後頭下筋群・前鋸筋上部のMMT(徒手筋力検査)はどう取る?頸部屈曲症候群と肩甲骨下制症候群の評価手順
施術・検査ガイド
教科書に載りにくい筋力検査を、ベッドサイドでどう補うか
後頭下筋群や半棘筋、前鋸筋の上部線維には、決まった筋力検査の型があまりありません。型がない筋の機能をベッドの上でどう確かめるか、そして延長した筋に行う短縮化エクササイズと通常のトレーニングをどう使い分けるかを取り上げます。
このコラムでは、当院のオンラインカンファレンスで検討した質疑をもとに、頸部屈曲症候群で弱くなりやすい後頭下筋群・半棘筋と、肩甲骨下制症候群で関わる前鋸筋上部線維の確かめ方を取り上げています。単独のMMT(徒手筋力検査)が取りにくい筋を、代わりにどんな見方で評価するかが主題です。
結論:後頭下筋群・半棘筋はうつ伏せでの頭部の動きから、前鋸筋上部は肩甲骨のアライメント(配列)から間接的に判断します。筋の延長が顕著な場合は、通常のトレーニングより短縮化エクササイズから対応することが経験上多くなります。
特異的な検査がない筋をどう見るか
頸部屈曲症候群とは、首を前に倒す動きの癖が繰り返されることで症状が出るタイプの運動の問題です。このタイプでは、後頭下筋群(後頭部と首の境目にある深い小さな筋のグループ)や半棘筋(首の後ろで頭を支える筋)が、弱くなったり緩んだりする側の筋に入ってきます。
菱形筋や僧帽筋であれば、MMT(徒手筋力検査)や長さの検査の方法がある程度決まっています。ところが後頭下筋群と半棘筋に関しては、特異的な検査方法があまりありません。検査の型がないからといって評価をあきらめるのではなく、機能があるかどうかを別の動きで確かめることになります。
うつ伏せで頭部の動きを見るチェック
検討のなかで回答役が実施していると挙げたのは、うつ伏せで頭部の動きを見るチェックです。手順は次のとおりです。
- うつ伏せで、おでこに手を当てて寝るベッドの上にうつ伏せになり、おでこに手を当てた姿勢から始めます。
- 手の位置を替えながら頭を上げてもらう手を当てる位置を、おでこ、目、鼻、口、あごの順に取らせて、頭を上げてもらいます。
- あごまでスムーズにつくかを見るあごまで問題なくスーッとついてくれば、その機能はあると判断します。
頸部屈曲症候群の方では、途中で止まってしまう、あるいは頭が手から離れてしまうことがよくあります。頸椎での伸展、つまり首を反らす動きが強調されてしまうと手から離れるので、そうした様子が見られた場合は、弱っているのかなという判断につなげます。
このチェックは、後頭下筋群と半棘筋のどちらを見ているのか正直わからないところもある、というのが検討での率直な回答でした。個別の筋を特定する検査ではなく、頭を支える機能があるかどうかを大づかみに見るチェックとして扱います。
前鋸筋の上部線維は単独では取りにくい
もうひとつの質問は、肩甲骨下制症候群、つまり肩甲骨が下がる方向の癖で症状が出るタイプに関わる、前鋸筋(肋骨から肩甲骨の内側につき、肩甲骨を支える筋)の上部線維でした。弱化も延長もしやすい筋ですが、上部だけを分けて確かめる方法が見当たらない、という相談です。
前鋸筋の一般的な検査としては、肩を90度屈曲し、肘を曲げた位置で抵抗を加える方法があります。押されて抵抗に耐えられなければ、筋力低下している可能性があると読みます。ただ、この方法でも上部線維と下部線維を分けて見ることはできず、検討でも、上部だけ単独で見るのは厳しいという結論でした。
そこで代わりになるのが、肩甲骨のアライメント観察です。
- 肩甲骨の上方回旋(上向きに回る位置)・下方回旋(下向きに回る位置)を確認する
- 下方回旋が強い場合は、前鋸筋や僧帽筋上部が弱くなっていると判断する
- その判断をもとに、該当する筋のトレーニングや短縮化エクササイズへ進む
MMTの数値そのものというより、他の要素からある程度病態を推測してアプローチする形になります。
短縮化エクササイズと通常のトレーニングは別物
検討ではもうひとつ、短縮化エクササイズと普通のトレーニングの違いも話題になりました。ここでいう延長とは、筋が伸ばされた位置のまま働きにくくなっている状態のことです。
| 通常のトレーニング | 上げ下げを繰り返したり、押したり引いたりする運動。MMTで測る筋力の改善を狙います。 |
|---|---|
| 短縮化エクササイズ | その筋を短縮させた位置で筋収縮を狙う運動。大臀筋なら、股関節を外転・外旋・最大伸展した位置で収縮させます。 |
後頭下筋群でいえば、うつ伏せで頭を上げ下げする運動はトレーニングですが、上げた状態でより収縮させるのは短縮化につながります。短縮した位置で力を入れ続けるので、等尺性運動(関節を動かさずに力を入れる運動)に近いイメージです。
ただしニュアンスが違う点もあります。延長している筋では、自分の力だけではその位置まで持っていけない方がいるのです。その場合は徒手で補助をつけるか、枕などの物で高さを作って、狙った位置での収縮を助けます。
どちらから始めるかは評価で決める
延長と筋力低下のどちらが主かは、エクササイズの指導と同時に確かめられます。目的の位置まで持ち上げてキープしてもらい、支えを外してついてこられなければ延長、キープはできても押されて負けるなら筋力低下、という見方です。
延長はしていないが筋力低下があるならトレーニング、延長が顕著ならまず短縮化エクササイズで対応します。検討でも、延長が見られる場合はそちらから対応することの方が経験上多い、という話でした。程度にもよるので、評価を取ってから決めることになります。
すべてを細かく取れないときの実務判断
本当に細かくやろうと思えば、1個1個MMTを取り、長さの検査をすることもできます。ただ実際には施術時間の制約があり、そこまで細かく見られないことも少なくありません。
着地が運動療法になる場合は、先にエクササイズを実施してみて、フォームを見ながらほぼ同時に評価するという流れも選択肢になります。やってみて問題がなさそうなら、その種目をやめる判断もできます。検査とエクササイズを切り離さず、同じ場面で確かめていく形です。





