デスクワークの首こりが痛みに変わった、忙しさで強まる首の痛みをどう考えるか。症例をスタッフで検討

こりが痛みに変わった首、なぜ「肩甲骨と頭の位置」に着目したのか

1つの症例を、担当した稲毛田和磨先生(とんとん整骨院 東武練馬店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。数年来のこりが、忙しい時期に痛みへと変わったデスクワークの首の痛み。首そのものでなく、肩甲骨の動きと頭の位置に出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、デスクワーク中心で、数年前から首肩のこりを自覚していた30代の女性。忙しい時期が続くうちにこりが痛みに変わり、仕事の集中力が落ち、夜も3時間おきに目が覚めて熟睡しづらかった方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:こりが痛みに変わった首、肩甲骨と頭の位置に着目
今回検討する症例(担当:稲毛田先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=デスクワークで続く首の痛み(30代・女性)。背景=数年前から首肩のこりを自覚し、忙しい時期が続くうちにこりが痛みへ変化。仕事の集中力が落ち、夜は3時間おきに目が覚めて熟睡しづらい状態だった。所見=後屈で首の詰まり感、左回旋で首の痛み、右側屈・左回旋の可動域制限、僧帽筋中下部の弱化、頸長筋(けいちょうきん)の弱化、頭部前方位(頭が前に出た姿勢)と肩甲骨の外転位(外に開いた状態)。とらえ方=肩甲骨まわりの硬さと筋力低下、頭が前に出た姿勢により、首の後ろの筋肉に負担が偏っていたと考えた。対応=後頸部を中心とした鍼、肩甲骨を内に寄せる動きづくりの手技、首や背中の筋力を高める運動、デスクワーク時に同じ姿勢を続けない工夫。経過=仕事の途中や終わりの痛みがまず軽くなり、集中しやすくなって、夜中に目が覚めることも減ってきた。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

首のこりが痛みに変わるとき、原因は肩甲骨と頭の位置か

主訴は首の痛み。けれど稲毛田先生は、首そのものより、肩甲骨の動きと頭の位置に出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

稲毛田先生稲毛田先生

主訴は首の痛みでした。もともと数年前から首肩のこりがあって、忙しい時期が続くうちに、こりが痛みに変わってきた方です。所見をとると、肩甲骨まわりが硬くて力も入りにくく、頭が前に出た姿勢で、首の後ろの筋肉がずっと張っていました。首そのものより、肩甲骨の動きと頭の位置に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

こりと痛みは地続きなんですね。こりが痛みに変わる、というのはどういう状態なんでしょう。

稲毛田先生稲毛田先生

こりは、筋肉が張ってめぐりが落ちた状態です。同じ負担が続いて回復が追いつかなくなると、張りっぱなしの筋肉が敏感になり、我慢できていたこりが痛みとして出やすくなる、と言われています。頭が前に出て肩甲骨が開いたままだと、首の後ろは一日じゅう引っぱられ続けます。その積み重ねが、こりから痛みへの変化と一致したんです。

なぜ忙しい時期に首の痛みと眠りの浅さが重なるのか

この方は、忙しい時期に痛みが強まり、夜も3時間おきに目が覚めていました。そこを確かめます。

教子先生教子先生

忙しい時期に強まって、夜も3時間おきに目が覚めていた、とのことですよね。念のため、腕や手のしびれ・力の入りにくさ、安静にしても強まる痛み、急に悪化する頭痛といった、急いで受診すべきサインは外せていましたか。

稲毛田先生稲毛田先生

そこは確認しました。腕への神経症状や安静時に強まる痛み、急な頭痛の悪化はなく、痛みは仕事の忙しさや姿勢に伴って変わりました。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめて進めました。眠りの浅さも、首肩の張りと忙しさが重なって出ている印象でした。

瀬谷崎瀬谷崎

忙しい時期は、同じ姿勢が長く続くうえに、気の張りで肩にも力が入りますよね。首肩が休まらないと、痛みも眠りの浅さも一緒に強まりやすい。どちらも別々の不調というより、張りつめが抜けない時間が長いことのあらわれと見ると筋が通ります。危ないものを外したうえで、姿勢と肩甲骨の負担に絞る。順序が妥当だと思います。

繰り返さないための介入と経過(鍼と運動)

首を直接ほぐすだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

首を直接ほぐすだけでなく、肩甲骨や姿勢のほうから整えていったんですね。

稲毛田先生稲毛田先生

はい。張っていた首の後ろに鍼でアプローチしつつ、肩甲骨を内に寄せて動かせるようにして、頭が前に出る姿勢の負担を減らしました。デスクワークで同じ姿勢が続かないよう、時間を区切って動く工夫も一緒に。仕事の途中や終わりの痛みがまず軽くなって、集中しやすくなり、夜中に目が覚めることも減ってきました。

瀬谷崎瀬谷崎

痛みの出どころを、首そのものでなく、肩甲骨の動きと頭の位置という姿勢の負担に戻して整えにいっているのが要点ですね。首肩が休まる時間が増えれば、同じ忙しさでも痛みや眠りの浅さに引きずられにくくなる。落ち着いた経過もその方向を支持しています。ただ忙しさには波があるので、続ける前提で見ていきたいところです。

考察:肩甲骨と頭の位置からとらえる、こりが痛みに変わった首

所見という事実(肩甲骨まわりの硬さと筋力低下・頭部前方位・首の後ろの張り)と、経過という結果(仕事中や仕事終わりの痛みが軽くなり、集中力と眠りの質も戻ってきたこと)。この両方が、「首そのものでなく、肩甲骨の動きと頭の位置に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。こりが痛みに変わるのは、同じ姿勢の負担が続いて回復が追いつかなくなるため。その場をほぐすだけで終わらせず、肩甲骨と姿勢を整える。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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