすくなります。

人件費は、手取り給与だけではない

給与を考える時に見落とされやすいのが、人件費の範囲です。

スタッフが受け取る手取り額だけが、会社の負担ではありません。

給与のほかに、社会保険料の会社負担、雇用保険、労災、採用費、教育費、研修にかかる時間なども含めて、会社は人を雇っています。

さらに、新人がすぐに売上を作れるわけではありません。

教育期間中は、先輩の時間も使います。

ミスを防ぐための確認や、技術練習、カンファレンスも必要です。

だから、会社から見ると「人を一人雇う」ということは、月給だけの話ではありません。

会社側の見え方

スタッフ本人には給与明細の金額が見えます。一方で会社側には、給与以外の人件費、教育コスト、採用コスト、店舗維持費まで含めた総額が見えています。

個人売上だけで評価すると、見落とすものがある

もちろん、売上を作る力は大事です。

患者さんに選ばれ、通っていただき、価値を提供することは治療院にとって重要です。

ただ、個人売上だけを見て評価すると、別の問題が出ることがあります。

  • 自分の患者さんだけを優先し、チーム全体の動きが悪くなる
  • 教育や後輩指導に時間を使う人が評価されにくくなる
  • 院全体の改善より、個人の数字だけを追いやすくなる
  • 説明や提案が売上目的に寄りすぎる可能性がある
  • 受付、準備、片付け、カンファレンスなどの見えにくい貢献が軽くなる

整骨院は、個人事業の集合体ではありません。

チームとして患者さんを迎え、院を維持し、改善の質を保っていく必要があります。

給与の話は、利益への貢献で話す

給料を上げたいと思った時、「頑張っているから上げてほしい」だけでは弱いです。

もちろん、頑張りは大切です。

でも会社としては、その頑張りがどのように利益や価値につながっているのかを見る必要があります。

給与の話をするなら、たとえば次のような視点が必要になります。

  • 患者さんの継続率や満足度を高めているか
  • 院全体の売上や利益に貢献しているか
  • 後輩の成長や教育に関わっているか
  • 外注していた業務を内製化し、経費を下げているか
  • 採用、発信、仕組みづくりなど、将来の会社価値を高めているか

感情として不満を持つことと、給与交渉として成立することは別です。

会社のお金の流れを理解すると、話し方も変わります。

まなぶ先生
まなぶ先生

売上を作っているだけでは、給与アップの説明として足りないこともあるんですね。

瀬谷崎
瀬谷崎

売上は大事です。でも、会社は売上だけではなく、利益、教育、採用、院全体の安定まで見ています。そこまで見えると、給与の話はかなり変わります。

会社にも、説明する責任がある

一方で、スタッフだけが会社のお金を理解すべき、という話でもありません。

会社側にも、ある程度は説明する責任があります。

何を評価しているのか。

どうすれば給料が上がるのか。

個人売上以外の貢献をどう見ているのか。

その基準が曖昧だと、スタッフは不信感を持ちやすくなります。

会社のお金の流れをすべて公開する必要はありません。

ただ、給与や評価の考え方は、できるだけ言語化しておいた方がいいと思います。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、患者さんからいただいた売上を大切に考えています。

それは、スタッフの給与だけでなく、院を維持する費用、採用、教育、設備、広告、研修にも使われます。

患者さんにより良い施術を届けるためには、技術や知識だけでなく、会社としての継続性も必要です。

だからこそ、売上を作る力も大事ですし、院全体を良くする力も大事です。

自分の数字だけを見るのではなく、会社のお金の流れや、チームへの貢献まで見られる人は、長く強い治療家になりやすいと思っています。

給与に不満がある時に見直したいこと

  • 自分の売上が、会社のどんな支出の上に成り立っているか
  • 自分の仕事が、売上だけでなく利益にどう関わっているか
  • 後輩教育や院全体の仕組みに貢献できているか
  • 経費削減や業務改善に関われる余地があるか
  • 給与を上げるために、会社が納得できる材料を作れているか

給与の不満は、ただ我慢すればいいものではありません。

ただ、会社のお金の流れを知ると、見え方はかなり変わります。

給料の話は、売上の先まで見てから

給与を考える時、自分の売上を見ることは大切です。

でも、売上はそのまま給与になるわけではありません。

原価、人件費、法定福利費、家賃、広告費、水道光熱費、通信費、外部委託費、消耗品費。

そうした支出を支払いながら、会社は院を続けています。

その前提を知ると、「なぜ給料が上がらないのか」という問いは少し変わります。

自分はどのように利益へ貢献しているのか。

どの支出を下げられるのか。

どの価値を増やせるのか。

そこまで見えると、給与の話はただの不満ではなく、会社と一緒に考えるテーマになります。

瀬谷崎
瀬谷崎

給料に不満を持つこと自体は悪くありません。ただ、自分の売上がどんな支出の上に成り立っているのかを知ると、見える景色はかなり変わると思います。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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