距骨の骨棘疑いでもサッカーを続けたい。捻挫を繰り返した40代の足関節前面痛への保存的アプローチ
セラピスト向け
繰り返した捻挫のツケと距骨前面の痛み。保存療法でどこまで支えられるか
サッカーを続ける40代男性の、しゃがむと痛む足関節前面痛。距骨の前面に骨棘を思わせる隆起があり、捻挫を何度も繰り返してきた既往があります。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスに実際に挙がった相談をもとに、骨棘という構造を抱えたまま競技を続けるための保存的な選択肢を考えます。
相談されたのは40代男性の症例です。主訴は足関節前面の痛みで、距骨の前面に骨棘を思わせる硬い隆起を触れ、圧痛の位置もそこに一致します。しゃがみ込みなど荷重した状態での背屈(つま先を上げる方向)で痛みが出る一方、非荷重で動かしてもほとんど誘発されず、抵抗をかけた運動でもはっきりした痛みは出ませんでした。
経過は2、3年と長く、サッカーを続けており、プレー後は足を引きずるほど痛みが強まります。4月から大会が始まるため、それまでに何とかしたいという希望です。過去に足関節の捻挫を何度も繰り返し、そのたびに固定はしてこなかったようでした。
- 圧痛は距骨前面の骨棘様の隆起部に一致する
- しゃがみ込みなど荷重下の背屈で誘発され、非荷重の運動では出にくい
- ヒラメ筋・腓腹筋のMMT(徒手筋力検査)は左右差なく良好
- 左足を軸にした片脚立位でぐらつきが大きく、足関節の動揺が目立つ
- 担当者が中殿筋のトレーニングを先行して進め、動揺は減ってきている
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎捻挫を繰り返し、固定せずに過ごしてきた既往の重み
捻挫のたびに固定をせずに経過した足関節では、靱帯のゆるみと不安定性が積み重なります。本例の片脚立位のぐらつきは、その表れと読めます。検討の場では、サッカーを長く続ける人には足関節のOA(変形性関節症)が珍しくない印象、若い世代なら有痛性三角骨がよく挙がるという臨床印象も共有されました。捻挫を重ねた足首が年月をかけて形を変えていく見立てと矛盾しません。
幸い、ヒラメ筋・腓腹筋の筋力に左右差はなく、先行して進めていた中殿筋のトレーニングで動揺は減りはじめていました。保存的に積み上げる土台は残っています。
骨棘という構造は変えられない前提で、①足部を支える筋と固有受容器のトレーニング、②距骨を後方に安定させるテーピング、③徒手での距骨の誘導。この三つを組み合わせて競技の継続を支える方針になりました。
基本に置くのは、後脛骨筋・足部アーチ・固有受容器のトレーニング
検討で最初に挙がったのは、特別な手技ではなく一般的なトレーニングでした。後脛骨筋を鍛えて足部のアーチを保持できるようにし、効果の兆しが出ている中殿筋の強化を続ける。そのうえで、バランスボードなどを使った固有受容器(関節の位置を感じ取るセンサー)系のトレーニングを重ねます。
捻挫を繰り返した足首は関節の位置感覚も鈍りやすく、ぐらつきを筋力と感覚の両面から立て直す地道な柱です。負荷の段階の付け方は足関節不安定性の段階的トレーニングの記事で扱っています。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎距骨を後方に安定させるテーピング
具体的に挙がったのは、内果と外果を後ろからぐるっと締めるようにホワイトテープの環行を数本入れ、さらにヒールロックを内側・外側それぞれ2周ほど巻いて、脛骨と腓骨のあいだで距骨を安定させる方法です。背屈がある程度制限されるかわりに安定性が増し、その状態でバランスボードや片脚立ちをするとかなり立ちやすくなる、という感触が共有されました。痛みが出る荷重下の深い背屈に入りにくくなる点も、本例では利点です。
別の巻き方として、外果の後方からキネシオテープを引っ掛けて腓骨を内旋方向へ誘導する方法も挙がりました。強く引くのは外果側の一箇所だけで、内果側は張力をかけずに置くように貼る。腓骨の向きを変えるだけでも安定感が出て踏ん張りやすく、背屈の制限が少ないうえ、斜めに3分の2ずつ重ねて3、4本貼る要領なら患者さん自身でも再現しやすい方法です。
- 試合用は施術者が巻く自分で巻くと締めすぎて血流を妨げ、かえって痛みを招きやすい巻き方です。試合用の固定は施術者が担当します。
- 巻くタイミングを決めておく前日の夜に入浴を済ませた状態で来てもらうか、当日の朝に来てもらって巻きます。
- 巻いた状態で動きを確認するバランスボードや片脚立ちで安定するか、背屈の制限がプレーの支障にならないかをその場で確かめます。
MWMs(運動併用モビライゼーション)という選択肢
もうひとつ挙がったのが、距骨を後方に押し込んだ状態でしゃがみ込みや背屈をしてもらい、痛みが軽くなるかを先に確かめる方法です。母指で距骨を後方へ誘導したまま楽にしゃがめるなら、骨棘が疑われても距骨は後方へ滑り込めていると読めます。その場合、マリガンのMWMs(運動併用モビライゼーション)で距骨を後方に誘導しながら背屈を繰り返す施術が選択肢に入ります。
セラバンドやタオルを足関節の前面に引っ掛け、手前に引いて距骨を押さえながらしゃがみ込む形にすれば、自主トレーニングにも応用できます。変形性膝関節症へのMWMsの記事でも触れたとおり、MWMsは運動療法の代わりではなく、痛みの少ない条件を作って運動に入るための補助という位置づけです。
手術の適応判断は医師の領分。まずは保存で積み上げる
関節鏡での骨棘切除といった手術については、検討の場では、この程度の症状で一般的に選ばれるものではなく、競技から離れる期間のデメリットのほうが上回るのではないか、という見方でした。ただしこれは治療家側の検討にとどまり、骨棘の有無の確定は画像による評価、手術適応の最終判断は医師の領分です。長引いている症例なので、整形外科の受診も並行して勧めたいところです。
痛みが段階的に強まる、関節が引っかかって動かせない場面が出る、腫れが引かないといった変化があれば、受診を優先します。その線引きを患者さんと共有したうえで、トレーニング、テーピング、徒手での誘導を積み上げていく方針になりました。捻挫後に残る痛みの評価の枠組みは足関節捻挫の評価の記事も参考になります。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎




