上を向くと首が張るデスクワーク中の肩こりが施術を経て楽になった例(60代女性)
主訴
2024年7月、肩こりのつらさでご来院されました。デスクワークのお仕事をされていて、座り続けていると肩こりの症状がつらくなる状態でした。
当院の評価
患者様への説明
動きの検査では、首を前に倒す動きよりも、後ろへ反らす動きと横へ倒す動きで首の張り感が強く出ていました。肩甲骨が外側へ開いて下がった位置になり、肩甲骨を支える僧帽筋の働きが弱まっていたことから、座って画面を見る姿勢のなかで首の後ろの筋肉が縮んだ位置のまま頭を支え続け、反らすとその張りが強まる状態になっていたと考えました。
日常動作・解剖学的動診
【日常動作】長時間の座位で肩こりが増悪 【検査】頚部伸展・側屈で首の張り感が強い
身体機能評価
肩甲骨の外転・下制方向へのアライメント不良/僧帽筋の出力低下
判断
肩甲骨が外側へ開いて下がった位置で固定され、支える僧帽筋の働きが弱まっていたことで、頭を支える役割が首の後ろの筋肉に偏り、その筋肉が縮んだ位置で働き続けていたため、前に倒すよりも反らす方向で張り感が出ていたことが主な要因と考えられます。
施術の様子
患者様への説明
胸の前や腕の前側の硬さで肩甲骨が前下方へ引かれていたため、その硬さをゆるめて肩甲骨が戻りやすい状態をつくり、あわせて首の後ろの筋肉の張りをゆるめました。そのうえで、肩甲骨を支える僧帽筋のトレーニングと胸まわりのストレッチをご自宅でも続けていただく方針で進めました。
専門的内容
【手技療法】小胸筋・上腕二頭筋・板状筋へのアプローチ/【運動療法】僧帽筋のトレーニング/【セルフケア指導】胸筋のストレッチ・僧帽筋のトレーニング
施術の経過
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初期
初回の施術後には、張り感を感じないところまで軽くなりました。2回目のご来院時には、お仕事を続けるなかでつらさがかなり戻ってきていたため、早い段階でストレッチとセルフトレーニングをお伝えし、ご自宅でも続けていただくことにしました。
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中期
3〜5回目にかけて、仕事中に戻ってくる程度が小さくなり、安定してきました。
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後期
8回目ごろには、日常ではほとんど気にならない程度まで落ち着き、月1回のメンテナンスへ移行しました。
料金・通院目安
料金の目安
初回料金
施術 3,740円+物理療法 1,650円
2回目以降の料金
施術 7,480円+物理療法 990円
通院の目安
施術回数
約8回
施術期間
落ち着いたあと、月1回のメンテナンスへ移行
ここでは、この症例の記録とは別に、「座り続ける時間が長く、上を向いたり首を横に倒したりすると首が張る状態」という状態について、一般的な見方やご自宅でのヒント、医療機関へ相談する目安を順にたどります。
どうして上を向くと首が張るの?
座って画面や手元を見る姿勢が続くと、胸の前や腕の前側の筋肉が縮んだまま固まり、肩甲骨が外側へ開いて下がった位置に引かれやすいと言われています。この位置では肩甲骨を支える僧帽筋が働きにくくなり、頭を支える役割が首の後ろの筋肉に偏るため、首を反らす動きで張り感が出やすくなると考えられています。首の後ろだけをほぐしても戻りやすいのは、頭を支える配分が変わっていないためと言われています。
下を向くと張る肩こりとの違い
肩甲骨が外側へ開いて下がる、という背景は同じでも、張りの出方は人によって分かれます。首を前に倒したときに肩が張るタイプは、肩甲骨から首へ伸びる筋肉が引き伸ばされる側で張りを感じやすく、この方のように後ろへ反らしたときに首が張るタイプは、首の後ろの筋肉が縮んだ位置で働き続けている側で張りを感じやすいと考えられます。同じ「デスクワークの肩こり」でも、どの動きで張るかによって、ゆるめる場所の優先順位と、セルフケアで伸ばす向きが変わります。同じ担当者が、前に倒すと肩が張るタイプの方を担当した記録もあります(座り続ける仕事でつらかった肩こりが施術を経て楽になった例(70代女性))。読み比べていただくと、動きの検査で何を見ているかが伝わりやすいと思います。
セルフケアはいつから始めるのか
施術のあと一度楽になっても、仕事に戻ると大きく戻ってしまう方がいます。戻ること自体は自然な反応ですが、戻り幅が大きいときほど、施術の回数を重ねるより先にご自身でできることを持ち帰っていただく方が、その後の戻り幅が小さくなりやすいと考えています。この方も2回目の時点でストレッチとトレーニングをお伝えし、3〜5回目にかけて安定してきました。
肩こりは「どの動きで張るか」で見え方が変わります。上を向くと首が張るときは、張っている首の後ろだけでなく、肩甲骨がどの位置にあるか、支える力が足りているか、そしてゆるめる側と伸ばす向きがどちらかを確かめることが、進め方を考えるうえで役立つと言われています。
塩谷 健太首の後ろが張るので首をほぐしてほしい、とおっしゃる方は多いです。ただ、上を向いたときに張るかどうかで、頭を支える負担がどこに偏っているかが見えてきます。ほぐす場所と鍛える場所は別のことがあるので、一度確かめてみてください。
こんな方に気になりやすい(セルフチェック)
次のような項目に心当たりが多い方は、負担が集まりやすい傾向があると言われています。当てはまること自体が異常を意味するわけではありません。
- 座って作業する時間が長い
- 下を向くより、上を向いたときのほうが首の後ろが張る
- 首を横に倒すと片側が突っ張る
- 施術やマッサージのあと楽になっても、仕事に戻ると大きく戻る
ご自宅でできる工夫
痛みが和らいできたら、一般的なセルフケアとして次のような工夫が知られています。
- 作業の合い間に、胸の前を痛みのない範囲でゆっくり開くように伸ばす
- 肩甲骨を背骨側へ軽く寄せる動きを、無理のない回数で習慣にする
- 上を向く動きは反動をつけず、張りを感じる手前でとどめる
痛みやしびれが強いとき、力が入りにくいときは無理に行わず中止し、医療機関にご相談ください。
こんなときは医療機関へ
多くは時間とともに和らいでいくと言われていますが、次のような場合は、自己判断せず早めに医療機関を受診してください。
- 腕や手にしびれや力の入りにくさがある
- 首を動かしていないときにも痛みが強まり続けている
- 強い頭痛やめまい、吐き気を伴う
- 転倒や強くぶつけたあとに痛みが続いている、発熱を伴う
よくある質問
下を向くと張る肩こりとは何が違いますか?
肩甲骨が外側へ開いて下がる背景は共通していることが多いのですが、前に倒して張る方は引き伸ばされる側、反らして張る方は縮んだ位置で働き続けている側に張りが出やすいと考えられます。この症例の方は後者で、首の後ろの張りをゆるめつつ、胸の前を伸ばして肩甲骨を支える力を育てる進め方を取りました。
セルフケアはいつから始めましたか?
この症例では、2回目のご来院時につらさが戻っていたため、早い段階でストレッチとセルフトレーニングをお伝えしました。始める時期や内容は、お一人おひとりの状態に合わせてご提案しています。
この年代からでも筋力のトレーニングはできますか?
この症例の方は60代で、肩甲骨を支える僧帽筋のトレーニングをご自宅で続けていただきました。強い負荷をかけるものではなく、動かす向きと回数をお伝えしたうえで、無理のない範囲で行っていただいています。
塩谷 健太首の張りは、座る環境そのものを変えにくいぶん、戻り方と付き合っていく形になります。ゆるめることとご自身のケアを組み合わせれば、戻り幅は小さくしていけます。気になる段階でご相談ください。
この症状について、担当者と複数のスタッフで臨床的に検討したカンファレンス記事もあります。評価の進め方や考え方の詳細はこちらをご覧ください。
施術担当者

経歴
症例レポートは、改善した例だけでなく、そうでなかった例も含めて結果を選ばず掲載しています。








この方は初回でいったん張り感が引いたあと、2回目のご来院時には仕事のなかでかなり戻っていました。戻り幅が大きいときは、施術の回数を重ねるより先にご自身でできることをお渡しした方が早いと考え、早い段階でストレッチとトレーニングをレクチャーしました。上を向くと首が張るタイプでは、首だけをゆるめても頭を支える役割が変わらないため、肩甲骨を支える力を並行して育てることが要になります。ご自宅でのケアが入ってから、戻り幅が目に見えて小さくなっていきました。