治療院を開業すれば収入は増えるのか?売上と手残りの現実を考える
セラピスト向け
売上が伸びても、なぜか余裕がない理由
開業したら、今より自由に働けて、収入も増える。そう思いたくなる気持ちは、かなり分かります。でも、治療院の数字は「売上」だけ見ていると、けっこう簡単に見誤ります。
売上は大事です。ただ、本当に生活を支えるのは、経費・税金・借入返済まで引いたあとのお金です。
治療院で働いていると、一度くらいは「自分で開業したらどうなんだろう」と考えると思います。
技術もついてきた。患者さんにも喜んでもらえる。売上も作れるようになってきた。そうなると、「これ、自分でやった方がいいんじゃないか」と思う瞬間があるんですよね。
その気持ちは自然です。僕も、開業したいという気持ち自体を否定するつもりはありません。
ただ、少し辛口に言うと、売上を作れることと、お金を残せることは別物です。ここを一緒にしてしまうと、開業してから「あれ、思っていたより苦しいぞ」となりやすいです。

まなぶ先生

瀬谷崎
月商80万円は、たしかにすごい
1人治療院で月商80万円を作れるなら、普通にかなり頑張っています。
集客も必要ですし、リピートも必要です。単価、施術力、説明、予約管理、全部それなりに回っていないと、なかなか届きません。
なので、月商80万円という数字を軽く見る必要はありません。むしろ、ちゃんとすごいです。
でも問題は、そこからです。

まなぶ先生

瀬谷崎
家賃、広告費、通信費、水道光熱費、交通費、備品、減価償却などを引くと、まだそこそこ残っているように見えます。
たとえば月商80万円で、いろいろ引いたあとに約42.8万円が残る。ここだけ見ると「お、いけるかも」と思いやすいです。
でも、その42.8万円がそのまま生活費になるわけではありません。ここから、まだ引かれるものがあります。
最後に残るお金で見る
経営の数字でややこしいのは、途中の数字がけっこう頼もしく見えることです。
売上だけ見ると大きい。経費を引いたあとも、それなりに残っているように見える。でも、実際に生活に使えるお金は、もっと後ろにあります。
ざっくり置くと、こんな感じです。
80万円
1人院としてかなり頑張っている
約18.2万円
思ったより自由に使えるお金は少ない
100万円
大台に乗った安心感がある
約26.2万円
リスク込みで見ると、まだ余裕は大きくない
150万円
1人院ではかなり高い水準
約46.6万円
収入は増えるが、体力と時間の問題が出てくる
もちろん、家賃や広告費、借入額、税金、家族構成によって数字は変わります。
ここで見てほしいのは、細かい金額そのものではありません。月商が高くても、手元に残るお金は想像より小さくなるという感覚です。

まなぶ先生

瀬谷崎
売上より先に、生活費から考えてもいい
開業の話になると、つい「月商いくらを目指すか」から考えがちです。
もちろん売上目標は必要です。でも、僕は生活費から逆算する見方も大事だと思っています。
- 毎月、最低いくらあれば生活できるのか
- 家賃や広告費を払ったあとに、いくら残る想定なのか
- 税金や保険料を月割りで置いているか
- 借入返済を引いても、ちゃんと生活できるか
- 自分が休んだ月に、どこまで耐えられるか
このあたりを見ないまま、「とりあえず開業すればなんとかなる」で進むのは、かなり怖いです。
勢いは大事です。でも、勢いだけで家賃は払えません。税金も待ってくれません。
口座にあるお金を、全部使ってはいけない
開業後に地味にきついのが、税金のタイミングです。
消費税、所得税、住民税、国民健康保険料。こういうものは、毎日きれいに引かれていくわけではありません。
口座にお金があると、どうしても「使えるお金」に見えます。でも、その中には後で出ていくお金が混ざっています。

まなぶ先生

瀬谷崎
これは本当にあります。売上はある。通帳にもお金はある。でも、後から支払いが来て一気に苦しくなる。
「黒字っぽいのに苦しい」という状態は、数字を月ごとに分けて見ていない時に起こりやすいです。
回数券の売上も、ちょっと注意
回数券やプリペイドの売上が入ると、口座残高が一気に増えます。
もちろん、回数券そのものが悪いわけではありません。患者さんにとって通院計画を立てやすいこともあります。
ただ、経営側の感覚としては、ここも注意が必要です。
回数券の売上は、未来の施術分を先に受け取っているお金です。
入金された瞬間に、全部が自由なお金になったわけではありません。
あとから施術する時間も必要ですし、予約枠も使います。患者さんへの説明も、当然きちんと必要です。
売上が増えたように見えても、未来の仕事を先に背負っている。ここは忘れない方がいいです。
じゃあ、開業しない方がいいのか
ここまで読むと、「じゃあ開業はやめた方がいいのか」と感じる人もいるかもしれません。
僕は、そうは思っていません。
自分の考えで院を作れること。患者さんへの説明や施術方針を、自分の責任で決められること。地域の中で、自分の院を育てていくこと。開業には、やっぱり面白さがあります。
ただし、普通に借りて、普通に広告を出して、普通に施術だけをしていれば勝手に豊かになる、というほど甘くはありません。
| 工夫の方向 | たとえば | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 単価を上げる | 自費メニュー、専門性の高い施術設計、美容系メニュー | 単価だけ上げても、説明と満足度が伴わなければ続かない |
| 広告費を下げる | SNS、紹介、地域での認知づくり | 発信にも時間と継続力が必要になる |
| 固定費を抑える | 家賃、内装費、設備投資を見直す | 安さだけで選ぶと、集客や導線で苦労することがある |
| 1人院の限界を考える | スタッフ採用、教育、仕組み化を考える | 人を雇うと、また別の難しさが出てくる |
たとえば:自費メニュー、専門性の高い施術設計、美容系メニュー。
注意:単価だけ上げても、説明と満足度が伴わなければ続きません。
たとえば:SNS、紹介、地域での認知づくり。
注意:発信にも時間と継続力が必要になります。
たとえば:家賃、内装費、設備投資を見直す。
注意:安さだけで選ぶと、集客や導線で苦労することがあります。
たとえば:スタッフ採用、教育、仕組み化を考える。
注意:人を雇うと、また別の難しさが出てきます。
どれが正解というより、自分がどう働きたいかです。
1人で濃くやりたいのか。スタッフを増やして院として大きくしたいのか。地域密着で長く続けたいのか。
開業はゴールではなく、働き方を選ぶ手段です。ここを間違えると、院を持ったあとに「こんなはずじゃなかった」となりやすいです。
経営が苦しいから患者さんを通わせる、という形になったら本末転倒です。院を続けるための経営は必要ですが、そのために患者さんの不安を利用してはいけません。
開業は、勢いよりも見積もりが大事
開業には夢があります。自分の院を持つことには、やっぱり大きなやりがいがあります。
でも、売上だけを見て「いける」と判断するのは危ないです。経費、税金、保険料、借入返済、生活費、体力、働けない時のリスク。そこまで見て、ようやく現実に近づきます。
派手な数字より、最後に残るお金。勢いより、見積もり。
ちょっと地味ですが、長く続けるなら、こういう地味なところをちゃんと見る方が強いと思っています。

瀬谷崎













