オスグッド病で通う中学生に出た、夜だけの股関節痛。動診で再現できない痛みを整形外科へ送る判断
セラピスト向け
動診で出ない夜間痛と、成長期の骨端症の除外
オスグッド病の施術で通っている中学生に、途中から「夜だけ股関節のあたりが痛い」という別の訴えが出てきました。動きの検査では何も再現できず、朝にはケロッとしています。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスに実際に挙がった相談をもとに、力学的に説明のつかない夜間痛の扱い方を考えます。
相談されたのは、オスグッド病で通院中の中学生男子です。来院したのは春先で、膝のオスグッド病自体は落ち着いてきていました。ところが通院を続けて2か月ほどたった頃、施術中の会話から、今年に入ったあたりから夜になると股関節のあたり、鼠径部(そけいぶ)まわりが痛むという話が出てきました。オスグッド病で通う途中から出はじめた、別の訴えです。
出るタイミングはまちまちで、多い週は3回ほど。夜中に目が覚めてしまう晩もあれば、2〜3週間まったく痛まない期間もあります。筋肉痛のような質の痛みではないといいます。
強いときは眠れないほどで、直近では夜10時頃から深夜1時過ぎまで眠れなかったといいます。動かしても、じっとしていてもうずく。そのときは母親も夜中に目を覚まし、さすってほぐしてやると少し楽になったそうです。ところが朝起きると痛みは消えていて、日中の練習中に痛むこともありません。
相談した担当者は、当初この痛みをオーバーユースの一種として扱っていました。強く痛んだ前日は練習がハードだったという話もあり、電気やマッサージ、ストレッチで一旦は落ち着かせていたといいます。ただ、この扱いのままで見逃している病態があるのなら早めに外しておきたい、というのが相談の動機でした。中学生年代の股関節痛はそれほど診た経験がなく、まず除外すべきものから除外したいという迷いがあったからです。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎訴えの特徴を並べると、次のようになります。
- 痛むのは夜だけ。朝には消えていて、日中のプレー中は痛まない
- 出るタイミングはまちまち。練習後が多いが、2〜3週間まったく出ない期間もある
- 強いときは眠れないほどで、動かしてもじっとしていても痛む
- 動診・可動域の評価では、開排や屈曲を含めて疼痛の再現がない
動きで再現できない夜間痛は、運動器の型から外れている
運動器由来の痛みであれば、原因組織にストレスをかける動きや肢位で症状が再現されるのが原則です。本例は動診でも可動域評価でも疼痛の誘発が一切なく、開排も屈曲も含めて可動域の制限はありませんでした。
加えて、痛むのは夜間だけで朝には消えている。疲労がたまった日でも、プレー中には痛まない。左右差もはっきりせず、外傷のきっかけもありません。関節唇の損傷やFAI(エフエーアイ・大腿骨寛骨臼インピンジメント)のような力学的な見立てを置こうにも、整合が取れない組み合わせです。
動作で再現できない・夜間のみ・朝に消失。この3つがそろったら、オーバーユースという説明だけで手元に抱え続けてよい状態ではないと考えます。
先に除外したいのは、ペルテス病と大腿骨頭すべり症
成長期の股関節痛で先に外しておきたいのが、大腿骨頭の重篤な骨端症です。中学生年代の股関節痛はそもそも数が多くないぶん、まず外すべきものから外すという順序になります。検討で挙がったのは、ペルテス病と大腿骨頭すべり症(SCFE・エスシーエフイー)の2つでした。
教子先生
まなぶ先生
瀬谷崎本例で継続して確認していくことにした項目は、次のとおりです。
- 跛行の有無。すり足や引きずりなど、歩き方の変化が出ていないか
- 発熱の有無。股関節炎など炎症性の疾患では発熱を伴うことがある
- 症状の左右差と、痛む場所が変わっていないか
- プレー中の痛みが新たに出てきていないか
なお、一般的な股関節炎のような炎症性の病態であれば、発熱を伴ったり、安静で軽快したり、何か月も断続的に続くとは考えにくいという指摘もありました。本例は外傷のきっかけもなく、左右差もはっきりしません。だからこそ、残る候補を画像で確かめる意味が出てきます。
跛行・発熱・プレー中の増悪のどれかが新しく出てきた場合は、経過観察を打ち切って受診を急ぐ段階だと考えます。
「成長痛」というラベルは、除外が済んだ後に残す
検討では「成長痛」という概念も話題になりました。小児の成長痛には、6か月以上続く原因のはっきりしない痛み、といった定義もあると紹介され、骨端症のような器質的な異常を伴わない、心理的な要因の関与を示唆する見解もあるといいます。母親がさすると痛みがおさまる子が多く、下に小さな兄弟がいたり、所属するチームや生活環境が変わったタイミングで出たりする、という語られ方をすることもあるようです。
実際、本例でも母親がほぐすと楽になったというエピソードがあります。ただし成長痛は、器質的な疾患を除外した後に残る説明であって、最初に貼るラベルではありません。
オーバーユースについても同じです。練習後に出やすいという情報だけで使いすぎと捉えてしまうと、画像でしか分からない病態を抱え込む可能性が残ります。担当者自身、当初はオーバーユースとして電気やストレッチで対応していただけに、その線だけで説明を閉じないことが分かれ目になりました。
説明のつかない夜間痛は、一度画像評価へ
本例はまだ病院を受診していませんでした。動きで再現できず、可動域制限もなく、夜間だけ眠れないほど痛む。この条件がそろった時点で、一度整形外科でレントゲンなどの画像評価を受けてもらう方針になりました。
オスグッド病の経過で通院が続き、信頼関係ができていたからこそ、別の訴えが会話の中で挙がり、拾うことができました。画像で異常がなければ、そのときはじめて成長痛の線を含めて、ヒアリングの項目を組み替えていけます。
瀬谷崎





