骨折の固定明けにリハビリの機会がなかった患者。評価と進め方
セラピスト向け
固定明けの足を、仕事に戻すまで
骨折の固定が外れたのに、リハビリの案内がないまま「終わり」になってしまった。むくみと可動域制限を抱えて来院した患者さんに、何から始めるか。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで実際に出た相談をもとに、固定明けの評価と進め方をたどります。
相談のもとになった患者さんは、約1か月前に第五中足骨を骨折し、固定のみで経過してリハビリの機会がないまま固定終了となった方です。
固定は簡易なもので、通院指導も特になく、これくらいなら放っておいても繋がるから、という説明で終わっていました。受診先は整形外科の専門ではなく、内科をメインにして骨も少し見る、というタイプの医療機関だったといいます。
- 来院時は足関節の底屈が10〜20度、背屈はほぼ出ない状態
- むくみと血腫が残り、歩行も困難
- 仕事は配送業。1日1万歩ほど歩く現場への復帰が目標
すでに院での施術で、むくみは押した圧痕がほとんど残らないところまで軽減し、下腿三頭筋の収縮感も出始めています。ほぼ毎日通ってもらい、歩けるところまでは戻ってきた。ここから仕事復帰まで、どう組み立てるかという相談でした。
医療機関でのリハビリにつながらなかった患者さんは、地域の整骨院に一定数やって来ます。診断と骨癒合の判断は医師のものという前提を守ったうえで、運動器の専門職として何ができるかを考えます。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎前提|骨癒合の確認は医師の判断で
進め方の前に前提です。骨癒合の判断は画像と医師の診察によるもので、施術側で推測しないこと。放っておいて良くなる人も多い一方で、そうでないこともある。だからこそ、この確認だけは省かずに置いておきたいところです。
今回は受診先が専門でなかったこともあり、固定終了時の説明があいまいなら、動かしてよい段階かを患者さん経由で処方元に確認してもらうか、再受診を勧めてから始めます。ここが確認できて初めて、積極的に動かす方針が取れます。
評価|制限している筋を特定する
可動域制限をひとまとめに「固まっている」と見ずに、どの筋が制限しているかを特定します。とんとんの確認検査の使い方そのままです。
- 制限している筋の候補を挙げるこのケースで底屈がいちばん出にくかったことを踏まえ、背屈にかかわる筋、具体的には長趾伸筋や前脛骨筋を候補にします。
- 確認検査で反応のある筋を探す候補の筋への確認検査で、反応のある筋を探します。
- 陽性の筋に介入する反応が出た筋へ介入する方針が挙がりました。
エコーでは骨棘や硬結といった所見は特に見られなかったので、制限の主因は組織の器質的な変化より、固定と不動による筋・軟部組織側に寄せて考えやすい状況でした。制限の内訳を分ける考え方は関節可動域制限は筋が硬いだけ?でも扱っています。
介入|可動域・浮腫・感覚入力を並行で
- 可動域訓練は徒手でしっかり動かす。骨癒合済みなら、痛みの範囲を確かめながら積極的に
- むくみには筋ポンプ作用を狙った電気刺激、オイルやジェルを使ったマッサージ、超音波(ちょうおんぱ)の温熱
- 長期固定で落ちた足底の感覚入力には、いぼいぼのついたバランスクッションなどを使った荷重練習
- 鍼が使える環境なら、皮膚表面の癒着を少しずつ剥がすアプローチも選択肢
- オイルは在宅でも同じものを使ってもらい、自宅でのセルフケアにつなげる
- 日常の歩行は制限しすぎず、通常どおり歩いてもらう方向で
実際の検討で印象的だったのは、最大底屈まで持っていくと患者さんは少し嫌な顔をするものの、そのまま動かし続けたら案外可動域が出るようになった、というやり取りでした。痛みが強いわけではないなら、大丈夫だと言い切って安心してもらい、しっかり動かす。
共通する考え方は、代償動作が固定化する前に動かすことです。かばい歩きが習慣になると、足関節が改善しても歩き方が戻らず、膝や腰など別の部位の負担につながります。足首を単独で見ない視点は足関節捻挫は足首だけで見ないと同じです。
目標|仕事復帰から逆算する
この患者さんのゴールは「1日1万歩の配送業務」という具体的な数字で置けます。院内の可動域だけを指標にせず、連続歩行の距離と時間、業務相当の負荷への耐性を段階的に上げていく計画に落とします。
ゴールが生活の数字で共有できていると、経過の説明も通院の理由も明確になります。時間軸としては、1〜2週間で一気に改善というより、焦らずこまめに、長期的に見て積み上げていく見通しをあらかじめ共有しておくのがなじみやすいはずです。
「すでに骨癒合していれば、運動を怖がらず徒手でどんどん動かしてよい」という回答が印象的な検討でした。骨折後という言葉の重さで介入が及び腰になるより、癒合確認を前提に置いたうえで、停滞のデメリットと比べて判断する。この軸が共有されました。
固定明けは、動かせる条件を確かめてから積極的に
リハビリの機会がないまま固定明けを迎えた患者さんへの進め方は、骨癒合の確認を前提に、制限している筋を特定し、可動域・浮腫・感覚入力へ並行して介入し、生活の数字で目標を置く、という流れです。慎重さは癒合確認までに使い、確認できたら停滞させない。この切り替えが要点だと思います。
瀬谷崎




