効く筋を1つに絞り込む。再現痛を指標にした確認のやり方
セラピスト向け
緩める前に、効く筋を見つける
動診で原因の関節運動まで当たりがついたら、次は「どの筋に介入すれば結果が出るか」です。再現痛を指標に、関節運動を絞ってから筋を1つに絞り込む。その手順と、押圧のコツ、偽陽性の避け方、結果の受け取り方、通用しにくい場面までを整理します。とんとんでは、この筋の絞り込みをANOテストと呼んでいます。
ヒアリングから動診までで原因の関節運動に当たりがついたあと、介入する筋を1つに絞り込む。その確認の手順を整理します。とんとんではこの筋の絞り込みをANOテストと呼んでいますが、名前は独自でも、やっていることは標準的な臨床推論の範囲です。
やり方はシンプルですが、シンプルな検査ほど、偽陽性や解釈の仕方で差が出ます。手順と一緒に、外しやすいポイントまで具体的に整理します。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎確認検査|原因の関節運動を絞り込む
確認検査は、動診で想定した原因となる関節運動を徒手的に取り除いた状態で、再度疼痛誘発動作をして、症状が減弱・消失するかを見る検査です。
たとえば結帯で肩関節の内旋が疑わしいなら、上腕を把持して過剰内旋を抑えた状態で結帯してもらう。症状が減弱すれば、原因は過剰内旋と判断できます。膝なら、立ち上がりで膝蓋骨の過剰な上方変位が疑わしいなら、膝蓋骨底を把持して上方変位を抑え、再度立ち上がってもらいます。
ポイントは、一度に1つの関節運動だけを操作すること。複数を同時に変えると、何が効いたのか分からなくなります。検査は、交絡を1つずつ切っていく作業だと考えると分かりやすいです。狙った関節運動だけに介入する(上腕骨頭の前方滑りを抑えるつもりで肩全体を止めない)のも同じ理由です。
原因の筋を絞り込む(とんとんでのANOテスト)
ANOテストは、原因と想定する筋を押圧した状態で再度疼痛誘発動作をして、症状が減弱・消失するかを見る検査です。減弱すれば、その筋が陽性です。
同じ筋でも、特に影響の強い線維によく反応します。ハムストリングスは近位で反応が出て遠位は薄い、棘下筋は上部線維が反応して下部は反応しない、ということが起こる。だから「ハムをやる」ではなく「ハムのここをやる」まで決まります。
肩の過剰内旋を起こしうる筋なら、広背筋・大円筋・大胸筋。膝蓋骨の過剰上方変位なら、大腿直筋・外側広筋・内側広筋。中間広筋も膝蓋骨を引き上げますが、直接触診できないのでここでは省きます。
- 動診と確認検査で、原因となる関節運動の当たりをつける
- その関節運動を起こしうる筋を複数挙げる
- 各筋を押圧した状態で、疼痛誘発動作を再現する
- 症状が減弱・消失した筋を陽性とし、同じ筋でも反応の強い線維の部位まで確認する
- 順序を入れ替えても同じ筋が出るか、再現性を確かめる
押圧のコツ|効かせる面は狭く、抑える面は広く
意図しない筋まで押圧しないことが要点です。上腕二頭筋にANOテストをするつもりで母指で押すと、反対の四指側が三頭筋に当たり、三頭筋も同時にテストしてしまいます。
ポイントは、押圧を加える面は狭く、抑える面は広く。片手なら反対側の四指の面を広く取り、両手でも同様にします。
押圧が広いと、隣接筋まで巻き込んで偽の結果が出ます。いま「どの筋を見ているのか」を、毎回はっきりさせておきたいところです。
偽陽性をどう避けるか
ANOテストでいちばん気をつけたいのは偽陽性です。押圧や動作の反復そのものに除痛効果があると、狙った筋でなくても痛みが減ります。運動誘発性鎮痛(EIH)のように、動かすだけで痛みが下がる現象も知られています。期待効果や、検査の順序の影響も混じります。
避け方は3つです。1つの筋で白黒つけず、複数筋を比べて相対的な差(程度)を見る。順序を入れ替えて再現するかを見る。同じ施術者で再現性を確かめる。検査をどこまで信じるかという視点は徒手検査の感度・特異度を読む前にも参考になります。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎結果は「確率の更新」として受け取る
陽性か陰性かで白黒つけるより、その筋が要因である確からしさを上げ下げする材料として受け取ると、判断がぶれにくくなります。陽性なら確からしさが上がり、陰性なら下がる。
検査前にどれくらい疑っていたか(検査前確率)も効きます。動診と確認検査で強く疑っている筋なら、ANOテスト陽性の意味は重くなる。逆に、ほとんど疑っていない筋がたまたま陽性に見えたときは、偽陽性を先に疑う。この受け取り方はベイズ更新で考える徒手検査や尤度の入口で整理しています。
複数の筋が陽性なら、程度を%で配分する
1筋だけ陽性なら判断は簡単です。問題は複数が陽性のとき。陽性かどうかだけでなく、どの程度減るかも評価します。
広背筋で60%、大円筋で40%軽減するなら、両方が影響していると考えて両方に介入します。症状の6割は広背筋、4割は大円筋、という捉え方です。実際はここまできれいに出ませんが、程度で配分する発想を持っておくと整理しやすいはずです。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎通用しにくい場面もある
ANOテストは、機械的な要因で痛みが再現されることを前提にしています。痛みが中枢神経側で増幅されている状態では、押圧の増減が読みにくくなります。
中枢性感作や神経障害性疼痛が疑わしいときは、そもそも再現痛が当てになる状態かを先に見極める。機械的に増減を解釈しすぎると、見立てを誤ります。
確認検査とANOテストで取れる割合は、見込める改善幅の目安になります。7割取れると分かれば「7割は改善が見込めますが、3割は残るかもしれません」と先に伝えられる。ただし、改善した理由を一つに決めつけないことも大事です。時間経過や安心感など、いろいろが重なって良くなることもあります。
「効く1筋」まで絞れば、やらない介入が減る
確認検査で関節運動を、ANOテストで筋を絞り込む。効く筋だけを残して、あとは触らない判断ができます。患者の負担も施術時間も減り、結果にも直結します。
シンプルな検査ですが、偽陽性を避け、確率として受け取り、通用しない場面を分かったうえで使う。そこまでやって初めて、精度のある絞り込みになります。
瀬谷崎













