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膝のロッキングが伸展位で起こる?典型と違う訴えの推論と再診の判断

伸びたまま戻らない膝。ロッキングらしくないロッキングの考え方

半月板損傷のロッキングといえば、軽度屈曲位で膝が伸ばせなくなる形を思い浮かべる方が多いはずです。ところが臨床では「伸ばした状態から戻らない」という訴えに出会うことがあります。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで実際に挙がった相談をもとに、典型と違うロッキングをどう考えるかをたどります。

相談の主は高校1年生のサッカー選手のケースです。屈伸で膝に痛みが出る状態が数日続き、だんだん腫れが強くなり、そのあとから1日に何度もロッキング(膝が引っかかって動かせなくなる嵌頓・かんとん症状)を起こすようになったという経過でした。

MRI(エムアールアイ・磁気共鳴画像検査)では半月板損傷と言われたものの、大学病院の判断は手術するほどではないというもの。頻回にロッキングを繰り返しているのに手術適応なし、という点にまず引っかかりが残ります。

背景として、この選手にはもともと円盤状半月板(えんばんじょうはんげつばん)の既往がありました。本来は三日月形の半月板が円板のような形をしている形態で、通常より引っかかりや損傷を起こしやすいとされます。幼少期は手術をせず保存で経過し、その後は数年間サッカーを問題なく続けられていました。

まなぶ先生まなぶ先生

ロッキングというと、軽度屈曲位で嵌まって膝が伸ばせなくなる形を想定しますよね。今回は伸ばした状態から戻らないと。ここが引っかかります。

教子先生教子先生

整復の操作は伸展方向へ導くのが基本ですから、伸展位で嵌まるのはその真逆ですよね。頻回に繰り返しているのに手術適応なしという判断も気になります。

瀬谷崎瀬谷崎

そうなんです。直接診ていないので何とも言いづらいのですが、だからこそ半月板由来という一本の筋書きだけでなく、別の説明候補も並べたくなる相談でした。

どこが典型と違うのか

この相談で目を引くのは、訴えの中身が教科書的なロッキング像と食い違う点です。具体的には次の4つが挙げられます。

  • ロッキングは軽度屈曲位で膝が伸ばせなくなる形が多いのに、今回は伸ばした状態から戻らない
  • 整復の操作は伸展方向へ導くのが基本で、伸展位での引っかかりはその真逆にあたる
  • 受傷直後からではなく、腫脹が進んだあとになってロッキングが始まっている
  • 1日に何度も繰り返す頻度なのに、手術適応なしと判断されている

典型の型だけを頼りに半月板由来として説明を通そうとすると、どこかで無理が出ます。合わない点は合わないまま書き出しておくほうが、次の仮説につながります。

前提

今回の相談は写真と電話でのやりとりが中心で、直接は診ていません。以下の候補もあくまで可能性として並べたもので、確定的な話ではないという前提でお読みください。

半月板以外の説明候補を並べる

ひとつ目の候補は、膝蓋骨(しつがいこつ・パテラ)由来の引っかかりです。膝蓋骨が外側へ滑りやすい病態では、一瞬痛みが走って膝が曲がらなくなり、膝蓋骨がカクッと元へ戻ると再び動かせる、という経過をとることがあります。

伸ばした状態から曲げられなくなるという今回の訴えは、この形なら説明がつく可能性があります。膝蓋骨がどちらへ滑りやすいかという見方はタナ障害と膝蓋骨の滑りの記事で扱っています。

ふたつ目の候補は、炎症による水腫(すいしゅ・関節に水が溜まった状態)です。半月板の損傷自体はあるとしても、ロッキング様の症状は半月板の嵌頓ではなく、水腫による引っかかり感や可動域の制限かもしれない、という筋書きです。

筋が通る読み方

ドクターが「症状の主因は炎症による水腫で、安静で炎症が治まれば症状も消えるだろう」と判断したのだとすれば、手術適応なし・2ヶ月の運動禁止という指示とも筋が通ります。

なお、半月板損傷そのものを徒手検査でどう評価するかは、マクマレーテストの検査精度の記事で扱っているので、そちらへ譲ります。

経過から見えること。初期対応と水腫の繰り返し

今回の経過では、受傷初期に固定や松葉杖が使われないまま活動が続き、腫脹が進んでからの対応になっていました。初期に固定して炎症を抑えられていれば、ここまでこじれなかった可能性があります。

手術をしない方針である以上、この先の課題は「なぜ水腫が繰り返し溜まるのか」という点になります。

症状が消えたあとも、膝へのメカニカルストレス(力学的な負荷)を減らすバイオメカニクス(生体力学)的な機能改善に取り組み、水腫が再び溜まりにくい状態を目指したいところです。

整復できても、再診へつなぐ

こうした非典型例に出会ったときの進め方を、3つの段階に分けておきます。

  1. 典型との差を書き出す肢位・頻度・発症までの順序が、教科書的なロッキング像とどこで食い違うかを確認します。
  2. 説明候補を複数残す半月板の嵌頓だけでなく、膝蓋骨由来の引っかかりや炎症による水腫も候補として持ち続けます。
  3. 整復できたら再診へロッキングを現場で戻せた場合も、病院への再診(紹介)につなぎ、画像評価と経過観察を医師と共有します。

整復の手技には慣れが要りますが、戻せたかどうかと、原因の見立てが合っていたかどうかは別の話です。整復後に再診へつなぐ方針にしておけば、見立てが外れていた場合の安全弁にもなります。

型に合わない訴えは、仮説を増やす合図

円盤状半月板の既往があると、どうしても半月板で説明したくなります。ただ、典型と違う点が重なるときほど、水腫や膝蓋骨といった別の筋書きを残したまま経過を追う姿勢が生きてきます。膝の痛みをひとつの原因に絞り込まない視点は、とんとんの膝の痛みアプローチの記事にも通じる話です。

瀬谷崎瀬谷崎

直接診ていない症例なので、どの候補が正解かは断言できません。ただ、典型と違う訴えを型に押し込まず、候補を並べて経過で確かめる進め方は、どの相談にも応用できると思います。整復できたら再診へ。この順番は守っていきたいですね。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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