触覚、痛覚、温冷覚。しびれは感覚の通り道で見方が変わる

触覚、痛覚、温冷覚。しびれは感覚の通り道で見方が変わる

しびれや感覚低下を確認する時は、触った感じ、痛み、熱い・冷たい、関節の位置感覚を分けて見ます。後索路と外側脊髄視床路の違いを知ると、末梢神経、神経根、脊髄、中枢神経のどこを疑うかが整理しやすくなります。

この記事について

しびれや感覚障害を評価する時に分けたい感覚の種類と伝導路を整理します。触覚・深部感覚、痛覚・温冷覚、後索路、外側脊髄視床路、左右差や危険サインの見方を扱います。

伊藤聡史
伊藤聡史

感覚検査は、触った感じだけで終わらせないことがあります。痛み、温度、深部感覚を分けて見ると、しびれの場所だけでは分からない情報が出てきます。

結論:しびれの評価では、触覚・深部感覚・痛覚・温冷覚を分け、どの経路の情報が変わっているのかを確認します。

感覚は一つの道だけで脳へ届くわけではない

患者さんが「しびれる」「感覚が鈍い」と訴えた時、最初に考えたいのは、どの感覚が変わっているのかです。触られた感じなのか、痛みなのか、熱い・冷たいなのか、足の位置が分かりにくいのかで、確認する検査と考える経路が変わります。

感覚は、末梢神経から脊髄へ入り、脊髄や脳幹を通って大脳へ伝わります。ただし、触覚・深部感覚と、痛覚・温冷覚は同じ通り道ではありません。この違いを押さえると、左右差、体幹を含む感覚障害、歩行障害を伴うしびれを整理しやすくなります。

触覚と深部感覚は、後索路を意識する

触覚は、皮膚に触れられたことを感じる感覚です。深部感覚は、関節の位置や動き、振動などを感じる感覚です。臨床では、触られた感じの左右差だけでなく、足元が分かりにくい、暗い場所でふらつく、目を閉じると不安定になるといった訴えにもつながります。

触覚や深部感覚は、後索路を中心に考えます。末梢から入った情報が脊髄の後索を上行し、脳幹で交差して大脳へ伝わるため、痛覚や温冷覚とは障害の出方が違うことがあります。

触覚と深部感覚の伝導路
触覚・深部感覚は、痛覚や温冷覚とは違う経路として整理します。
触覚

軽く触られた感じを確認します。左右差、範囲、デルマトームや末梢神経分布との一致を見ます。

深部感覚

関節の位置、振動、足元の分かりにくさなどを確認します。ふらつきや歩行の変化と合わせて見ます。

痛覚と温冷覚は、外側脊髄視床路で考える

痛覚は、痛み刺激を感じる感覚です。温冷覚は、熱い・冷たいといった温度の違いを感じる感覚です。しびれや感覚低下の訴えがある時、触覚だけでなく、痛みや温度の感じ方も分けて聞く必要があります。

痛覚や温冷覚は、脊髄に入ったあと比較的早い段階で反対側へ交差し、外側脊髄視床路を上行します。そのため、触覚は分かるのに痛みや温度だけ分かりにくい、ある高さから下で温度感覚が違う、といった訴えでは経路の違いを考えます。

痛覚と温冷覚の伝導路
痛覚・温冷覚は、外側脊髄視床路を中心に考えると左右差や高さを整理しやすくなります。

「触られた感じは分かるけれど、熱さや痛みだけ分かりにくい」という訴えでは、感覚の種類を分けて聞くことが大切です。

患者さんの言葉を感覚の種類へ分ける

患者さんは「触覚が低下しています」「外側脊髄視床路が変です」とは言いません。実際には、「触っている感じが鈍い」「熱いものに気づきにくい」「痛みの感じ方が左右で違う」「足元がふわふわする」といった言葉で訴えます。

問診では、その言葉を感覚の種類へ分けます。触られた感じなのか、痛みなのか、温度なのか、位置感覚なのかを聞き分けることで、検査の順番が決まります。

触った感じが鈍い

触覚の左右差や範囲を確認します。末梢神経、神経根、脊髄のどの分布に近いかを見ます。

熱さ・冷たさが違う

温冷覚の変化として確認します。やけどに気づきにくい、冷刺激が分かりにくい訴えも拾います。

痛みが分かりにくい

痛覚の低下や左右差を見ます。触覚だけでは分からない感覚障害が残っていないか確認します。

足元が分かりにくい

深部感覚やバランスの問題を考えます。歩行、ふらつき、暗所での不安定さも合わせて聞きます。

左右差と高さを確認する

感覚障害を見る時は、左右差と範囲を確認します。片側だけなのか、左右対称なのか、手足の末端からなのか、体幹を含むのか。特に、胸やお腹のある高さから下で感覚が変わる場合は、末梢神経だけでなく脊髄レベルの関与も考えます。

同じ「しびれ」でも、手首周囲で末梢神経が圧迫されている場合と、脊髄内の経路が関わる場合では、評価の優先順位が変わります。感覚の種類、左右差、高さ、筋力、腱反射、歩行を合わせて確認します。

  • 触覚、痛覚、温冷覚のどれが変わっているか
  • 左右差があるか、左右対称か
  • 指先や足先だけか、体幹まで含むか
  • 胸やお腹の高さから下で感覚が変わるか
  • 感覚障害と筋力低下、腱反射、歩行の変化がそろうか

触覚だけの検査で終わらせない

しびれの評価では、触った感じを左右で比べるだけでは足りないことがあります。触覚は保たれていても、痛覚や温冷覚が変わっている場合があるためです。

もちろん、すべての方にすべての検査を細かく行うわけではありません。問診で「熱いものに気づきにくい」「痛みが左右で違う」「足元が不安定」といった情報があれば、触覚以外の感覚も確認する必要があります。

検査の組み立て

問診で感覚の種類を分け、その後に触覚、痛覚、温冷覚、深部感覚を必要に応じて確認します。検査の数を増やすより、何を確認したい検査なのかを明確にすることが大切です。

危険サインがあれば医療機関での確認を優先する

感覚障害が広い、進行している、歩行障害や脱力を伴う、排尿・排便の異常がある場合は、施術で経過を見るより医療機関での確認を優先します。特に、体幹を含む感覚障害や、ある高さから下で感覚が変わる訴えは慎重に扱います。

感覚だけで判断せず、筋力、腱反射、病的反射、歩行、バランス、既往歴を合わせて確認します。しびれの評価では、経路の理解と安全確認をセットにして考えます。

重要

体幹を含む広い感覚低下、歩行障害、進行する筋力低下、排尿・排便の異常、急な片側症状、ろれつの異常がある場合は、医療機関での評価を優先します。

感覚の通り道を分けると、しびれの見方が深くなる

しびれや感覚低下は、触覚だけで説明できるとは限りません。触覚・深部感覚、痛覚・温冷覚は通る経路が違うため、症状の出方も異なることがあります。

とんとん整骨院では、患者さんの言葉を感覚の種類へ分け、分布、左右差、高さ、筋力、反射、歩行の変化を合わせて確認します。必要な場合は、施術よりも医療機関での確認を優先します。

伊藤聡史
伊藤聡史

しびれは場所だけでなく、どの感覚が変わっているかを見ると整理しやすくなります。触覚、痛覚、温冷覚、深部感覚を分けるだけで、見立ての精度が変わります。

伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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