膝蓋骨の滑りを抑えるテーピングの強度選択。キネシオ・エラスチックバンテージ・シーネ固定をどう使い分けるか

押さえる方向と、押さえる強さを分けて選ぶ

運動を続けながら、膝のクリック音や引っかかりをどう抑えるか。膝蓋骨(しつがいこつ・膝のお皿)の滑りをコントロールするテーピングを、強度の段階で選ぶ考え方を取り上げます。

この記事について

このコラムでは、当院が参加するオンラインカンファレンスで実際に挙がった、膝のクリック音が続く10代のバドミントン選手についての相談をもとに、膝蓋骨の過剰な滑りを抑えるテーピングの選び方を取り上げています。押さえる方向の確かめ方、キネシオテープからエラスチックバンテージ、シーネ固定までの強度の段階、4つの巻き方の組み合わせまで触れています。

著者アイコン 伊藤聡史

テーピングは「どの方向へ押さえるか」と「どれくらいの強さで押さえるか」を分けて考えると選びやすくなります。方向は手で押さえて症状の変化を見る検査で決め、強さは症状が出る条件に合わせるのが基本です。

結論:膝蓋骨がどちらへ滑ると症状が出るかを、手で押さえながら動かして確かめます。固定の強度は、キネシオテープ、エラスチックバンテージ、シーネ固定の順に段階があり、症状が出る条件に合わせて選びます。巻き方を組み合わせれば、運動を続けながらの症状コントロールが期待できます。

どちらへ滑るかを手で押さえて確かめる

相談のケースは、膝の曲げ伸ばしでクリック音と引っかかりが続く10代のバドミントン選手でした。一度は引っかかりが外れたものの、練習を続けるうちにまた引っかかってしまうという経過です。

医師からは運動の許可が出ており、固定で動きを全部止めるのではなく、プレーを続けながら症状を抑える方法が検討されました。

まず共有されたのは、膝蓋骨が過剰に滑る方向はだいたい決まっているという点です。

  • 多いのは、外側への滑りと上方への滑り
  • 内側へ滑ることはなかなかなく、下方へ滑ることもまずない

つまり候補は外か上かのほぼ2択です。確かめ方は手で行います。

  1. 押さえ込んだまま動かしてもらう膝蓋骨を外側から内側へグッと押さえ込んだまま膝を動かしてもらう、あるいは上から下へ押し込んだまま動かしてもらいます。
  2. 症状の変化を見るどちらか、または両方でクリック音や痛みが消えたり弱まったりするなら、その方向が押さえるべき方向です。
  3. 減弱した方向を再現して貼るテーピングは、この検査で症状が減弱した方向をそのまま再現するように貼ります。

今回の選手は、屈曲のときに膝蓋骨が外側へ動き、伸ばすと内側へ戻ってくるという動きが観察されていて、外側から押さえると少し楽になるとのことでした。

検討では「典型的な外側滑りの動き」と評価され、外側からのコントロールを軸に組み立てる方針になりました。なお、このケースの引っかかりの正体(タナ障害・滑膜ひだ障害)の評価と介入方針の全体像は、別の記事で取り上げています。

症状が出る条件で固定の強さを決める

方向が決まったら、次は強さです。基準になるのは「どんな動きで症状が出るか」でした。

脛骨の回旋を伴う動きのときだけ症状が出る 脛骨(けいこつ・すねの骨)の内旋・外旋を伴う動き、たとえば膝が内側に入ってつま先が外を向くような動作のときだけ症状が出るのであれば、その動きをコントロールするテーピングで十分と考えられます。
単純な屈伸そのもので症状が出る 脛骨の回旋と関係なく、単純な屈伸そのものでクリック音や症状が出るようであれば、テープだけで抑え切るのは難しくなります。厚紙などを使ったシーネ(患部に当てて関節の動きを止める、添え木のような固定具)も選択肢に挙がりました。

実際に、立った姿勢でしゃがみ込むときに膝が内側に入らないよう手で押さえておき、それで症状が減弱・消失するなら、膝の入り込みを抑える巻き方を足す価値があります。

ただし、シーネは炎症が落ち着くまでの短期間に限った話で、今回のように医師から運動許可が出ている程度の状態であれば、テーピングでの対応が現実的という判断でした。

キネシオとホワイトの中間、エラスチックバンテージ

強度の段階を具体的に並べると、次のようになります。

  1. キネシオテープ(伸縮性テープ)皮膚への負担が軽く、長めの期間でも使いやすい反面、膝蓋骨の滑りを押さえ込むには保持力が足りないことがあります。
  2. エラスチックバンテージ(伸縮性の粘着包帯)キネシオテープとホワイトテープの中間の強度。伸縮性を残しつつ、押さえ込む力を確保できます。
  3. ホワイトテープ(非伸縮テープ)の追加・シーネ固定キネシオにホワイトを重ねて強度を足す、あるいは厚紙などでシーネを作る段階。単純な屈伸でも症状が出る場合の、短期間の選択肢です。

今回の相談でも、この段階がそのまま話題になりました。相談者は、成長期の選手に硬いテープを長期間貼り続けることへの配慮から柔らかめのテープを使っていたものの、保持力が足りないと感じていました。

そこで「キネシオとホワイトの中間のようなものはないか」という質問が実際に出て、エラスチックバンテージという回答に落ち着いています。皮膚への負担と保持力の折り合いをつける、ちょうど中間の道具です。

4つの巻き方を組み合わせる

挙がった外側滑りへの組み合わせは、次の4つでした。

内側X字(エックスじ)固定膝の内側にX字にテープを貼り、膝が内側に入り込む動きを抑えます。
ストレート固定X字に重ねてまっすぐ貼り、内側のサポートを補強します。
脛骨内旋方向のスパイラルテープらせん状に巻いて脛骨を内旋方向へ誘導し、膝蓋骨が外へ引かれる動きの条件を減らします。
膝蓋骨の外側からの押さえ込みChapter 1の検査で症状が減弱した方向を再現するように、膝蓋骨を外側から内側へ押し込む向きでテープを貼ります。

相談のケースでは、内側にX字とストレートを貼り、内旋方向にスパイラルを巻き、さらに膝蓋骨が外側へ滑らないよう外からグッと押し込むようにテープを貼る、そこまで組み合わせれば「運動しながらでも何とかなるかもしれない」という水準の手応えが共有されました。

1本のテープで全部を担わせるのではなく、動きの条件を抑えるテープと、膝蓋骨そのものを押さえるテープを役割分担させる発想です。

貼るタイミングと皮膚への配慮

強度のあるテープを貼りっぱなしにすると、皮膚への負担が積み重なります。

運用のポイント

勧められたのは、部活の直前に貼り、終わったらすぐ剥がすという運用でした。症状が出やすい負荷の高い場面だけ強度を確保し、それ以外の時間は皮膚を休ませる考え方です。

また、貼った状態を動画で記録して共有すれば、巻き方の再現性を確かめながら調整を続けられます。実際の相談でも、うまくいったら貼っている様子を動画で共有しようという流れになりました。

医療機関の方針を前提に使う

今回のケースは、医師の診察を受けたうえで運動の許可が出ている状態でした。テーピングによる症状コントロールは、こうした医学的な判断を前提に、その範囲内で運動を続けるための手段として使うものです。

炎症が強い時期の対応や固定の要否は状態によって変わりますから、経過が思わしくないときや症状が強まるときは、あらためて医療機関に相談することが大切です。

著者アイコン 伊藤聡史

固定は強ければ良いというものでもありません。症状が出る条件に合わせて必要十分な強度を選び、役割の違うテープを組み合わせることが、運動を続けたい方の膝を守ることにつながると考えています。

伊藤聡史
株式会社とんとん/とんとん整骨院。臨床技術責任者。柔道整復師。

臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」講師。院内では臨床研修責任者として若手の技術指導を担い、論文抄読会の主催など、根拠に基づく施術(EBM)の浸透に取り組んでいる。

監修:瀬谷崎将也
とんとん整骨院代表・柔道整復師

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