肉離れ(筋腱複合体損傷)を評価する。重症度分類と急性期対応、断裂・血栓の鑑別
セラピスト向け
肉離れを、重症度と再発予防で診る
肉離れは、急な収縮や伸張で筋腱複合体(多くは筋腱移行部)が部分的に損傷した状態です。ハムストリングや腓腹筋に好発し、ダッシュやジャンプで生じます。完全断裂や腱付着部の裂離との鑑別、下腿では深部静脈血栓の除外、そして過度な安静でなく段階的な負荷による再発予防が要点になります。
肉離れを「とりあえず安静」で済ませると、再発や復帰の遅れにつながります。臨床では病態・重症度・鑑別・段階的対応に分けて見ていきます。
病態:筋腱複合体の部分損傷
肉離れは、遠心性収縮(伸ばされながら力を出す)などの急な負荷で、筋腱複合体が部分的に損傷した状態です。力学的に弱い筋腱移行部に起こりやすく、ハムストリング(とくに大腿二頭筋)、腓腹筋内側頭、大腿直筋、内転筋に好発します。
受傷時の鋭い痛み、その後の腫脹・皮下出血、伸張と収縮での痛みが特徴です。重症度は、軽微な損傷から部分断裂、完全断裂まで連続的で、損傷部位(筋腱移行部か腱付着部か)によって予後が変わります。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎疫学と自然経過(期待値の設定)
スポーツ外傷の代表で、ダッシュ・ジャンプ・急な切り返しで生じます。ハムストリングの肉離れは再発率が高いことで知られます。多くは保存的に回復しますが、重症度と部位で復帰期間が大きく異なります。
「多くは保存で回復するが、焦った復帰は再発を招く。とくにハムストリングは再発が多く、段階的な復帰基準が重要」という見通しを共有しておくと、早すぎる復帰を避けられます。
評価:一つひとつの所見を重ねる
- 受傷機転:急な収縮・伸張、鋭い痛みの有無
- 触診:圧痛部位、陥凹(断裂を示唆)、腫脹・皮下出血の範囲
- 機能:等尺性収縮での痛みと筋力、伸張時痛
- 重症度の手がかり:歩行可否、機能喪失の程度
- 鑑別所見:明らかな陥凹、ふくらはぎの腫脹・熱感(血栓)
所見は組み合わせて解釈します。強い機能喪失や陥凹があれば断裂を、下腿の腫脹では血栓を念頭に、医療機関での評価につなぎます。
鑑別(外せないもの)
- 完全断裂・腱付着部裂離(坐骨結節など):強い機能喪失、陥凹、若年の裂離骨折
- 深部静脈血栓(下腿):受傷機転が不明確な腫脹・熱感・把握痛
- アキレス腱断裂(ふくらはぎの「蹴られた感じ」、Thompson(トンプソン)テスト)
- 筋挫傷(打撲)・骨化性筋炎、コンパートメント症候群
- 神経由来・関連痛(受傷機転がない場合)
介入:安静でなく段階的負荷を設計する
急性期の保護と、早期からの適切な負荷、段階的な復帰を組み立てます。
- 急性期:過度な安静・アイシング一辺倒でなく、保護下で早期に痛みのない範囲の活動
- 初期に避けること:強いマッサージ、無理なストレッチ、患部の過度な加温
- 漸進的負荷:痛みの範囲で可動・等尺性から、エキセントリックを含む筋力へ
- 復帰基準:左右差のない筋力・全可動域・スポーツ動作の無痛遂行
- 再発予防:エキセントリック中心の強化、柔軟性、ウォームアップ、負荷管理
受傷直後の強いマッサージや無理なストレッチ、過度な加温は出血や治癒の妨げになりえます。急性期は保護しつつ、痛みのない範囲で早期に動かす方向が現在の考え方です。強い機能喪失や陥凹は断裂を、下腿の腫脹・熱感は深部静脈血栓を念頭に、医療機関へつなぎます。復帰を急ぐと再発しやすい点に注意します。
まなぶ先生
教子先生
瀬谷崎「とりあえず安静」にしない
肉離れは、重症度と部位を見極め、過度な安静でなく段階的な負荷で復帰を組み立てます。断裂や血栓の鑑別を押さえ、復帰基準と再発予防まで設計することが要点です。





