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確認検査一本で進めるか、8段階評価に立ち返るか。近道と遠回りの使い分け

型どおりの患者さんは近道でよい。ずれた患者さんに、何で戻るか

便利な検査を覚えると、それ一本で施術まで進めたくなるものです。とんとんが治療家向けに続けているオンラインカンファレンスで実際に挙がった相談をもとに、近道の検査と基礎の評価をどう行き来するか、評価運用の考え方を紹介します。

相談の中身はこうです。大殿筋とハムストリングス(太もも裏の筋群)のどちらに問題があるのかを見分ける場面で、解剖学的な動診の流れを一つずつ踏まなくても、確認検査で当たりを付けてしまってよいのか。

ここで言う確認検査について先に触れておくと、とんとんでは、動診で出した再現痛に対して、原因と疑う筋を押圧しながら再検査し、痛みの増減で原因筋を絞り込む確認検査をANOテスト(エーエヌオーテスト)と呼んでいます。

使い勝手がよい検査なので、社内でも「これ一本で進めてしまえばよいのでは」という空気が生まれやすいのが実情です。

まなぶ先生まなぶ先生

正直なところ、確認検査で反応が出て、介入して結果も出ているなら、それ以上の評価は省いてよい気がします。施術時間は限られていますし。

教子先生教子先生

結果が出ている間はそれで回りますよね。気になるのは、テストの反応と患者さんの訴えが噛み合わなくなったとき、どこへ戻るかです。

瀬谷崎瀬谷崎

そこが分かれ目だと思います。型どおりに当てはまる患者さんなら近道でいい。ただ、少しでもずれた病態が来たときのために、戻れる場所を持っておく必要があるんですね。

結果が出ているなら、確認検査だけで進んでかまわない

最初にはっきりさせておくと、確認検査で反応が出て、介入して結果も出ているなら、それで進めてかまわないというのが基本の立場です。どの評価にも完璧なものはなく、限られた施術時間で毎回すべての工程を通すのは現実的ではありません。

コストパフォーマンス(費用対効果)の面で見れば、型どおりに回る症例を近道で通すのは合理的な判断です。実際、とんとんの社内にも確認検査を軸に運用しているスタッフは多くいますし、結果が出ている限り、それ自体を問題視はしていません。

使い分けの目安

症候群の型どおりに当てはまり、確認検査が陽性で、介入結果も訴えと一致している間は、確認検査だけで進めてよい。テストの反応・介入の結果・患者さんの訴えのどれかが噛み合わなくなったら、基礎の評価に立ち返る。

型に一致しない患者さんは、必ず出てくる

ただし、どれだけ便利な検査にも外れる日が来ます。確認検査の反応と、介入の結果と、患者さんの訴え。この3つが一致しない症例は、臨床を続けていれば必ず現れます。腰の症状なら屈曲で痛む型だろうと見立てて確認テストをしたのに、思ったように陽性にならない。そんな場面です。

そのときに戻る先が、とんとんで「評価の8段階」と呼んでいる段階分けです。ヒアリングに始まり、視診、動診と進んで、個別の筋評価まで順序立てて確かめていく流れで、社内の基礎教育の柱にしています。

基礎に立ち返るときの考え方は、部位を問わず共通です。

  1. どの動きで痛むかを見る解剖学的な動診で、痛みを再現する動きを特定します。
  2. 関与する要素を挙げるその動きで起きている関節運動と、どの筋の収縮・伸長が関わっているかを思い浮かべます。
  3. 個別に確かめる挙げた筋を一つずつ分けて評価し、収縮で症状が出るのか、伸長で出るのかを見分けます。
  4. 介入して照合する絞り込んだ原因に介入し、結果が患者さんの訴えと一致するかを確かめます。

大殿筋とハムストリングスの例で言えば、どちらの収縮で問題が出ているのかを、確認検査で一気に飛ばさず、個別に分けて考えられる状態にしておく。この積み方をしておくと、教材で扱っていない部位や症状にも応用が利くようになります。

近道が効くのは、基礎の積み上げがあってこそ

誤解されやすいのですが、症候群のパターン学習と8段階の評価は別物ではありません。基礎理論を各部位に当てはめて考えられれば、本来はどの部位でも評価から介入までを自分で組み立てられます。ただ、それを毎回やるのは時間の負担が大きい。

だから部位ごとの見方をあらかじめ体系化し、その流れの最後に確認検査を置いている。近道は、この積み上げの上に成り立っています。

症候群別の学びと8段階の評価をリンクさせて考えるのは、実は簡単ではありません。たとえば屈曲の型の解説に、ヒアリングという言葉はほとんど出てきません。それでも、次のように重ねて聞いておくと結びついてきます。

  • ヒアリング。座位の時間が長いのか立ち仕事なのかを聞けば、大殿筋やハムストリングスがどんな状態にあり得るか、起きやすい関節運動まで見立てが立つ
  • 視診。患部だけの話ではなく、立位姿勢や座位姿勢を眺めることも視診に含まれる
  • 動診。確認テストが思ったように陽性にならないときこそ、動きを個別に分けて見る場面

症候群の話を学ぶとき、いま8段階のどの工程の話をしているのかを重ねながら聞いておく。そうすると、型から外れた症例や症候群の外にある病態が来ても、対応できるようになっていきます。

補足

ANOテストや評価の8段階という呼び方は、とんとん社内の教育で使っている枠組みです。名称は院ごとに違っても、型どおりの症例を近道の検査で速く通し、ずれた症例では基礎の評価に立ち返るという行き来の考え方は、どの現場でも共通して使えるはずです。

近道を選べるのは、遠回りを知っているから

型どおりの症例は確認検査で速く通し、少しでもずれたら8段階の評価へ戻る。この行き来ができることが、評価の運用としてはいちばん強い形だと考えています。近道を疑う必要はありませんが、戻れる基礎は磨き続けたいところです。

瀬谷崎瀬谷崎

確認検査だけで回っている間は、それでよいと思うんです。ただ、噛み合わない症例に出会った日に、ヒアリングから積み直せるかどうか。そこで差が出ると思うので、8段階のような基礎の評価は、折に触れて手入れしておいてもらえたらと思います。

瀬谷崎将也
株式会社とんとん/とんとん整骨院 代表。臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」主宰。

とんとん整骨院 代表。柔道整復師として、都内に鍼灸整骨院4店舗・鍼灸院1店舗を運営。多くの患者と関わる中で、「痛み」や「慢性疼痛」への深い理解の必要性を痛感し、EBM(根拠に基づく医療)・バイオメカニクス・BPSモデル(生物心理社会モデル)を軸とした臨床を実践。その知見をもとに、臨床系セラピストスクール「ANOアカデミー」を主宰し、セミナー運営など施術者の育成・教育にも精力的に取り組んでいる。

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