高齢で立ち上がりや腰からお尻が痛い、無理なく変えるには。症例をスタッフで検討

80代の腰とお尻の痛み、なぜ「股関節と支える筋力」に着目したのか

1つの症例を、担当した中村拓真先生(とんとん整骨院 東武練馬店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。立ち上がりや前かがみで出る腰からお尻の痛み。高齢でも、無理のない範囲で変えられる部分はどこか、腰そのものでなく股関節と支える筋力に出どころを見た判断を、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、立ち上がりや前かがみで腰からお尻が痛む80代の女性。長く付き合ってきた症状の方の症例です。年齢に合わせて、無理のない範囲でどこを変えられるかを見ていきます。

症例カルテ:高齢の腰とお尻の痛み、股関節と支える筋力に着目
今回検討する症例(担当:中村先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=左の腰から臀部にかけての痛み(80代・女性)。背景=立ち上がりや前かがみで痛みが出る状態。所見=屈曲動作で腰から臀部に鈍い痛み、股関節の屈曲制限、臀部の筋出力低下と筋の延長、ハムストリングスの短縮、長く座る姿勢の崩れ。とらえ方=股関節と体幹の連動性の低下が腰へ過剰な負担をかけていたと考えた。対応=股関節の可動域を広げる手技、臀部の筋力づくり、股関節まわりのストレッチのセルフケア指導。経過=かがむときの腰やお尻の痛みが落ち着いてきた。現在は無理のない範囲での再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

立ち上がりや前かがみで腰からお尻が痛い、原因は股関節か

主訴は立ち上がりや前かがみで出る腰とお尻の痛み。けれど中村先生は、腰そのものより、股関節と支える筋力に出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

中村先生中村先生

主訴は立ち上がりや前かがみで出る腰からお尻の痛みでした。所見をとると股関節が曲がりにくく、お尻の筋力も落ちていました。痛む腰そのものより、股関節と支える筋力に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

立ち上がりやかがむ動作で痛いと、腰そのものの問題に思えます。それでも股関節に目を向けたのはなぜですか。

中村先生中村先生

立ち上がりも前かがみも、股関節とお尻が働いて体を起こし・折りたたみます。そこが使えないと、足りない分を腰で補う。だから動き始めの一瞬に腰とお尻へ負担が集まる、という像が所見と一致したんです。

高齢でも、無理のない範囲で変えられるのか

年齢が高い方では、どこまで何をするかの見極めが大事です。そこを確かめます。

教子先生教子先生

80代の方ですよね。急に力が入らない、安静にしても引かない痛み、転びやすさといった、医療機関での評価が必要なサインは外せていましたか。

中村先生中村先生

そこは慎重に確認しました。急な筋力の低下や安静時の強い痛みはなく、痛みは動作に伴って変わりました。こうしたサインや、ふらつき・転びやすさがあれば、まず医療機関の受診をご案内する前提で進めています。今回はそれらがないことを確かめました。

瀬谷崎瀬谷崎

年齢が高いと『歳のせい』と諦めてしまいがちですが、股関節の動きと支える筋力は、無理のない範囲なら高齢でも変えられる部分があります。強い負荷でなく、安全な範囲で動きと支えを取り戻す。危険なものを外したうえでなら、その方向は妥当だと思います。

年齢に合わせた、無理のない介入と経過

強い負荷をかけない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

高齢の方なので、やり方も加減したんですね。

中村先生中村先生

はい。股関節の動きを少しずつ広げ、お尻の筋力を無理のない範囲で使えるようにしました。立ち上がりや前かがみの動き方も確認しています。かがむときの腰やお尻の痛みが落ち着いてきました。今は負担にならない範囲で柔軟性と筋力づくりを続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

年齢に合わせて加減しながら、動きと支えを取り戻しているのが要点ですね。無理をせず、続けられる範囲で変えていく。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただ個人差や体調の波があるので、無理のない範囲で続けたいところです。

考察:股関節と支える筋力からとらえる高齢の腰・お尻の痛み

所見という事実(股関節の屈曲制限・臀部の筋力低下・屈曲動作での痛み)と、経過という結果(かがむときの腰やお尻の痛みが落ち着いたこと)。この両方が、「腰そのものでなく股関節と支える筋力に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。立ち上がりや前かがみで痛むのは、股関節とお尻が使えない分を腰で補うため。高齢でも、危険なものを外したうえで、無理のない範囲なら変えられる部分がある。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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