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スクワットで股関節が痛い、筋トレ中だけ出る痛みをどう考えるか。症例をスタッフで検討

筋トレ中だけ出る股関節の痛み、なぜ「深くしゃがむ動き」に着目したのか

1つの症例を、担当した中村拓真先生(とんとん整骨院 東武練馬店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。日常生活ではほとんど痛まないのに、トレーニング中だけ右の股関節が痛む。種目を休むのでなく、深くしゃがむ動きの負担に出どころを見て、続けながら調整した判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、3ヶ月前から右股関節の痛みを強く感じるようになった30代の男性。トレーニング中に痛みが出るものの、筋トレ以外の場面で感じることはあまりない状態でした。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:筋トレ中に出ていた右股関節の痛み、深くしゃがむ動きの負担に着目
今回検討する症例(担当:中村先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=トレーニング中に出る右股関節の痛み(30代・男性)。背景=3ヶ月前から強く感じるように。筋トレ以外の場面ではあまり感じない。所見=動きの検査でワイドスクワットの再現痛。とらえ方=股関節を深く曲げ込むとき、まわりの筋肉(大腿筋膜張筋・ハムストリング・腸腰筋)の硬さで動きが妨げられ、骨盤を横から支える中殿筋の働きも十分でないことで、深いしゃがみ込みの動きで股関節の前側に負担が集まっていたと考えた。対応=大腿筋膜張筋・ハムストリング・腸腰筋への手技、中殿筋のトレーニング。経過=4回目に違和感程度へ、7回目には痛みを感じない状態に。8回目以降は週1回のペースへ移行し、全11回。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

日常では痛まないのに筋トレで痛む、原因は動きの深さか

主訴はトレーニング中だけ出る右股関節の痛み。けれど中村先生は、股関節そのものの異常より、深くしゃがむ動きの負担のかかり方に出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

中村先生中村先生

主訴はトレーニング中に出る右股関節の痛みで、筋トレ以外の場面ではあまり感じないとのことでした。動きの検査では、足幅を広くとったワイドスクワットで痛みが再現できました。深くしゃがむ動きでは股関節が大きく曲げ込まれ、前側で骨と筋肉が近づきます。ももの外側やもも裏、股関節の前側の筋肉に硬さがあると、曲げ込むときの骨の動きが妨げられて、前側に負担が集まる。日常の浅い曲げ伸ばしでは出ないのに、トレーニングの深い動きでだけ痛む訴えと一致すると考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

痛む場面がワイドスクワットとはっきりしているのは、確認する側としてはありがたいですね。逆に、日常で痛みがないことで来院が遅れる方も多そうです。3ヶ月我慢されていたわけですし。

中村先生中村先生

そうなんです。日常で痛まないと「トレーニングのやりすぎかな」と様子を見てしまいがちです。ただその間に、痛みをかばうフォームが癖になってしまう方もいらっしゃいます。この方は痛む種目と深さがはっきりしていたので、再現痛を手がかりに、負担のかかり方を絞り込めました。

トレーニングは休むべきか、続けながら調整するか

痛みが出るなら種目を休む、という選択もあります。教子先生が、先に確認すべきサインとあわせて、続けながら進めた判断の根拠を尋ねました。

教子先生教子先生

スポーツ中の痛みでまず外したいのは、組織の損傷が疑われる状態ですよね。夜間や安静時にも痛む、付け根に体重をかけられない、強い衝撃のあとから痛みが続いている。このあたりのサインは確認できていましたか。

中村先生中村先生

そこは最初に確認しました。安静時や夜間の痛みはなく、体重をかけての歩行も問題なし、きっかけになる外傷もありませんでした。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。そのうえで、痛みが特定の種目・特定の深さでだけ再現される状態だったので、一律に休んでいただくのではなく、種目の深さや足幅を調整しながら続けていただき、並行して負担の要因を変えていく判断をしました。

瀬谷崎瀬谷崎

トレーニングを習慣にしている方に「休んでください」とだけ伝えると、続けてきた習慣そのものが崩れてしまうか、我慢して続けて悪化するかの二択になりがちなんですよね。急いで確かめるべきサインを外したうえで、痛みの出ない範囲を具体的に示して続けてもらう。この方の生活に合わせた現実的な判断だと思います。

ゆるめるだけでなく中殿筋を鍛えた意味と、その経過

施術は筋肉をゆるめるだけでなく、お尻の横の筋肉(中殿筋)のトレーニングを組み合わせました。その意図と経過を確かめました。

まなぶ先生まなぶ先生

大腿筋膜張筋やもも裏をゆるめるのは分かるのですが、中殿筋のトレーニングまで組み合わせたのはどうしてですか。

中村先生中村先生

骨盤を横から支える中殿筋の働きが十分でないと、深くしゃがむときに股関節の動きが不安定になり、前側の負担が増えやすいと考えられています。硬い筋肉をゆるめるだけだと、しゃがみ込んだときの支えが足りないままなので、ゆるめることと支えることを同時に進めました。経過は、4回目に違和感程度まで下がり、7回目にはトレーニング中も痛みを感じなくなりました。8回目以降はご自身のトレーニング・ストレッチの効果も出てきたので、週1回のペースへ移行しています。

瀬谷崎瀬谷崎

ゆるめて可動を出し、支えを育てて負担の分担を変える。順番も含めて筋が通っていますね。スクワットは負荷を積むほど深さと支えの両方が要る種目なので、痛みが引いたあとも中殿筋の働きを保てるかが、再発しにくさを分けると思います。全11回という経過も、フォームを崩さず続けられた結果として妥当です。

考察:深くしゃがむ動きの負担からとらえる、筋トレ中だけの股関節の痛み

所見という事実(ワイドスクワットでの再現痛・股関節まわりの筋肉の硬さ)と、経過という結果(4回目に違和感程度、7回目に痛みを感じない状態になったこと)。この両方が、「股関節そのものの異常より、深くしゃがむ動きの負担に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。日常で痛まない痛みは軽く見られがちですが、特定の動きで再現できることは、負担のかかり方を絞り込む大きな手がかりになります。急いで受診すべきサインを外したうえで、種目を休まず、ゆるめる対象と鍛える対象を評価で見分けて続ける。この症例では、その進め方が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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