腰を反らすと痛い、中腰仕事で出る腰痛をどう考えるか。症例をスタッフで検討

反ると出る腰痛、なぜ「股関節の伸展」に着目したのか

1つの症例を、担当した川口流世先生(とんとん整骨院 下板橋店)と、瀬谷崎・まなぶ・教子とともに検討します。背筋を伸ばす・反る動作で出る腰の痛み。前かがみは楽なのに反ると痛い、その出かたから股関節の伸展に出どころを見た判断について、所見という事実と、経過という結果から、その妥当性を確かめていきます。

とんとんでは、1つの症例を担当者だけの判断で終わらせず、スタッフ同士で検討して見方を確かめています。今回は、内装業で中腰姿勢が多く、2日前から腰が痛くなった30代の男性。反る動作で痛み、前かがみや座位では楽な方の症例です。事実と結果から見ていきます。

症例カルテ:反ると出る腰痛、股関節の伸展に着目
今回検討する症例(担当:川口先生)。詳しい経過は症例レポートに掲載しています。
事実:所見と経過

主訴=腰の痛み(30代・男性)。背景=内装業で中腰姿勢が多く、2日前から発症。背筋を伸ばす・反る動作で誘発、前かがみや座位は比較的楽。2日間仕事を休んで安静にしていた。所見=体を反る・捻る動作で症状が誘発、腰を反らせるときの股関節の伸展・回旋の制限、腰椎で反る代償、確認の動きで症状が減弱、大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)・中殿筋・大腿直筋・梨状筋に反応。とらえ方=腰を反らせるときに股関節の伸展が得られず、腰椎で反りすぎる代償が出ていたと考えた。対応=股関節まわり(大腿筋膜張筋・中殿筋・大腿直筋・梨状筋)への手技、初回は鍼、2回目以降は電気施術と手技。経過=5回ほどで日常動作が楽になり、趣味の自転車にも取り組めるように。現在は再発予防を継続。
※経過には個人差があり、すべての方に同じ変化を保証するものではありません。気になる症状は医療機関への受診もご検討ください。

反ると出る腰痛、原因は股関節の伸展制限か

主訴は反ると出る腰の痛み。けれど川口先生は、腰そのものより、股関節の伸展に出どころがあるのではないか、と考えました。その根拠を確かめます。

川口先生川口先生

主訴は腰の痛みでしたが、背筋を伸ばす・反る動作で誘発され、前かがみや座位では楽でした。所見をとると、反らせるときに股関節が後ろへ伸びにくく、その分だけ腰で反りすぎていました。腰そのものより、伸びない股関節に出どころがあるのではないか、と考えました。

まなぶ先生まなぶ先生

反ると痛いと、腰そのものの問題に思えます。それでも股関節に目を向けたのはなぜですか。

川口先生川口先生

反る動きは、本来は股関節も一緒に伸びて分担します。股関節が伸びないと、足りない分を腰の反りで補う。中腰で反らす作業の多い仕事で、腰の反りに負担が集中する、という像が所見と一致したんです。確認の動きでも同じ方向の反応が出ました。

前かがみは楽なのに、反ると痛いのはなぜか

この方は、前かがみは楽で反ると痛い、という方向のはっきりした出かたでした。そこを確かめます。

教子先生教子先生

前かがみは楽で反ると痛い、と方向がはっきりしていますよね。足のしびれや力の入りにくさ、安静にしても引かない痛みといった、急いで受診すべきサインは外せていましたか。

川口先生川口先生

そこは確認しました。足への神経症状や安静時の強い痛みはなく、痛みは反る動作で再現し、丸めると和らぎました。こうしたサインがあれば医療機関の受診をご案内します。今回はそれらがないことを確かめて進めました。

瀬谷崎瀬谷崎

反ると痛く前かがみで楽、と方向がはっきりしているのは大きな手がかりですよね。反る動きで股関節が伸びない分を腰が肩代わりしている。危険なものを外したうえで、反る動作に絞って股関節から伸ばせるようにする。筋道が通っていると思います。

反らす作業に強い体にする介入と経過

腰を直接ゆるめるだけで終わらせない、というのが今回の要点でした。

まなぶ先生まなぶ先生

腰そのものでなく、股関節から反る動きを変えていったんですね。

川口先生川口先生

はい。硬くなった股関節まわりをゆるめ、初回は鍼も使って痛みを抑えました。反るときに股関節からも伸びるようにして、5回ほどで日常動作が楽になり、趣味の自転車もできるようになっています。中腰の多い仕事なので、股関節の柔軟性づくりを続けてもらっています。

瀬谷崎瀬谷崎

反る負担を、腰でなく股関節から分担できるようにしているのが要点ですね。動きの分担が変われば腰の反りすぎは減る。趣味に戻れた経過もその方向を支持しています。ただ中腰で反らす作業が続くので、続ける前提で見ていきたいところです。

考察:股関節の伸展からとらえる反ると出る腰痛

所見という事実(股関節の伸展制限・腰椎で反る代償・反る動作での誘発と確認の動きでの減弱)と、経過という結果(日常動作が楽になり趣味に戻れたこと)。この両方が、「腰そのものでなく股関節の伸展に出どころを見た」という見立ての妥当性を支えています。前かがみで楽で反ると痛いのは、反る動きで股関節が伸びない分を腰が肩代わりするため。危険なものを外したうえで、動作の方向から出どころを絞る。この症例では、その姿勢が妥当だったと言えます。

※本記事は実際の症例をもとにスタッフで検討したものです。経過には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。強い痛みやしびれ、安静時にも続く痛み、力が入りにくいなどがあるときは、医療機関への受診もご検討ください。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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