脂肪体に超音波をどう当てるか。膝蓋下脂肪体炎・足底脂肪体炎で低出力から始める理由

敏感な組織には、弱く始めて反応を見る

膝のお皿の下や足の裏にある脂肪体は、血管と神経が豊富で刺激に敏感な組織です。超音波などの物理療法をどんな設定で当てるか、出力・肢位・機器選びの考え方を取り上げます。

この記事について

このコラムでは、当院のカンファレンスで検討した、膝の内側の痛みと足の裏の痛みが同時に出ていた方の例をもとに、膝蓋下脂肪体と足底脂肪体への物理療法の当て方を取り上げます。

脂肪体という組織の性質、超音波の出力の目安、水腫と癒着を意識した肢位、温熱の持続で機器を選ぶ視点、靴などの誘因を先に取り除く順序まで触れています。

著者アイコン 髙原佑輔

物理療法機器は、出力を上げるほど効くというものではありません。相手が敏感な組織であるほど、弱く始めて反応を確かめるのが基本だと考えています。

結論:脂肪体は血管と神経が豊富で敏感な組織です。超音波は50%出力・0.5W/cm²以下といった低出力が基本で、100%出力は避けます。機器を当てる前に、靴やかかと重心といった誘因を取り除けているかを確認します。

脂肪体はなぜ痛みに敏感か

検討した症例は、膝の内側が繰り返し腫れて痛み、同じ時期から足の裏にも痛みが出ていた50代の方でした。膝は伸展テストが陽性で、内反・外反のストレステストは陰性でした。

足の裏は、かかとの骨への付着部ではなく脂肪体のほぼ中央に圧痛があり、横からの圧迫でも痛みが再現されました。この所見から、膝はHoffa病(ホッファ病・膝蓋下脂肪体炎)、足の裏は足底脂肪体炎が候補に挙がりました。

どちらも、骨と皮膚の間でクッションとして働く脂肪体に負担が集中して起こる痛みです。脂肪体には次のような特徴があります。

  • 荷重や摩擦を受け止めるクッションで、負担が一点に集中しやすい
  • 血管と神経が豊富で、刺激に対して敏感に痛みを出す
  • 炎症が続くと、新しい血管(新生血管)が入り込んでくることがある
  • 膝では、水腫が続くと癒着して関節の動きを妨げることがある

エコー(超音波画像装置)で評価するなら、パワードプラという細かい血流まで拾う表示モードが参考になります。炎症を起こした膝蓋下脂肪体では、まばらな新生血管が見えることがあります。

新生血管には神経が伴って伸びてくるとされ、そこが痛みの発生源として働いている可能性を考える手がかりになります。確定的な所見ではありませんが、脂肪体が敏感になっている状態を裏づける材料のひとつです。

超音波は低出力から始める

脂肪体に温熱目的の超音波を当てるとき、まず押さえたいのが出力です。敏感な組織に100%出力で当てると痛みが強く、検討のなかでも100%は使わないという点で意見が一致していました。

出力の目安

検討で共有された目安は、50%出力・0.5W/cm²(ワット毎平方センチメートル)以下から始めるというものです。感じ方には個人差があるため、その方の反応を見ながらケースバイケースで調整します。

高出力で当てたあとに痛みが軽くなったように見える例もあります。ただしこれは、強い刺激が別の痛みを抑えるDNIC(ディーエヌアイシー・広汎性侵害抑制調節)という仕組みで一時的にまぎれている可能性がある、という見方も出ていました。

実際、今回の足底脂肪体炎では、低出力の超音波で脂肪体を温める施術を重ねて、NRS(痛みの強さを0〜10で表す指標)が10から4程度まで下がった経過が共有されています。弱い設定でも、鎮静という目的には十分に働きます。

水腫と癒着を意識して当てる

膝蓋下脂肪体の場合は、膝に水がたまる関節内水腫との関係も見ておく必要があります。水腫が慢性的に続くと、関節の袋が膨らんだ状態が保たれ、脂肪体の癒着や膝の曲げにくさ(屈曲制限)につながると考えられます。

癒着が疑われる膝では、伸ばした位置で当てるだけでなく、曲げられる範囲まで膝を曲げた肢位で当てるなど、癒着している面を狙った工夫も検討します。今回の膝も屈曲制限と水のたまりやすさがあり、この視点が挙がりました。

水腫が続くとき

水腫が繰り返したまる膝では、脂肪体だけを温めても状態が戻りやすくなります。半月板や滑膜への刺激など、水腫がたまる原因の側に目を向けることが先で、腫れが長く続く場合は医療機関での画像評価も選択肢になります。

温熱の持続で機器を選ぶ

超音波の温熱には限界もあります。検討で共有された話では、組織の温度は40度に届かないくらいで、上がっても持続しにくいとされていました。痛んでいる脂肪体を鎮める目的には合いますが、組織が硬くなる変化(線維化)を抑え続けたい場面では足りない可能性があります。

癒着や線維化への対応を狙うなら、深部を持続的に温めやすいラジオ波のような機器の方が有効かもしれない、という視点が共有されました。どの機器が正解というより、狙いに合わせて温熱の性質を選ぶ考え方です。

超音波(低出力) 局所を狙って温める。温度上昇は最大4度前後・持続は短いとされる。敏感な脂肪体には50%出力・0.5W/cm²以下から。
ラジオ波 深部を持続的に温めやすい。癒着や線維化を抑えたい場面で候補になる。

機器の前に、靴と荷重を確かめる

足底脂肪体炎では、物理療法の設定より先に見るものがあります。かかと重心(後方荷重)の歩き方と、底が硬くすり減った靴です。この2つがそろうと、かかとの脂肪体に負担が集中し続けます。

  1. 誘因の確認靴底の硬さとすり減り、かかと重心の立ち方や歩き方、立ち仕事や歩き回る仕事の有無を確かめます。
  2. 誘因の除去クッション性のある靴への変更やインソールで、脂肪体にかかる負担そのものを減らします。
  3. 低出力の物理療法負担を減らしたうえで、50%出力・0.5W/cm²以下を目安に脂肪体を温めて回復を後押しします。
  4. 生活負荷との照合たくさん歩いた日の後に悪化していないかを確かめ、負荷と回復のバランスを調整します。

今回の症例でも、底の硬い靴からクッション性のある靴に変えたことで状態が大きく良くなった一方、夜勤で歩き回った後には悪化するという波がありました。機器の設定だけで完結させず、生活の負荷と併せて見ていく必要があります。

著者アイコン 髙原佑輔

出力の数字はあくまで目安で、その方の感覚と反応を見ながら調整していきます。強くすれば早く良くなるわけではない、というのが脂肪体を扱うときの前提です。

髙原佑輔
株式会社とんとん/とんとん整骨院。マネージャー・物理療法指導責任者。柔道整復師。

2014年より整形外科に勤務し、骨折・捻挫など多数の外傷症例を経験。勤務先で出会った患者の「私、ここの病院に30年通ってるの」という一言をきっかけに、「症状を抑え続ける」のではなく「通院に頼らない身体づくり」を追求するようになる。その後、大手整骨院グループの技術統括責任者を経て現職。現在は、とんとん整骨院グループを統括し、物理療法の品質管理・スタッフ指導を担うほか、noteでは物理療法やテーピングに関する技術情報の発信にも取り組んでいる。

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