患者さんに不安を渡さないための「自信ある風」の作り方

自信がない日でも、患者さんに不安を渡さない

本当に自信がつくのを待っていたら、現場は始まりません。だからこそ、施術者には「自信があるように見える振る舞い」を身につける必要があります。

自信ある風は、ハッタリではありません。患者さんを不安にさせないための、プロとしての姿勢です。分からないことを断定せず、それでも落ち着いて対応する力が大切です。

施術者にも、自信がない日はあります。

経験が浅い時期はもちろん、難しい症状の相談を受けた時、説明がうまくまとまらない時、患者さんから鋭い質問を受けた時。

内心では、ちょっと焦ります。

ただ、その焦りをそのまま患者さんに渡してしまうと、患者さんはもっと不安になります。

ここで大事なのが、「自信がある風」です。

少し言葉が軽く聞こえるかもしれません。でも、これはごまかしではありません。

自分の不安を患者さんに背負わせないための、プロとしての振る舞いです。

まなぶ先生
まなぶ先生

でも、自信がないのに堂々とするのって、ちょっと嘘っぽくないですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

嘘をつくのはダメです。でも、不安そうに振る舞わない努力は必要です。そこは別物ですね。

自信は「あるもの」ではなく、見せ方も含めて作るもの

よく、「自信がついたら堂々と話せるようになる」と考えがちです。

もちろん、経験を積めば本当の自信は増えます。

でも、現場ではそれを待っていられません。

患者さんは、今困って来ています。こちらが成長するまで待ってくれるわけではありません。

だから、内側の自信とは別に、外側の振る舞いを整える必要があります。

少し辛口に言うと、「自信がないので不安そうに対応します」は、患者さんには関係ありません。自信がないなら、なおさら準備と振る舞いで補うべきです。

ここでいう「自信ある風」は、断定することではありません。

「絶対治ります」「原因はこれです」と言い切ることでもありません。

むしろ、分からないことは分からないと言う。必要なら医療機関での確認もすすめる。その上で、今分かっていること、次に見るべきこと、今日できることを落ち着いて伝える。

これが、患者さんに不安を渡さない対応です。

まずは、聞こえる声で話す

自信がなさそうに見える人は、声が小さくなりやすいです。

声が小さいと、患者さんは内容以前に「この先生、大丈夫かな」と感じます。

大声を出せばいいわけではありません。相手の距離、部屋の広さ、患者さんの聞こえ方に合わせて、少しだけはっきり話す。

それだけで印象は変わります。

最初に整えること

語尾を飲み込まない。早口で流さない。患者さんの顔を見て、最後まで聞こえる声で話す。これだけでも、説明の安心感はかなり変わります。

内容が同じでも、声の出し方で伝わり方は変わります。

ぼそぼそした「大丈夫だと思います」と、落ち着いた「今の所見では、強く心配する材料は少なそうです」では、患者さんの受け取り方がまったく違います。

早口としゃべりすぎは、不安のサインになる

焦っている時ほど、人は早口になります。

そして、余計に説明します。

説明している本人は、丁寧に伝えているつもりです。でも、患者さん側から見ると、言葉が多すぎて何が大事なのか分からなくなります。

不安が出やすい話し方 整えたい話し方
結論の前に説明が長い まず結論を短く伝えてから、理由を補足する
「えっと」「たぶん」が多い 言い切れる範囲と言い切れない範囲を分けて話す
質問に対して別の話へ逃げる 質問に一度まっすぐ答えてから、必要な説明を足す
沈黙が怖くてすぐ話し続ける 患者さんが考える時間を残す
結論の前に説明が長い

まず結論を短く伝えてから、理由を補足する。

「えっと」「たぶん」が多い

言い切れる範囲と言い切れない範囲を分けて話す。

質問に対して別の話へ逃げる

質問に一度まっすぐ答えてから、必要な説明を足す。

沈黙が怖くてすぐ話し続ける

患者さんが考える時間を残す。

話す速度は、自分では分かりにくいです。

一度、説明を録音して聞いてみるといいです。かなり恥ずかしいですが、かなり効きます。

余計な言葉、語尾の弱さ、早口になっている場所が見えてきます。

余計な動きは、思ったより見られている

自信がない時、身体にも出ます。

カルテを何度もめくる。ペンを触る。足元が落ち着かない。視線が泳ぐ。説明しながらウロウロする。

本人は無意識でも、患者さんは意外と見ています。

まなぶ先生
まなぶ先生

手の置き場とか、そんな細かいところまで気にした方がいいんですか?

瀬谷崎
瀬谷崎

気にした方がいいです。自分の落ち着きのなさは、患者さんの不安に変換されます。

手の置き場を決める。説明中は立ち位置を変えすぎない。患者さんが話している時は作業を止めて聞く。

こういう小さなことが、安心感を作ります。

沈黙をすぐ埋めない

患者さんに提案をした後、少し沈黙が生まれることがあります。

その沈黙が怖くて、施術者側がどんどん言葉を足してしまう。

「いや、でも無理にとは言わないですし」「もちろん人によりますけど」「一応こういう感じで」

気持ちは分かります。でも、言葉を足しすぎると、さっきまでの説明の輪郭がぼやけます。

沈黙は、失敗ではありません。患者さんが考えている時間かもしれません。そこを全部こちらの不安で埋めないことです。

説明したら、少し待つ。

患者さんが考える時間を残す。

必要なら「分からないところはありますか」と聞く。

このくらいの間がある方が、押しつけ感も減ります。

質問には、まず答える

患者さんから質問された時、答えにくいことがあります。

「これは治りますか?」

「どのくらい通えばいいですか?」

「病院に行った方がいいですか?」

ここで、はっきりしないまま長く話すと、患者さんは不安になります。

大事なのは、まず質問に答えることです。

答え方の例

「今日の評価だけで断定はできません。ただ、今の反応を見る限りでは、まずこの動きと生活動作を調整して経過を見たいです。もししびれや脱力が強くなる場合は、医療機関での確認も必要になります。」

分からないことを無理に言い切らない。

でも、分からないまま放り出さない。

今分かっていること、分からないこと、次に確認することを分けて伝える。

これだけで、患者さんはかなり安心しやすくなります。

最初は、うまい人をまねるのが早い

自分の型がないうちは、うまい人をまねた方が早いです。

声の出し方、間の取り方、患者さんへの目線、説明の順番、立ち位置、言葉の選び方。

できれば、かなり細かくまねます。

中途半端にまねると、ただの寄せ集めになります。最初は「ちょっと恥ずかしい」くらいでちょうどいいです。

まねる時の注意

断定が強い人、患者さんを不安にさせて通わせる人、知識不足を勢いで隠す人は、まねる対象にしない方がいいです。落ち着きと誠実さがある人を選びましょう。

プロの振る舞いは、最初は少し不自然です。

普段の自分と違うからです。

でも、それでいいと思います。仕事中の自分と、家でだらっとしている自分が同じである必要はありません。

とんとん整骨院が大切にしていること

とんとん整骨院では、患者さんへの説明を大切にしています。

痛みやしびれがある時、患者さんはすでに不安を抱えています。そこで施術者まで不安そうにしていたら、安心できるはずがありません。

だからこそ、落ち着いた声で、必要なことを、分かる言葉で伝える。

分からないことは分からないと伝え、必要な確認を提案する。

自信があるように振る舞うことと、無責任に断定することを混同しない。ここは、とても大切です。

瀬谷崎の考え方

患者さんに見せるべきなのは、万能感ではなく安定感です。強く言い切るより、落ち着いて整理できることの方が信頼につながります。

施術者が見直したいこと

  • 説明の声が小さくなっていないか
  • 焦ると早口になっていないか
  • 質問に対して、結論の前に長く話していないか
  • 患者さんの沈黙を、自分の不安で埋めていないか
  • 分からないことを、勢いで断定していないか
  • 仕事中の振る舞いを、意識して切り替えられているか

これは、接遇だけの話ではありません。

患者さんの信頼は、施術の受け取り方にも関わります。

同じ説明でも、落ち着いて伝えられるかどうかで、患者さんの安心感は変わります。

自信がない時ほど、振る舞いを整える

本当の自信は、経験と勉強と失敗の積み重ねで少しずつ育ちます。

でも、患者さんの前では、育つ途中の不安をそのまま出しすぎない方がいいです。

声を整える。話す速度を落とす。余計な動きを減らす。沈黙を待つ。質問にまず答える。

こうした小さな振る舞いが、患者さんの安心感を支えます。

瀬谷崎
瀬谷崎

自信がない日はあっていいです。ただ、その不安を患者さんに渡さない工夫は、プロとして持っておきたいですね。

参考

  • Hall AM, Ferreira PH, Maher CG, Latimer J, Ferreira ML. The influence of the therapist-patient relationship on treatment outcome in physical rehabilitation: a systematic review. Physical Therapy. 2010.
    PubMed
  • Fuentes J, et al. Enhanced therapeutic alliance modulates pain intensity and muscle pain sensitivity in patients with chronic low back pain: an experimental controlled study. Physical Therapy. 2014.
    PubMed
  • Ambady N, Koo J, Rosenthal R, Winograd CH. Physical therapists’ nonverbal communication predicts geriatric patients’ health outcomes. Psychology and Aging. 2002.
    PubMed
瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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