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インプラントが入っている部位に超音波をかけてよいか。禁忌とされる素材と主治医への確認

体の中に人工物があるとき、超音波はどこまで安全か

骨折の手術などで体内にインプラント(骨を固定する金具などの人工物)が入っている方に、超音波治療器をかけてよいのか。禁忌とされる理由と、素材が分からないときの対応を取り上げます。

この記事について

このコラムでは、当院のカンファレンスで話題になった「術後にインプラントが入っている選手への超音波照射」の相談をもとに、金属・合成樹脂・関節セメントが禁忌とされる理由、チタンなど素材による扱いの違い、素材が不明なときの主治医への確認、メーカーが安全性を保証しない背景までを取り上げています。

著者アイコン 髙原佑輔

超音波は使い勝手のよい機器ですが、体内に人工物がある方への照射は別枠で考える必要があります。素材が確認できないうちは当てない、が基本の判断だと考えています。

結論:金属インプラント・合成樹脂・関節セメントがある部位への超音波は禁忌とされます。チタンなら問題ないとされる場合もありますが、素材が確認できなければ照射せず、主治医への確認を優先します。

なぜ危険とされるのか

超音波治療器は、超音波の振動が組織の中で熱に変わる性質を利用して、深い部分を温められる物理療法機器です。筋肉や関節に対して広く使われていますが、体内に人工物が入っていると事情が変わります。

発端になったのは、疲労骨折に対して髄内釘(骨の中に金属の棒を入れて固定する手術)を受けて1ヶ月ほどの選手に超音波を使いたいが、ドクターから「素材によってはやけどを起こす可能性がある」と言われた、という相談でした。

金属は超音波を反射します。反射が起こると、狙った組織にエネルギーが素直に吸収されず、人工物との境界の周囲で熱のたまり方が変わります。この過剰な加温がやけどにつながるおそれがあるため、金属インプラントが入っている部位への照射は禁忌とされています。

設定の調整では解決しない

出力(ワット数)やデューティ比(連続で当てるか断続で当てるかの割合)を調整すれば安全に使えないか、という案も出ていました。ただ、禁忌の理由が素材と熱の関係にある以上、設定の工夫で安全側に持ち込める種類の問題とは言えません。部位そのものを避けるのが原則です。

素材によって扱いが変わる

禁忌とされるのは金属だけではありません。照射を避けるべきとされる素材は次のとおりです。

  • 金属インプラント(プレート・髄内釘・スクリューなど骨を固定する金具)
  • 合成樹脂が使われている人工物
  • 関節セメント(人工関節の固定材)が使われている部位

一方で、チタンのように超音波を反射する金属であれば、過剰な加温が起こりにくく問題ないとされる場合もあります。ただ「金属なら一律に危険」「チタンなら一律に安全」と割り切れるほど、現場で素材を特定するのは簡単ではありません。

どの素材やメーカーの製品を使うかはドクターごとに分かれるとされます。移籍してきたばかりの選手のように、手術を受けた医療機関が遠方でカルテがすぐ手に入らないケースでは、本人も自分の体に入っている素材を把握していないことが珍しくないのです。

今回の相談でも、選手本人に聞いて分かったのは「チタンではないらしい」という情報までで、素材の特定には至りませんでした。こういうときに、チタンなら大丈夫なはずだと期待して照射へ進むのは順序が逆です。分からないなら当てない、が先に来ます。

素材が分からないときの進め方

体内に人工物があると分かった時点で、照射より先に確認を挟みます。進め方は次の3段階です。

  1. 本人と記録で確認する手術の時期・部位・医療機関を聞き取り、素材が分かる資料(手術記録や説明書類)が手元にないかを確認します。
  2. 主治医に問い合わせる素材が特定できないときは、手術を担当した主治医に素材と照射の可否を確認します。ドクター側も設定次第でやけどが起こりうると注意を促すことがあります。
  3. 確認が取れるまで照射を保留するそれまでは該当部位に超音波を当てず、照射部位を外すか、手技や運動療法など別の手段で対応します。

メーカーが安全と言わない事情

そもそも禁忌とされる条件は、研究で検証しにくいという事情があります。インプラントが入っている人に実際に超音波を当てて、本当にやけどが起こるかどうかを確かめる実験は、倫理的に成立しないからです。

データが揃わない以上、メーカーは何かあったときに責任を持てません。だから安全とは言わず、禁忌側に置いておく。物理療法機器の禁忌にはこうした構図のものが少なくなく、実際には使っている施術者もいるとみられます。

それでも、うまくいくかもしれないという期待だけで照射に踏み切るのは勧められません。万一やけどが起きたとき、責任を持てる人がどこにもいないからです。リスクを冒さない方が無難、というのが実務的な結論になります。

判断の目安

素材がチタンなど反射する金属と確認でき、主治医が照射を了承している場合に限って検討する。素材が不明、または合成樹脂や関節セメントの可能性がある場合は照射しない。

確認が先、照射はその後

超音波が使えなくても、施術の手段がなくなるわけではありません。照射部位をずらす、手技や運動療法で補うなど、選択肢は残ります。確認より先に照射を急ぐ理由は、ほとんどの場合ないはずです。

当院でも、体内に人工物がある方には、手術の内容と素材の確認、必要に応じた主治医への問い合わせを済ませてから、物理療法機器を使うかどうかを判断するようにしています。問診で手術歴を伺うのは、この確認のためでもあります。

著者アイコン 髙原佑輔

機器の禁忌は、守っておいて損をすることがない性質のものです。素材が分からないまま当てて得られるものより、確認してから使える安心の方がずっと大きいと考えています。

髙原佑輔
株式会社とんとん/とんとん整骨院。マネージャー・物理療法指導責任者。柔道整復師。

2014年より整形外科に勤務し、骨折・捻挫など多数の外傷症例を経験。勤務先で出会った患者の「私、ここの病院に30年通ってるの」という一言をきっかけに、「症状を抑え続ける」のではなく「通院に頼らない身体づくり」を追求するようになる。その後、大手整骨院グループの技術統括責任者を経て現職。現在は、とんとん整骨院グループを統括し、物理療法の品質管理・スタッフ指導を担うほか、noteでは物理療法やテーピングに関する技術情報の発信にも取り組んでいる。

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