ストレッチで強まっていた右の肩甲骨の内側の痛みが施術を経て楽になった例(50代女性)
主訴
2024年5月、右の肩甲骨の内側の痛みでご来院されました。1週間前から強く感じるようになり、1ヶ月間ご自身で首のストレッチを続けていたところ、かえって症状が強まってしまった状態でした。
当院の評価
患者様への説明
動きの検査では、首を後ろへ反らす動きに可動域の制限があり、首を前へ曲げる動きと後ろへ反らす動きで痛みが出る状態でした。姿勢の評価では、肩甲骨が外側に開き、首が前へ出た姿勢がみられました。肩甲骨が外側に開くと、肩甲骨の内側の筋肉は引き伸ばされたまま支え続ける形になります。そこへ首を伸ばすストレッチが加わり、引き伸ばされていた組織への刺激が重なって症状が強まった可能性があると考えました。
日常動作・解剖学的動診
【日常動作】右の肩甲骨の内側に痛み。首のストレッチで増悪 【検査】頸部の伸展に可動域制限、屈曲・伸展で疼痛がみられる
身体機能評価
肩甲骨外転症候群/頸部伸展症候群
判断
肩甲骨が外側に開いた位置で、肩甲骨の内側の筋肉が引き伸ばされたまま働き続けていたことに加え、首を伸ばすストレッチの刺激が重なり、症状が強まっていたことが主な要因と考えられます。
施術の様子
患者様への説明
この方は、肩甲骨が外側に開いた位置になっていることで、肩甲骨の内側の筋肉に負担が集まっていると考えられました。伸ばすのではなく、肩甲骨を外側へ引っぱっている胸の前や首まわりの筋肉をゆるめて肩甲骨の位置を戻しやすくし、支える筋肉のトレーニングをあわせて行う方針で進めました。
専門的内容
【手技療法】小胸筋・前鋸筋・板状筋・胸鎖乳突筋へのアプローチ/【運動療法】僧帽筋のトレーニング
施術の経過
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初期
2回目には痛みが和らぎましたが、ソファーに座っていると痛みが出る状態でした。
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中期
3回目には痛みが減り、感じる頻度も下がっていきました。
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後期
5回目以降はトレーニングとストレッチの効果もみられ、2週に1回のペースへ移行しました。全8回の施術を行いました。
料金・通院目安
料金の目安
初回料金
施術 3,740円
2回目以降の料金
施術 7,480円
通院の目安
施術回数
約8回
施術期間
5回目以降は2週に1回のペースへ移行
ここでは、この症例の記録とは別に、「肩甲骨の内側に出る痛みや、ストレッチをしてもすっきりしない背中側の張り」という状態について、一般的な見方やご自宅でのヒント、医療機関へ相談する目安を順にたどります。
どうしてストレッチで痛みが強まることがあるの?
肩甲骨が外側に開いた姿勢では、肩甲骨の内側の筋肉が引き伸ばされたまま支え続ける形になると言われています。引き伸ばされて張っている筋肉に、さらに伸ばすストレッチを重ねると、刺激が上乗せされて症状が強まる場合があると考えられています。張り=縮んでいる、とは限らず、伸ばされて悲鳴を上げていることもある。ここが、セルフケアの選び方の分かれ目になります。
肩甲骨の内側の痛みでは、痛む場所を伸ばす・もむ前に、肩甲骨がどの位置にあるか・どちら向きの負担で張っているのかを確かめることが役立つと言われています。
稲毛田 和磨ストレッチをがんばっているのに強まってしまうと、「何がいけないの?」と不安になりますよね。がんばる方向が違っていただけ、ということは珍しくありません。伸ばすべき場所と支えるべき場所を、評価の結果から一緒に確かめていきましょう。
こんな方に気になりやすい(セルフチェック)
次のような項目に心当たりが多い方は、負担が集まりやすい傾向があると言われています。当てはまること自体が異常を意味するわけではありません。
- 肩甲骨の内側や背中側に張り・痛みを感じる
- ストレッチやもみほぐしをしても、すっきりしない・強まる
- デスクワークなど、腕を前に出す姿勢が長い
- 姿勢が前かがみぎみだと感じる
ご自宅でできる工夫
痛みが和らいできたら、一般的なセルフケアとして次のような工夫が知られています。
- 痛みが強まるストレッチは、いったんお休みする
- 胸の前をゆっくり伸ばして、肩が前に入った姿勢をゆるめる
- 痛みが落ち着いているときに、肩甲骨を寄せる運動を取り入れる(反動をつけず、痛みのない範囲で)
痛みやしびれが強いとき、力が入りにくいときは無理に行わず中止し、医療機関にご相談ください。
こんなときは医療機関へ
多くは時間とともに和らいでいくと言われていますが、次のような場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診してください。
- 手や腕のしびれ・力の入りにくさを伴う
- 深呼吸やせきで胸や背中に強い痛みが走る
- 安静にしていても痛みが強まっていく
- 発熱や、転倒・強くぶつけたあとの痛み
よくある質問
ストレッチは体に良いものではないのですか?
ストレッチ自体は広く行われているセルフケアですが、どこを伸ばすかが合っているかどうかで結果が変わると言われています。この症例の方は、引き伸ばされて張っていた場所をさらに伸ばす形になっていたため、方向を切り替えたところ症状が落ち着いていきました。
肩甲骨の内側の痛みは、肩こりとは違うのですか?
重なる部分もありますが、この症例のように肩甲骨の位置の崩れで内側の筋肉が引き伸ばされているケースでは、こっている場所へのアプローチだけではすっきりしないことがあると言われています。姿勢と肩甲骨の位置をあわせて確かめることをおすすめします。
自分でできることはありますか?
痛みが強まるセルフケアをいったんやめることも、大切な対処のひとつです。そのうえで、胸の前をゆるめる・肩甲骨を寄せる運動など、負担の向きに合った工夫をご提案します。この症例の方も、施術とあわせてセルフケアを切り替えて取り組みました。
稲毛田 和磨セルフケアは「何をするか」と同じくらい「どこに向けてするか」が大切だと考えています。がんばっても変わらない・強まるときは、負担の向きが合っていないサインかもしれません。一度、体の状態から確かめてみてください。
この症状について、担当者と複数のスタッフで臨床的に検討したカンファレンス記事もあります。評価の進め方や考え方の詳細はこちらをご覧ください。
施術担当者

経歴
症例レポートは、改善した例だけでなく、そうでなかった例も含めて結果を選ばず掲載しています。










良かれと思って続けたストレッチで症状が強まってしまう、というご相談は少なくありません。この方の肩甲骨の内側の痛みは、肩甲骨が外側に開いた位置で内側の筋肉が引き伸ばされ続けていたことが背景にあり、首を伸ばすストレッチはその引き伸ばしに刺激を重ねる方向になっていました。伸ばすのをいったんやめて、外側へ引っぱる筋肉をゆるめ、支える筋肉を鍛える方向に切り替えたことで、症状が落ち着いていった症例です。